この度、転生することになりました。
ジリリリリ…
けたたましい音で、俺、安満 三郎 (あま さぶろう)は目を覚ました。
目覚ましの音とは違う音だったが、俺はそんなことには気づかない。
(なんだこの煙は。苦しい…)
辺り一面、真っ黒な煙。俺は、火災に巻き込まれているのだと悟った。
(こんなことで俺の人生、終わってしまうのかよ…)
そこで俺の意識は途切れた。
「あれ、ここは…?」
次に俺が目を覚ました時、そこには真っ白な空間が広がっていた。よく転生系の小説を読んでいた俺は、それが転生のための空間ではないのか、と考えた。
『よく分かったわね。そう、転生のための空間よ。』
当たりだったようだ。俺の目の前にいる神様(?)的な存在が言っている。転生系の小説では大体そうだし、純白の羽をまとっているので神様なのだろう。
『分かっているなら話が早いわ。あなたを転生させます。何か希望はありますか?』
俺は何も言ってないのに、神様はどんどんと話を進めてくる。俺の心が分かるのか…?
しかし、ここで遠慮しても後で後悔するだけだ。俺はずっと抱いていた一つの願望を口にする。
「誰かを支配してみたい。」
三郎は、ずっと支配され続けていた。幼少期は親に、そして働き始めてからは上司に。だからこそ、魔王のような存在でもいいから、支配する側に回ってみたい、そう思ったのである。
『……なるほどね。分かったわ。では、準備はいいかしら。』
神様はさっそく魔法陣を展開する。俺はどうやらどこかに転生するらしい。
(もう少し、この世界で頑張りたかったな…)
俺はこの世界に残した少しの後悔を抱きながら、神様によって転生させられた。