表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/15

03 女スパイは もうお嫁にいけない

「これから身体検査をします」


 そう宣告されて連れてこられた部屋は、だだっ広くて殺風景だ。入り口近くに机と椅子、その他には机と並んで変な器具が置いてあるだけだ。あれっ? うちの組織の拷問部屋に似ていないか? ふと思った。

 補佐だというイレーネさんがいう。


「それでは、衣服を脱いで、カゴに入れなさい。下履きも取って、裸足になったら、こちらに来なさい」


 ぎょえー。厳しい。素っポンポンだ。栄養不足の貧弱な身体が恥ずかしい。先ほど気になった器具へ手招きされる。


「身長は一六〇センチ、座高は百十〇センチ、体重は四二キロ。痩せすぎで、少し胴長ね」


 侍女頭のマーサさんが記録する。放っといてくれ。安産体形っていうんだ。背は高い方かな。


「スリーサイズは上から、七四、六〇、九二。お尻は大きめだけど、胸はAカップね」


 そうだよ。これでハニートラップを掛けろっていうんだから、笑ってしまうわ。


「まず、これを飲みなさい。一気に」


 コップを渡された。無色透明の液体が入っている。自白剤だろうか。拒否はできない。(にが)い。


「この机の上に仰向(あおむ)けに寝て」


 素っ裸だから、背中の感触が冷たい。解剖でも始まる雰囲気だ。


「口を開けなさい。大きく。うむ。歯茎に何も隠していないわね。犬歯が少し尖っているけど、まあ常識の範囲かな」


 内心、ギクリとする。これは疑われているってことだ。歯は私の隠れた武器だ。噛みつくことで相手を殺せる。こっちも相応のダメージを負うが……。


「足を左右に開きなさい。中を確認させてね」


 あぁ、ここまで調べるのか。


「膜に破れはないから未使用ね。深さは九センチ、何も仕込んでいないわ」


 凄いぞ、これは……。まるで諜報員相手だ。良かった。手つかずのまま派遣されてきて本当に良かった。あれっ、もう一つの穴は検査しないのかな?


「次、四肢は……、関節が柔らかいわね。股関節も十分に開く。筋肉も程よい付き方で、腕力は自分の体重を支えらそうね。脚力は、馬並みかな。ふふふ。内部の筋肉は……、骨盤底筋が弱そう。鍛える必要があるわ。体操を教えるから就寝前に毎日やってね」


 何なのかは、よく分からない。


「次、これを飲んで」


 はぁ、今度は少し黄色味がかっている。もちろん、一気にあおる。これは酸っぱい。


 あれっ、胸、というか胃袋がムカついてきた。吐瀉剤(としゃざい)か。すかさず補佐のイレーネさんが手桶を差し出す。胃の中のものを全て吐き出した。

 おやっ、下腹がゴロゴロいい始めた。出したい。先に飲んだのは下剤だったのか。ここへきて効いてきた。指差されたとおりに、タライを跨ぐ。裸だ。苦しいー。あー、出たー。なるほど、さっき、こっちの穴を検査しなかった理由はこれか! 臭いは……。


 そのときだった。

 いきなりドアが開いた。男性が飛び込んできた。


「イレーネ! 書類、どこだ!」


 目が合った。相手はキョトンとして立ちすくむ。高貴な身なり……。

 私は素っ裸でタライに跨っているのだ。パニックだ。一瞬遅れて両手で顔を覆う。だって、顔から火が吹いたんだもの。あっ! 隠すのはこっちじゃないか!


「何するの!」


 イレーネさんの怒声が響く。すぐに外へ連れ出された。


 あぁあ、私、もうお嫁に行けない……。


 マーサさんがチリ紙を渡してきた。


「ごめんなさい。リカルド坊ちゃん、おっちょこちょいなのですよ。ドアに使用中の札を掛けておいたのですけどねえ」


 えっ、ハニトラの相手なのか? ここでオジャンになったのか? 頓挫したのか? もう、任務終了か?

 イレーネさんが戻ってきた。


「きつく叱っといたからね。許してね」


と言われても……。姉が弟を責めたような物言いだ。主家の跡取り息子に対して、こんなゾンザイでいいのか? この身分制の厳しい社会で……。

 その後、手桶とタライを交互に見入る。


「何も仕込んでいないわ。未消化の豆がわずかと、あとはパンと芋ね。肉付きが貧弱で肌は荒れているわけね。髪はパサパサで生理は不順そう。しばらくは肉類を多めに与えることにしましょう。厨房に言っておくわ」


 私は、家畜か! でも、身体のことを考えてもらえるのは助かる。なにせ育ち盛りなのだ。

 吐いて、下したものだから、お腹に力が入らない。へとへとだ。真新しいメイドのお仕着せを渡される。侍女ではなくメイド用だ。下着も真っ新だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
初めまして、初見の人です。 これまた随分と私の性癖に突き刺さる展開で……ゲフンゲフン!マッパで身体検査は流石にヤバいですね笑 でも刑務所とか少年院とかだと昔はあったみたい。 面白かったのでお星様とブ…
2024/12/18 02:03 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ