第7話 気持ちの変化
何故かは分からなかった。だけど気づかれたくない……そう感じてしまいアイツにビンタしてしまった。どう考えても今のは理不尽な暴力だ。
「……謝らないと……」
私が踵を返してクレアの待つ部屋に戻ろうとした時後ろから声がかかる。
「な〜に?喧嘩でもしたのかい?」
「……あなたには関係ないですよね。先生。」
そこにいたのは先程のお医者様だった。
「今さっきの彼女の反応から見て君たちは何やら特別な関係そうだったからね。外で待ってみていたが……どうやらそうみたいだね。」
「勝手に詮索しないでください。」
「ふふふ。悪かったよ。だが一言言わせて貰うがあの子は恋愛には疎そうだ。好きならもっと攻めた方がいいぞ。」
「なっ!そんな関係じゃないですから!」
「ははは、さぁ、その反応の様ではまだまだ進展は無さそうだな。あと、戻るのなら何か食べ物を持って行くといいぞ。」
「分かっていますよ。」
そこからは振り向かずに食堂へ向かった。
(全く的外れも良いところだわ。)
食堂に着くと私は買ってたりんごをすり潰し始めた。とにかく消化の良い食べ物を作る。そして暖かいお湯を注いだ。食べて身体を温めるこれが一番大事なのだ。
「クレア、入るわよ。」
…………
中から返事はなかった。なので部屋に入ってみたらクレアは寝ていた。規則正しい寝息を聞いて少し安心する。
「……さっきはごめんね。」
眠っていて聞こえていないクレアに言うのは卑怯と思う。でも、言わないといけない。起きて改めて言うけども……先程引っ叩いた頬を手でなぞる。汗でベタベタだ。なので起こさない様にぬるま湯を湿らせたタオルで少し拭いてあげる。
「ふぅ……続きは起きてからね。」
私はタオルをお湯に浸して自分の分の食事を作る為に部屋を出た。
(ね、寝たふりするのも大変だった……)
私はシルビアが部屋を出た音を聞いて目を開けた。先程引っ叩かれた頬を撫でた。そして汗を拭いてくれた事を思い出す。
「何がしたいのだろう。」
私を痛めつけたい、復讐したいのならその辺の野山に連れて行き迷子にさせてしまえばいい。他にもビンタだけではなくもっと殴ったり蹴ったりしても良いはずだ。それなのに優しくしてくれたり面倒見てくれたり物を教えてくれたりお訳が分からない。
「あー……考えてると頭が痛くなる……でも……」
『さっきはごめんなさい……』
寝ている私に言った言葉を思い出す。あれは恐らく本心……そして横にある私の為に作ってくれた料理……そこではっきり答えがでる。シルビアは単純に私と旅をしてくれているのだと……でもそれだと……
(それだと……なんでそんな事してるんだろう。)
また疑問が出てくる。掘り返して掘り返しての繰り返し。考えるのを放棄したい。だけど私はもう子供じゃない。だから今答え出す必要がない事も知っている……ゆっくり考えればいいんだ。
すると部屋の扉がすーっと開いた。
「あら?また起きたの?」
「あ、シルビア様……」
「まだ熱はあるんだから大人しくしときなさい、あとあなたの食事はそれよ。」
「これは?」
「りんごをすり下ろしただけよ。食べやすく消化に良いものにしたのよ。」
「ありがとうございます……」
私は嬉しくて下を向いてしまう。するとシルビアはニヤニヤした顔で皿を持ち上げて1掬いした。
「ほら口を開けなさい。」
「えっ?いや、1人で食べれますから!」
「遠慮する必要ないわよー。今は病人だし。」
ニヤニヤしてるところを見ると恥ずかしがらせたいらしい。嫌な人だ。でも、看病して貰ってる手前ここはそのノリに乗ってあげないといけない。だから乗ってあげた。
「あ……あーん……」
「どう?」
「美味しいです……」
本当に恥ずかしかった……なんというかこう……恥ずかしい……でも、それはシルビアもみたいで顔が赤くなっている。両者ともに被害甚大だった。
「あ、後は自分で食べなさいよね!」
「……後一口だけ……お願いしてもいいですか?」
「⁉︎」
シルビアは驚いていた。そして言った私も驚いた。何で言ったかも分からない。もしかしてどちらかがギブを言うまでやるつもりで言ったのか……それとも本心から出た言葉なのか……分からなかったがシルビアはもう一口だけしてくれるのでした。
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