第5話 抵抗
あれから2日働いたがやはりギリギリでは何があるか分からないと言う事で2日働いて、その後お店の人に頼まれて3日働いたので結局合計で7日働いた。そして今日は北への出発日。
「これ持っていきな!」
「いいんですか?」
私が働いていた飲食店の主人が私たちのお弁当をくれたのだ。
「あぁ、1週間弱働いてくれたんだ。大助かりだったよ。また来てくれ!」
「あ、ありがとうございます。」
照れくさいやら嬉しいやらいろんな感情がぐるぐるする中馬車は出発した。
「いい人達で良かったわね。」
「はい。親切な方たちで良かったです。」
私はまだ嬉しくて顔を綻ばせていた。
「まぁでも、人生そんなに甘くないから気はずっと張ってなさいよ。そんな頬をゆるませていると……」
シュッ
「こんな風におかずを取られるわよ。」
「あー!私の卵焼き!」
「だから油断するなって言ったのよ。」
そして私の卵焼きを一口で食べてしまいました。だからといって黙っている私ではないのでシルビアのおかずを取る為に隙を伺います。しかし。
「あ、外……」
「えっ?」
私は一瞬外を見ます。特に変わりはありません。しかしお弁当箱の中身には変化があったのです。
「わ、私のおかずが……」
なんとあの一瞬でおかずのミートボールとプチトマトを盗まれていたのです。絶対許さない……
「……」
「あら、反撃してこないの?」
「私は大人ですから……そんな幼稚な事はしませんよー……」
「ふーん……」
含みのある余裕……ムカつく!だけど復讐の火蓋は切って落とされたのだ!晩御飯は覚えておくといいわ!
こうして恨みを持ちつつ馬車は次の町へと向かっていく。私たちが馬車を降りた時にはもう日が沈んでいた。今日はずっと馬車に揺られてた為に腰が痛い。
「宿はどうしますか?」
「私が選ぶわ、あなたに選ばせてたら高いところばかりになりそうだからね。」
いちいち言葉に棘を忍ばせてくる。私が毒姫ならあなたは毒舌クソ女じゃない……
ゴツンッ!
「い、いきなり何するんですか!?」
私は頭を抑えながら今私の頭に鉄拳を落とした毒舌女に理不尽な所業を言及した。
「今めっちゃ失礼な事考えてたでしょ?」
「考えてないですよ!」
「どうせ、毒舌クソやろうとでも思ってたんじゃないの?顔見れば分かるわよ。」
「違うもん!毒舌クソ女だもん!……あっ」
次の瞬間私の頬に強烈な平手打ちが飛んできたのは言うまでもなかった。
「今夜はここにするわよ。」
「はい。」
頬がまだジンジンするけども怯んてはいられない。私は報復の準備を始める。そう目には目を歯には歯を食べ物には食べ物で!という事で、晩御飯を作っていく。ここは部屋で食べるスペースが無いため、お客さんは全員食堂で食べている。その分宿代は安いらしい。そこを逆手に取った作戦だ。そして出来た料理を持っていざ出陣だ!
「何よこれ?」
「ピーマンの肉詰めですよー。安かったので。」
「ほぅほぅ。それにしてもやけにピーマン料理多いわね……」
「安かったので明日も作りますよー。」
私はニコニコしながらそしてシルビアは笑ってはいるが目は全然笑っていない。シルビアはピーマンと人参が苦手なのを最初に聞いていたからだ。これは出すなという意味で言ったのだろうが、まさかの嫌がらせで出されるとは思ってなかったのだろう。鬼の形相一歩手前だ。
「部屋に帰ったら覚えておきなさい……」
「ふふふ……いつになるかしらね。」
私はどんどん食べ続ける。しかしシルビアはなかなか食べ進められない。そこへ私は追い討ちをかける。
「はい、シルビアこちらあげますね。」
「はぁ!?要らないわよ!」
「でもー、先程馬車では私のおかず取ってたじゃないですかー。ならそれだけじゃあ足りませんよねー。」
私はニヤニヤしながら煽りに煽ってピーマン料理をお裾分けしてあげた。だがシルビアに反撃はできない。なぜならここは大衆の場、子供もいる。そんな所で大人が好き嫌いして怒ってるなんて恥ずかしい事この上ないからだ。恐らく頭の中では……
(絶対許さない絶対許さない絶対許さない絶対許さない絶対許さない許さない許さない許さない!)
なんて思ってるんだろうなー……だけどシルビアがとった行動は意外なものだった。
「はぁーー……ふぅー……」
なんと深呼吸だ。そして……
「悪かったわよ。今回は私の負けね。」
「そうやって謝ってくれればここまでしなかったのに。はい、じゃあピーマンだけ貰うから肉詰めのだけ食べて下さい。」
これにて私たちの第一次食事戦争は幕を閉じた。しかし、部屋に戻ると……
「アギャァァァァ!」
「2度と反抗出来ない様に躾けないとね……」
私は一晩中固め技をかけられた。そして夜明け前に私が完全にノックアウト。シルビアも疲れたらしく眠った。横で寝ているシルビアを見ていつかこっちでも勝つ事を誓うのだった。
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