第16話 新たな町へ
吹雪が止んだのは夜になってからだ。入り口は木の板で塞いでいた為外に雪が積もって固まっているらしい。
「クレアは木の板で雪かきして私は手で行くから。」
「分かりました。」
少しの空気穴はあるけど流石に2人が吸うには需要と供給が吊り合ってはなかった。なのでなるべく急いで雪かきをして外は出る。
「すぅーー……はぁ……」
「良かった……吹雪も止んでる。」
危うく窒息死する所だったが助かった。残りのマッチも僅か……夜明けが来たら再び出発だ。
「まさか3日も野宿するとは……何年振りかしら。」
「何年って……お城にくる前は何してたんですか?」
「盗人……」
「えっ?なんて?」
パチーン!
ボソッと言った事を聞き取れなかった私は再度聞いた。しかし帰って来たのは強烈な平手打ちだった。
「ほら、行くわよ!」
「う、うぃ……」
ほっぺたが風に当たってヒリヒリした。しばらく歩くと森が開けてくる。そして視界には街があった。
「なんとか今日中に来れて良かったわ。」
「ですね。それでまずは何をしますか?」
「宿を取るわよ。3日も野宿したんだもの。今日は安心して眠りたいわ。」
言われてみて思う。最優先にする事が明確な事は普通なら食事だろう。しかし宿という安全な住も必要で……でも、今日は疲れを取るという点でも宿の確保は絶対であった。
「今日泊まりたいのですが、部屋空いてますか?」
「ええ、空いてますよ。ですが今は清掃中なので少し待って貰えますか?」
「構いません。ありがとうございます。」
(丁寧な口調だなー……私の時はアレなのに。)
「クレア、アンタ失礼な事考えてたでしょ?」
「そんな事ないですよ。」
(だからエスパーかアンタは!)
少し時間が空いたので食堂で待っていると宿屋の方から温かいお湯を貰えた。
「こちらはサービスです。」
「え、あ、ありがとうございます。」
私は戸惑いつつお湯を貰った。普通はお店でお水を貰うのだってお金が必要なのだ。それなのにサービスでくれるのはびっくりなのだ。
「寒い地方ではよくある事よ。旅人にまた次も来てもらう為にこういうサービスをして評判を上げてるの。1つの営業努力ね。」
そう言うセルビアもお湯を一口飲んでいた。部屋の用意が出来て部屋に入ると途端に眠気が襲ってくる。シルビアも糸が切れた人形の様にベッドに倒れて寝てしまった。私は部屋の扉に鍵をかけてベッドに横になる。そしてそのまま眠りについた。
翌日……私たちは昼に起きた。
「……お腹空いた。」
「あはは、そりゃーお昼まで寝てればそうなるわね。ほら、お昼は何か食べに行きましょう。」
シルビアに笑われたがどうやら私と同じらしい。普通なら……
『何言ってるの⁉︎そんなお金ないの!さっさと買い物行くわよ!』
って言うはずなのにこれだ。まぁ余計な事悟られてまた平手打ち貰いたくないから素直に付いていく。選んだお店は宿から少し離れた場所の飲食店であまり人はいなかった。
「いらっしゃいませ。」
「2人です。」
「お好きな席へどうぞ。」
そう言われて周りを見回すと客席はすっからかんだった。なので適当に空いてる席に座った。
「ガラガラですね……」
「黙ってなさい。」
思った事を言って叱られた。でも、恐らくシルビアも思っていたことなのだろう。
「ご注文はお決まりですか?」
「では、パスタを2つとコーンスープを2つお願いするわ。」
(あれ?私まだ選んでないよ?)
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
私の方には何も言わずに店員さんはそのまま厨房に帰って行った。
「あの……私リゾットが……」
「黙ってなさい……」
含み笑いしながら言ってる!これは嫌がらせだ!やられた。先程の「黙ってなさい」が伏線だったのだ。心の中でじだんだを踏んで悔しがる。しばらくすると先程の店員さんがスープを持ってやってくる。
「お待たせしました。先にコーンスープです。」
置かれたお皿から甘い匂いがする。普通に美味しそう。一口食べる。
「美味しい!」
「ありがとうございます。パスタはもう少々お待ち下さい。」
久しぶりに濃い味の物を食べた気がした。そうしてすぐに食べ終えた。そして次に来たパスタもすぐに食べてしまう。
「ふぅー……久しぶりにお腹いっぱいです。」
「そうね。じゃあ……ここで働かせて貰おうかしらね。」
「えっ?」
「所持金はあるわよ。でも心許ない時は働いて稼ぐよ。」
「でも、ここで働かせて貰えるんですか?」
「私に考えがあるわ。」
そう言うとシルビアは店員さんと話をした。そして奥から店主が出てくる。
「本当に売り上げを上げてくれるのかい?」
「ええ、任せて下さい!1週間で満席になるくらいにアピールしてみせますから。その代わり1週間住み込みでお願いします。」
「分かった、出来なければ給金はなしだからな。」
とんでもない約束をしてこの町でのバイトが始まった。
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