第12話 シルビアの過去2
あれから何日経ったのだろう……母の亡き骸は近くの大きな木の下に埋めた。お墓はないけどそれが目印になるから……
「行って来ます。」
私は木に向かって言う。優しかった母を忘れない為に……
「いたぞー!追え!」
(チッ……今日は人が多い……)
私は本格的に盗みをしていた。働こうにも10歳の私を雇ってくれる場所なく、助けてくれる人も皆無だったからだ。だからこそ、私が悪い事をしても善意で捕まえる人間もいなかったのだ。昼前に粗方食べ物を盗むと休む為に小川だったり洞窟だったり木の上だったりと隠れた。大人たちは追ってくるが町を出れば大抵追ってこなかった。しかし……この日は少し違った。
「居たぞー!こっちだ!」
複数人で私の退路を先回りしてきていたのだ。
(嵌められた……)
近くのゴミ箱の中に隠れてやり過ごすしかない。だけど大人もバカではない。小さな私が何処にいるかくらいはすぐに分かり捕まって、牢屋に入れられた。
「私は明日死刑ですか?」
「さぁな?お前次第だろうよ。」
私は監視の人に聞いてみた答えはこれだった。つまり明日死ぬかもしれない。ようやく明日……母の元へ……いけるはずないか……でも、もう寂しくない……それだけで少し安心した。
「お前、怖くないのか?」
「怖くないわ。」
「そうか……」
「……」
母と話してきたが他の人と話した事はなかったから話し方がわからない。でも、今日は寒くない、雨も風も野生動物の心配しなくていい。最後の夜は今までで1番安心して眠れた。
次の日……私は手首を縄で縛られ牢屋から出された。そして部屋には2人の女性がいた。
「こんにちは泥棒さん。私はレベッカよろしく。」
「私はスカーレットよ。」
「……ご丁寧にどうも。私に懺悔でもさせる気ならそんな物ないわよ。盗まなければ死んでた。生きる為に必要だった。だから後悔も懺悔もしない。」
「……そう、名前はなんて言うのかしら?」
「……」
もう名前など捨てた。あの名前で呼んでいいのは母だけだから。
「シルビア……」
「シルビアちゃんね。歳は?」
「10歳……」
「そう……親はどうしたの?」
「…………亡くなった……父親は顔も知らない。」
「……ごめんなさい。」
レベッカという人は何故か私に謝ったがその理由は分からなかった。
「もう……いいですか?早く私を処刑して下さい。」
すると2人はキョトンとした目をして顔を見合わせた。
「あはは!盗みくらいで処刑なんてあり得ないわよ!ねぇスカーレット。」
「ええ……そのくらいで処刑してたら人口が減って大変な事になるわ。あー久しぶりに笑った。良いんじゃないレベッカ。私は良いと思うわ。」
「ええ、根は真面目みたいだし、それに……ここで見捨てたらまた同じ事をしそうだわ。」
2人が何の話をしているのかは分からなかった。
「あの……何の話を?」
「あぁ、言ってなかったわね。私たちは孤児院のシスターよ。ちょっと変わった子を預かるね。」
「この町で盗みをしてる子供が居て困ってる話を聞いたからまずは捕まえて貰わないとと思い昨日捕まえて貰ったの。」
「そして今日面談してどんな子か確かめた。普通の孤児院にいれるか、私たちの元に連れ帰るかを確認する為にね。」
「それで、私は普通の子ではないと?」
「盗みをする子を普通とは言わないわよ。」
レベッカさんは笑顔だけど目は鋭くなった。明らかにあれは怒ってる目だ。
「あー、レベッカそんな目しないの。ごめんね。でも、シルビアちゃんはそうしないと生きていけないからやった。まだ情状酌量の余地がある。だからまだ私たちの所でやり直せるわ。私たちはそう判断したの。」
「それで……来る?来ない?」
「拒否権はないんですよね?」
「拒否してもいいけど、次はないわよ。次捕まったら死刑より恐ろしい目に遭うかもね。」
「脅しですね。でも……こんな犯罪ばかりする様な生活をしていたらお母様に合わせる顔がありませんから行かせていただきます。」
私の言葉に2人は笑っていた。
「素直じゃないわね。じゃあ決まりね。と言う事でよろしいですか?町長さん?」
「構わないよ。迷惑なガキが消えて清々する。」
私は正直カチンと来たがその前にスカーレットさんが動いていた。
ゴツンッ!
スカーレットさんは町長の顔面に拳を叩き込んでいたのだ。
「お前……被害者ヅラしてるけどな……そもそもお前ら町の人間がこの子を見捨てずに手を差し伸べていればこんな事にならなかったんだ!お前らも加害者だ!忘れんなボケが!」
「ぐっ……」
「はーい、ストップ……スカーレットその辺で。じゃあ引き取っていきますね。」
「ま、待て!」
「まだ何か?」
レベッカさんのあの目だ……怖すぎる……町長も気圧されて黙ってしまった。
「……言いたい事がないならこれで……行きましょうスカーレット。」
「はーい。あ、シルビアもおいで!じゃあ失礼しまーす。」
私は手首を縛られてるのでドアが開いてる間に一緒に出た。
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