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第11話 シルビアの過去1

 12年前……私は母と旅をしていた。戦争で住む場所を失い、父親も亡くなった。そんな中、私たちはこの国にやって来た。


「ジル。寒くないかい?」

「うん。大丈夫……」


 名前は今とは違いシルビアではなくジルだった。こっちが本当の名前だ。


「もうすぐ町が見えてくるからそれまでの辛抱よ。」


 母は私の手を引いて歩いてくれた。あの時の冷たい手……今でも覚えてる……町に着くと真っ先に母は食べ物を買ってくれた。お金はほとんどない。それでも一切れの干し肉を買った。母だってお腹空いてるだろうにそれでも私に大きな方をくれた。


「半分こになってないよ?」

「いいの、お母さんは大丈夫だから。」


 そう言って母は干し肉を食べ始めた。私も申し訳なさそうに食べた。それから母は仕事を探して働いた。家なんてないし、宿に泊まれるほどのお金もない。だから常に私たちは野宿をしていた。雨風が凌げる場所や、何もない時は雨宿りして一晩寝ない事もあった。だけどそんな生活にも限界がくる……


バタン……


「おい、誰か倒れたぞ!」

「知らねぇーし、おばさんが倒れただけだろう、転んだんじゃね?」


「お母さん!」


 私のお母さんは倒れたのだ。そして誰も助けてくれなかった……私はお医者さんを呼びにいった。しかし……


「金がないならみてやれないね。こっちは慈善活動してるんじゃないからさ。邪魔だから帰った帰った!」

「そんな!」


 私は目の前が真っ暗になった。しかし、落ち込んでいられない。急いで母の元へ戻って私は倒れた母を引きずって道の端に連れてくる。そして私が戻ってくるまで誰も母のことを心配してくれる者はいなかったことに私は怒りを覚えた。


「お母さん……ごめんね……私が大人で働けていたらこんなことにならなかったのに……」

「……ジルの……せいじゃない……よ……」


「お母さん!?目が覚めたの!」

「心配……かけたわね……もう歩けるから……大丈夫よ。」


「ま、待ってて何か食べ物を買ってくるから!」

「いい……大丈夫だから……ここから離れよう……」


 母が呼び止めたので後ろを見るとフラフラとした足取りで立ち上がる母がいた。私はすぐさま近寄って支えた。


「ま、まだ歩けないってば!」

「いいの……ここじゃあ話せないから……」


 母の目はいつもと同じ優しい目だった。でも何処か違っていた。そうして町から少し離れた場所で母は口を開いた。


「ごめんねジル……お母さん騙されちゃった……」

「えっ?」


「お母さんが働いてたところね……働いてもお給料を貰うには5日働かないと出なかったの……」

「でも、お母さん働いてたじゃん!」


「3日間眠らず、休まず働いてるようやくお給料が出るって話だったみたいなの……そんなの無理に決まってる……説明されてなかった……そんなのじゃ誰も来ないから……私は騙されて良い様に使われちゃったの……ごめんね……」


 そんなのおかしい……お母さんは間違えていない。なのに誰も助けてくれなかった。私の中に憎悪が産まれた。


 それから私たちは町から少し離れて洞窟で暮らした。食事は野草やキノコ、川にいる魚を食べた。そして……


「このクソガキ!待ちやがれ!」


 月に一度町に現れ店の物を盗んできていた。狙うのは母を騙した仕事場だ。栄養のある物を狙った。母にはお店のお手伝いで得たお金と言って誤魔化した。しかし母はどんどん弱って行った……



 ある日の夜雨が降っていた。そんな中久しぶりに母は私に膝枕をしてくれた。


「ジル……お誕生日……おめでとう。」

「えっ?なんで私のお誕生日今日って分かるの?」


「うーん……母親だから?」

「意味わかんない!でもありがとう……今日で10歳だ!」


「うふふ。そうね……プレゼントは何もあげられないからこうして膝枕くらいしか出来ないけど……いいかな?」

「何言ってるの?良いに決まってる!私にとっての最高のプレゼントだよ!」


 私の笑顔に母は泣き出してしまった。


「ありがとう……ごめんね……」

「なんで謝るの?なんで泣くの?」


「嬉しくても泣くのよ。こんなに良い子に育ってくれて……本当に嬉しいから……」


(本当は……良い子なんかじゃないのに……)


 嘘を吐いて、盗んだ私は良い子なんかじゃない……でも、この人の前では、良い子でいないといけないのだ。雨の降る中、私は膝枕をして貰って下から母の顔を見ながら沢山話して笑った。沢山頭を撫でて貰って……眠った……


 次の日……その日は晴れていた。そして母は私の頭の上に手を置いていた。手は……冷たかった……


「お母さん……」


 私が母の手を退けると力無く落ちていった。亡くなっていたのだ。私は母をゆすったり叩いたりもした。しかしもう反応する事はなかった。私は事実を知ると目から大粒の涙が出て来た。そしてその日は声が枯れるまで泣いたのだった。

 ここまで読んで頂きありがとうございました。

次回更新もお楽しみに!


 面白い、続きが気になるという方はブックマークをしてお待ち頂けると幸いです。

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