表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/79

心からの感謝を、愛するあなたへ

きゃっきゃっと庭で遊んでいる双子は、先月三歳になった。

子どもの時間軸はあっという間だ。

「おかしゃま」と言っていたのが、今では「お母様」と澱みなく言うので、「おかしゃま」と呼んでいた双子にはもう会えないのである。

成長が嬉しいような、寂しいような複雑な気持ちだ。


レントバーグ家が自力で新しく建築した屋敷は、以前よりカールライヒ邸から近くなった。

両親は、しょっちゅう暇を見つけては、孫の顔を見に来ている。

「はあ!もう!祖父様は無理だ!負けだ!!はあ!」

「ええーーなんでぇ?」

「お祖父様、もっと走ってよ!!」

「ぬっぬう…!!!うおぉーーー!!」

「「きゃーーーーー!!きゃっきゃ!!」」


屋敷の方から侍女を伴った母が、籠を持ってやってきた。

「貴方達!冷たいリンゴジュースはいかが!?」

大きな声を弾ませている。


ケイもガイも急に方向転換し、我先にとリンゴジュースをねだっている。

「お祖母様、僕の多くして!」

「ずるいぞ!僕のも多くしてよ!」

「はいはい!そうだ、どちらもおかわりすれば良いのじゃない?」

途端に双子の瞳が輝いた!

「「さんせ〜〜い!!」」


あとから、ふうふうと息を切らした父が汗を拭いながらリンゴジュースをがぶ飲みしている。

「祖父様は疲れた。もう休む。勘弁してくれ」

「やだ!」「だめ!」


みかねた旦那様が「どれ、父様と交代しよう」と言ったが

「お父様とじゃいつもと同じだもの!」「お祖父様と遊ぶんだ!!」と一蹴されてしまった。


やれやれと言いつつも、

「そんなに祖父様が良いか」

満更でもない顔でニヤけている。

「それ!」

誰かの掛け声と同時に、また追いかけっこが始まった。


「あらまあ!今日は膏薬を貼るようねぇ」

などと言いながら母も笑っている。


「私、旦那様に感謝しかありませんわ」

「私だってリリアには感謝しかないよ」

「随分と迷惑もかけましたわ」

「私もさ」


視界が翳る。

ふいにくちづけされた。

「愛しているよ、リリア」

「ええ、私も」


ブワッと吹いた強い風が、麦わら帽子を攫う。

慌てて追いかけると、母の足元に落ちた。

それを拾い上げた母は、帽子を愛しむように見て「はい」と渡してくれた。


「私、貴方に謝らなくては…」

「お母様、もう何度も謝っていただいているわ」

「…最近、寝る時考えるのよ。お父様が貴方に厳しすぎたこと、私がそれを窘めなかったこと。今になって。遅すぎるでしょう?」


母は私をじっと見て、眉尻を下げた。

「こんなに大きくなってから謝ったって、もう遅いのよ。小さいリリアになんて詫びれば良いのかしら…どうやって詫びれば良いのかしらね…神は、時間を戻してはくれないわ」

「そうです、時間は戻らないのです、お母様。だから今ここから、懸命に真っ直ぐ生きなければ、と私はそう思っているのです。私とて同じです、過去に囚われていたって、時間は未来の方向にしか進まないのです。だったらもう、なにを囚われることがありましょうか」

「リリア…」

「私、今幸せです、とても」


お腹をひと撫でした。

「リリア?まさか…」

「はい、今お腹に三人目が宿っています」

「まあっ!ああ、神様!!」

「まだ旦那様には言っていません。だってすぐ心配するんですもの。でも本当にそろそろ言わないといけませんわね。双子の時ほど体調に変化はありませんでしたので、お陰様で普通に過ごせております。そう、明かすのはお母様が初めてですわ」


母は私のお腹を撫でながら目尻を下げている。

「大事にするのよ、リリア」

「ええ、それは勿論、大事な三人目で…」

「いいえ、貴方の体のことよ。体調が良くったって、無理をしてはいけないのだからね?いつでも助けに来るから呼んでちょうだいね。……でも伯爵が何でも用意してくれるのでしょうけれど。それでも頼ってくれないのは寂しいわ。それはお父様も同じ気持ちなのよ」

「ええ!?お父様も?」

「だってすごいじゃないの、孫命だもの」

「そうね」

二人で苦笑した。


「何を話しているんだい?レディ」

旦那様は爽やかな笑顔で歩いてきた。

青空の下を歩くその人は、幼子を持つ父親特有の柔らかな雰囲気を纏うけれど、目線はしっかり私に向けられている。

それが私をどんなにときめかせるか貴方は知らないのでしょう。


「旦那様…」

「うふふ」

「嬉しそうですね、お義母様。リリア、何かあったのかい?」

「ええ、あのね、旦那様。とても嬉しい報告がありますわ」



芝生の向こうで双子と父が笑い転げている。

旦那様ったら、お母様の前だというのに、私を強く抱き上げて、くるくると回った。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

私にとってとても思い出深い作品となりました。

皆様が少しでも楽しんでくれたなら幸いです。

読んでくださった皆様に沢山の幸せがあることを祈っています。


面白かった!と思ったら、

ぜひ下の評価を【⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎】→【★★★★★】に色塗りしていただけたらとても嬉しいです!よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ