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駆け込んで来たのは(カールライヒ拍手視点)

リリアと使用人達が屋敷内をくまなく探している間、順に使用人達に聞き込みをしていった。


それで、先ほど声をかけてきた乳母がいないとなった。

どうやら、その一人の乳母によって、ケイとガイは同時にいなくなったと言うことが分かり、捜索範囲を屋敷外に広げようとした時だった。


なんとか走ってきたのだろう、髪は乱れ、ドレスの裾が汚れたレントバーグ子爵夫人、リリアの実母が駆け込んできた。

メイフェが通したらしい、老執事も息を切らしながら「奥様…旦那様…夫人より火急の報せが…」と言った。


一番驚いているのはリリアだ。

首の筋が浮くほどに、焦りと、湧き起こる感情を噛み殺している。


私はリリアを制して彼女の前に立った。

「…何の用ですか。関わるなと言ったはずですが?」


レントバーグ夫人は私の足にしがみついて叫んだ。

「あれは!リリアの子たちなの!?フォレスティーヌが…赤ちゃんを連れて…ああ……」

「なん、ですって…お姉様が…!?」

リリアは自分の母親の肩を揺すった。

レントバーグ夫人は泣きながら声を震わせて訴える。

「今、お父様がフォレスティーヌを追っかけているわ!私も一緒に追いかけたけれど、お父様が『カールライヒ邸に行け』と言ったので私はこちらに……っ」

なんとか一息でそこまで言い切ると、ぜえぜえと胸を押さえて呼吸をしている。


「私たちの双子の子どもが乳母に連れ去られたんだ。夫人、何があったのか詳しく教えて欲しい」

私はしゃがみ、夫人と同じ目線でそう言った。


レントバーグ夫人は、また再び泣きながら、ハンカチで目頭を押さえている。よく見れば、手に擦り傷や泥汚れがある。

何度か転んだのだろう。

「家の外で赤ちゃんの異様な泣き声がしたのよ…。お隣にも赤ちゃんが産まれたばかりで普段は気にしないのだけれど、どうも様子がおかしくて…。何の気なしに外を覗いたのよ。そうしたら、フォレスティーヌが二人の赤ちゃんを女から受け取ったかと思うと、急に女の方が泣き出して…。私が『まあ、何?誰の赤ちゃんなの?』って聞いたらあの子、急に顔を青くして走り出して…。へたり込んでいる女に誰の赤ちゃんなのと聞いたら『カールライヒの子どもを連れ去ってこいと命令された』と…お父様を呼んでフォレスティーヌを追いかけたのよ」

「それで、お、お姉様はどちらに?」

「フォン男爵邸よ。フォレスティーヌが中に入っていったので、お父様が門番に『中に入れろ』ってすごい剣幕で凄んだのだけれど…」

「ふ、フォン男爵…邸、ですって?ああ…」

リリアが卒倒しかける。

「リリア!!しっかりして!!私たちも一緒に探すから、ね!?しっかりしてちょうだい!」

「お、お母様…」

レントバーグ夫人はリリアの肩を抱きながら、強い目線を送っている。


「お母様?裸足で……」

「やだ、走っている途中で脱げてしまったのよ…」

侍女に新しい靴を用意してもらい、そのまま我々もフォン男爵邸に早馬で駆けた。

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