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対抗(前半、カストローザ視点、後半、リリア視点)

「カールライヒ伯爵邸でリリア様が主催されている『趣味の会』をご存知?」

「私、お誘いいただきまして、先日行ってきましたわ」

「まあ!それはどんな?」


たくさんのご夫人が、興味津々に話を聞いている。

きゃあきゃあと盛り上がっているが、彼女たちは、この前まで『貴婦人ノ会』に入りたいけれど空きがないと言うようなことを嘆いていた。

私が『貴婦人ノ会』の会員になれるかもしれないとちょっと自慢したら、今度は『趣味の会』。


「それでね、良かったらカストローザ様もどうかしら?」

「でも、『趣味の会』なのでしょう?私これといって趣味もないですから…」

「色々試してみるのも面白いですわよ!…そうだ、刺繍はどうでしょうか?件の会で、私は刺繍を習い始めたのですけれどね、フィーアソン侯爵夫人がそれは丁寧に教えてくださるわ」

「刺繍、ですか」

「あ、絵画はリリア様が教えてくださいますわよ!」


なんと、リリア様は他人に教えられるほどに絵画を嗜んでいるのか。


「でも、大人数で押しかけられないでしょう?『貴婦人ノ会』だって、それ故に会員制と聞きますし」

「カールライヒ邸のサロンは広いですし、それに子どもを連れて行ってもいいので、産後間もない方も参加されているのですよ」

「みなさん、乳母に任せているのでは?」

「そういう方も勿論いらっしゃいますわ。けれど、ねえ、夫に色々言われたくもないでしょう?それに、乳飲子だけじゃなく、やんちゃ盛りが自由に遊べる広間も用意してくれているので、なかなか社交界に姿を見せないモンテロー伯爵夫人もいらっしゃって、ねえ」

「助かるわよねえ」などと言って紅茶を飲みながら話は進む。

「なんでも、女性の雇用を拡大して、カールライヒ邸で『趣味の会』専用の乳母や、子守りの雇入れをしたんだとか。だから皆さん気兼ねなく参加されているのですよ。お茶を飲みながらお喋りして帰る方もいらっしゃいますし」


そう言われても、

「私は結婚しておりませんし、子どももおりませんので…」

未婚の私にはイマイチわからない。父母をぼんやり思い出してみてもやっぱりよく分からなかった。

ただすごく盛り上がっているのだけは伝わる。


「一度行ってみません?」

「え、でも…子どもが騒いでいる場は…」

「まさかまさか!専用の広間で見てくださるから、私たちは優雅なものですわ」

「ねえ!」と声高らかに賛同しあっている。

「今日もこれからありますのよ!ぜひ一緒に行きませんか?」

「はあ、」

半ば強引に押し切られるように、カールライヒ邸に行くことになった。





✳︎ ✳︎ ✳︎





「今日、ケイとガイがハイハイをしたんですよ!」

「なんと!もうか!ウチの子たちは天才なんじゃないか?」

「うふふ、普通でいいですわよ」


旦那様は私の肩にストールを掛けてくれた。

「最近、昼間になかなか息子達に会えていないから、癒しが足りなくてな…。夜間は僕が見よう」

「明日のお仕事に障ります。乳母達が見てくれていますわ」

「たまにはいいじゃないか」

と言って、旦那様はコーヒーを一口啜った。

カップを持つ指の優雅な動きは、何度見ても惚れ惚れしてしまう。

こちらを見て「ん?」と顔を突き出したので、咳払いで誤魔化す。

幸せだ。

一日の終わりに、ほっと一息夫婦で楽しむ時間は、何にも代え難い。


「それよりリリア、『趣味の会』はうまく行っているみたいじゃないか」

「ええ、お陰様で」

「しかし本当に良かったのか?費用は私がいくらでも出すのに」

「いいえ、これは私の発案ですから、本を売って得た賃金が結構ありますので」

「君がそう言うなら」


夜のコーヒータイムのお供は旦那様が買ってきてくれたチョコレートだ。

一つ摘んで、「うーん」と頬を抑えた。抑えていないと頬が落ちてしまいそう。

「可愛いな」

「もう、揶揄わないでください」

「そんなに上手いなら、貰おうか」

ちゅ、と口付けして「うん上手い」と言った。

旦那様のこういうところは、まだまだ慣れない。


「カストローザ様も初回以降、絵画が楽しいみたいで、毎回参加してくださいます。それとなく聞いたら『貴婦人ノ会』には結局入らなかったそうですわ。お茶会となると、正面向かってご令嬢達と会話するということでしょう。それってとってもエネルギーがいることですから。その上会員制なんて聞くと及び腰になりがちですわよね。『貴婦人ノ会』は、本当は全然そんな優雅な会じゃないんですけれど…カストローザ様は、裏側を知る前に辞められて本当に良かった」

「カストローザ様も、気軽に参加できると分かったからだろう。うん、それは実に良かった。君の勝利と言えるな」

しかし、これからあちらがどう出るか--と言って旦那様が片方の唇だけで笑った。

この顔をする時の旦那様は大抵悪いことをお考えだが、私はこの表情が嫌いじゃない。


「あちらは私に任せておきなさい」

と言って私の髪にくちづけした。

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