反省(ソバタ視点)
リリーをダイアナさんが見てくれている間、僕は湯浴みをして汚れた衣類を洗濯した。
(なんて惨めなんだ…これがあと何日間続くんだっけ。僕が寝ている間、ダイアナさんに任せられないのか!?)
どんなに洗っても臭い気がする。
(こんなのこっちが人間扱いされていないじゃないか)
と思って、ピタッと手が止まる。
(確かマイロは、背中にリリーをおんぶしたまま洗濯していた気がするな。誰にも頼るなとキツく言ってあったから。あれ?じゃあマイロのやつ、最後に風呂に入ったのはいつなんだろう?)
赤ちゃんなんて、いつだって寝てるもんなんじゃないのか?
リリーが異常なんじゃないのか?
朝、マイロがイライラしているのはこのせいか?
僕は手早く洗濯を終えるとダイアナさんの元に走った。
「ダイアナさん!」
「しーっ!!今リリーが寝たところだよ!赤ちゃんがいるんだから気を遣いな!」
ものすごい小声だけれど、めちゃくちゃな怒りを感じる。
僕は意味がわからずオドオドした。確かマイロにも同じことで怒られた気がする。
幸いリリーは口元をむにゃむにゃさせただけで、ちゃんと寝ている。
「アンタ、いつもそんななのかい!?」
「だって、寝てるんだったら大丈夫じゃないですか?」
「あーあ、アンタみたいな夫を持ったマイロが気の毒だね。赤ちゃんは、ちょっとしたことで起きるんだよ。起きたらこれまたなかなか寝ないんだからね!」
「…それってリリーがおかしいんじゃないですか?」
ダイアナさんはぽかんと口を開けている。
「アンタね、子育てはやってみなきゃわからないことだらけだよ。だから初めは分からなくて当然だと思ってた。でもアンタの無関心、無干渉、そのくせ口出しだけはする、大きな勘違いを正そうとしない、そういう所が問題なんじゃないのかい?」
「はあ」
「リリーは普通だよ、赤ちゃんはみんなこんなもんさ!母親だって分からないことだらけ、知らないことだらけ!良いかい?わかったかい!?」
「いや、でも、僕男ですよ?」
「男だからなんだい、母親がいなくったって立派に子供育ててる父親なんてごまんといるさ!マイロがいなくなったらどうするんだい!?」
(マイロが居なくなったら?どうするんだろう?永遠に続くんだろうか?これが?)
ぐるぐると考えていると、「はい」とリリーを渡されてダイアナさんはそのまま出て行ってしまった。
(まさか、マイロはこのまま出ていくつもりなんだろうか。僕の前から、リリーを置いて?…なんで子どもなんかできてしまったんだ!!僕たちは結婚するつもりすらなかったのに…!!)
朝の静かな時間。リリーの寝息が聞こえる。
これが僕の娘らしい。
産毛が朝日できらきらと光っている。
シャボンの香りが鼻をくすぐった。ダイアナさんが沐浴してくれたのだと分かる。
「はは、お前、さっきまで戻して臭かったのになぁ」
小さな胸が上下している。
どんな夢を見ているんだろう。
よく見ると、鼻の形がマイロそっくりである。
僕はそんな事にも今頃気づいたんだな、と思う。
もしこの子に母親がいなくなったらと思うと、胸が締め付けられる。
「リリー、ごめんよ…こんなお父さんでごめんなぁ…」
なんだか涙が止まらなかった。




