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ヤワなお嬢様で

木立の間を走って走って走り抜けた。

ヴァンルードは足を引きずりながら、早歩きで近づいてくる。所詮ヒールを履いた女の足だと舐めているのか。


(それか、本当に負傷して速く走れないのか)


私はヒールの踵で思いっきりヴァンルードの足の甲を踏んでやった。

あれは人間の急所である。

彼は一瞬にして蹲った。

その隙をついて逃げ出したわけだが…。


果たして逃げ切れるだろうか。



誰にも知らせずにヴァンルードに会ったのは、私の短慮であった。

言ったら絶対に止められる。折角得た復讐の機会をみすみす逃してしまうなんて私にはできない。

どうしても思い知らせてやりたかった!!


(まさか、あんなに簡単な逆さ言葉にも、アナグラムにも気付かず、本の内容を読んでも自分のことだと思わないなんて…)


公園の喧騒がすぐ近くに感じられる。

その騒がしさにほっと安心したのも束の間、振り向くと、ヴァンルードは私に手を伸ばしていた。

息が止まる程驚いて、足がぐねって転んでしまった。


(捕まる!)


一瞬、太陽が翳ったのかと思った。違う。


「…無事か、リリア」

「旦那様」


何故ここに、そう問う間も無く掴んでいたヴァンルードの襟を肩にかけたかと思うと、3メートルは先に投げ飛ばした。


「君に降りかかる一切の火の粉は私が払う」

「あ…ありがとうございます」

「だが、君が自ら火の粉に入るなら…」

「申し訳ありません…」

「私も道連れにしてくれなければ厭ではないか」

「え…?」


伸びた髪の隙間、目が合う。


「立てるか」

伸ばされた手に、躊躇いもなく甘えた。

「いっ!!!!」

脇腹に激痛が走る。

息が上がっているのに、痛みで大きく呼吸ができない。

苦しい。

「…何をされた」

私はとても言えなくて、顔を背ける。

苦しくて、細かく何度も呼吸を繰り返す。

旦那様は私を立ち上がらせると、倒れているヴァンルードの元へ向かった。

「旦那様!」

「直接聞くから良い」


ぐったりと伸びているヴァンルードの襟首を掴んでまるで獲物を屠る獣のように叫んだ。

「貴様ッ!リリアに何をした!」

「…痛いじゃないか。ただ抱きしめてあげたのだよ。肋骨が折れたんじゃないか?お嬢様はヤワだな」

「なん、だと?」


襟首を持ち上げられて、重力に任せるままにだらりと落ちた頭は、こちらを逆さに見ながらニヤついて言った。

「あと口付けもしたぞ。口付けするのは初めてだ、なあ、リリア…」


そっと襟から手を離した旦那様は、ゆっくりと背筋を伸ばしたかと思うと、勢いよくヴァンルードの顔を踏みつけた。

「!!!!!」

二度、三度と踏みつける。

「いっ!痛い!痛い!やめて!やめてくれ!」

「ああ、なんだ。虫か。気が付かなかったな」


最後に力一杯踏みつけた。

「がッッッ!!!」


歯が何本か折れているのがよく見えた。

「良かったなあ、踏みつけたのが痩せた私で」

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