表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/79

復讐の発芽(フォレスティーヌ視点)

「フォレスティーヌ様は『偽りの花嫁』の演劇をご覧になりまして?」

エイミー・ライラック子爵令嬢、今は結婚されてフォン男爵夫人は言った。


この人は暇さえあれば演劇に行く。

理由は簡単だ。

演劇は異国の者も多く関わっている。

舞台裏で働く異邦民を吟味しているのである。

いつものことなので、いつものように質問した。

「お眼鏡に適う異国の男でもいらしたの?」

「あらあ!それはそれとしてよ!とても刺激的な脚本だったの。ほら、流行ったでしょう?同名の自叙伝」

「おほほほ…私、離縁してからあまり外に出なかったでしょう、最近の流行りがよく分からなくって」

離縁してからも何も元より本など読まない。

初版は誤字脱字が目について読めたものではないし、それ以降は読む価値を見出せない。


紅茶が入ったカップを眺める。

(…カッシーナのカップ。奴隷売買で相当儲けているようね)

心の中に澱が溜まっていくようだ。帰ったらこれと同じものを父に強請ろう。


それにしても紅茶が不味い。

どこ産の茶葉だろう。すえたような臭いがする。

加えて随分ぬるい。思わず「不味い」と喉まで出かかってしまう。

「これ、」と言いかけたが、フォン男爵夫人は、にこにこしながら演劇の内容を喋っている。

「それでね、

その著者は好きな人とせっかく結婚したというのに、姉妹が夫を交換するのよ…あら?」

私は思わず紅茶カップを落とした。

「…なんですって?」

「そういえば、フォレスティーヌ様の所もそうではなくて?あら、あらあらあら」


ぱさっと扇子が開かれて口元を隠す。

あれは人を見下している目だ。

隠れた口元はさぞ歪んでいるんだろう。


「エイミー様は、な、何が言いたいのかしら」

「ご存知?今、社交界では、その話題で持ちきりなんですのよ。貴方が本の中の"姉の方"じゃないかって。まあ、貴方は密会でお忙しいんでしょうけれど」


家に篭っているのだから、ご存知の訳があるまい。

香水臭い顔が近づいた。思わず鼻と口を覆った。


「……今までなんとか融通してあげていましたけれどねぇ。これからはちょっと…無理そうね」

「ば、馬鹿を言わないで?貴方だって貴方のご主人だって困るのよ!?」

「さあ?それはどうかしら。貴方、悪目立ちしすぎるのよ」

「し、死体は…?…死んだのよ!どうしたらいいの!?」

「また!?あのね、前回も処理が大変だったのよ。癖は好き好きだけれど、面倒事を押し付けないでくださる?」


フォン男爵夫人は立ち上がり、「良き週末を」と言って帰宅を促された。

「ちょっと待ってよ!話題で持ちきりですって!?私が何をしたと言うのよ!」

「ならば面倒くさがらずに読んでご覧なさいな。もしくは演劇の方をご覧になる?まあ、私なら自分の醜態が記された本なんて読めたものじゃないし、演劇となれば尚更ね」

「…醜態?なぜ醜態なのよ」

「貴方、妹にしてやられたのねぇ。それはそれは恥ずかしかったわよぉ。貴方と友人だなんて知られたくないくらい」

バサリとテーブルに本が置かれる。

「お貸しするわ」


全てを完璧に囲まれた私が陥れられる内容などない。

あるとすれば、それは奴隷を買って、否飼っていることくらい。

知っているのはこの女と、その夫とそれからヴァンルード。


睨みながらその本を手に取って、ぱらりと捲った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ