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第3話 僻地への誘い③

 火野たちはタウンジー大学でパソコンを借りて、また図書館で様々な書物を探してアラオザルの場所を特定しようとするが中々上手く行かなった。近くまで来ていることは間違いないのだが、どうも都市伝説的に伝えられているアラオザルの場所の手掛りの様な湖が特定できない。当然のその湖にあると言うアラオザルも特定できなかった。


「少し休むか。」


 火野が掛けていた眼鏡を外して提案する。朝からずっとモニターを見つめていたのだ、目が疲れても仕方ない。


「判ったわ、でもこれだけ調べても手掛りすら見つからないんだから、アラオザルなんて実在しないんじゃないの?」


 彩木瞳は少しウンザリしながら言う。元々パソコンに向かうこと自体は嫌いではない。学生の時(つい最近まで)は部屋ではずっとパソコンを眺めていたくらいだ。


 パソコンでの情報収集は主に瞳の仕事だった。火野は使えない訳ではないが得意でもない。桜井亮太はからっきしだった。必然、瞳に頼らざるを得ない。亮太は活字もアレルギーだと言い張るので殆ど役には立たなかった。


「コーヒーでも入れて来るよ。」


 そう言う作業は亮太の担当だ。些細なことから大きなことまで身体を動かしてすることなら何でもお任せだった。


「それはそうと瞳、この際聞いておきたいのだが、どうして俺に付いてきてくれたんだ?」


「なによ今更。あの場で私の行き場何て何処にもなかったじゃない。それをあなたが連れ出してくれた、ただそれだけよ。」


 公安や内閣情報室、その手下の反社たち、そんな有象無象が犇めき合っていた場所から火野は瞳と亮太を堂々と連れ出したのだ。場合によっては二人は殺されていた可能性もある。


「それはそうだが、素直に従えば日本政府も保護してくれていたはずだ。」


「言う事を聞かなければ殺す、ということと表裏一体でね。そんなの信用できるわけないじゃない。」


 瞳の言い分は正しかった。従わなければ簡単に殺されるのだ。


「それは話しただろう、お前の意に反して死を迎えてもリセットされる可能性があるんだ。」


「ふ~ん、それ本当なの?あの場を安全に離れるための嘘じゃなかったのかな、って思っているんだけど。」


「嘘じゃない、俺がセラエノで読んだ書物に書かれていた。」


「まあ、そういうことにしておきましょうか。」


 瞳の想像通り、それは火野が吐いた嘘だった。そんな記載はどこにもない。ただそう言わなければあの場を逃れなれない、という判断から吐いた嘘だ。そして、そのままにしておいた方が得策だ、と火野は判断していた。だから嘘だとは認めない。


「それとだ。」


「何よ、まだあるの?」


「いや、これはお前の思いを聞かせて欲しいのだが、知っている通り俺はお前たちに会うまで世界中を回って火の民の末裔を探し出し、炎にして取り込んだ。普通に言えば大勢殺した、ということだ。怖くないのか?」


「うん、そうね。確かに単純化したらそうなるのかな。でも将兵さんは将兵さんの思いがあって、それを叶えるための手段だった、ってことでしょ。それを私がとやかく言える立場にはない、という感じかしら。怖いか、怖くないかと言えば、別段怖くはないわ。だって将兵には違いないもの。」


「俺が火の民を取り込むところを見ていないからな。まあ、怖くなったらそう言ってくれ、すぐにお前たちと別れることにするから。」


「もう火の民には手を出さないって綾野さんと約束したんでしょ。だったら見る機会もないじゃない。それほど気にすることもないわ。」


 彩木瞳の感覚も、一般のそれとは少しズレているのではないか、と火野は心配している。できるだけフラットな気持ちで瞳には居てほしい、と願うだけだった。


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