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第22話 双子の神②

「結局ここまで来てしまわれたんですね」


 早瀬の顔を見ると真知子が残念そうに言った。本当はなんとか捲いてしまいたかったのだ。


「生憎私たちも捲かれましたでは済まない立場なのでね。でもちょっと時間が掛かってしまったのが、こちらとしては残念だった」


「長老、彼は日本政府の内閣情報室というところの職員さんです。その職務に忠実なたる、こんなところまでやって来てしまいました。付けられてしまった俺たちのミスです。申し訳ありません」


 エ=ポウは特段怒った表情にもならなかった。


「よいよい。ここまで来れたのは何かのお導きであろう。それで、この御仁たちは何故アラオザルを訪れられたのであろうか」


 問題はそこだ。その回答でエ=ポウが激怒してしまう可能性も高い。それもあって火野は決して触れてこなかったのだ。


「初めまして、エ=ポウ長老様。私は日本国内閣情報室の早瀬と申します。こちらは同僚の本山といいます。私たちがこのアラオザルまで来た目的は、トウチョ=トウチョ人の皆様が信望しておられる双子の神にお目に掛りたい、それだけです」


 浩太もそれが火野の目的だと思っていた。正直なところトウチョ=トウチョ人の話を聞きたいというのはただの口実で、エ=ポウの信頼を得たところで火野が切り出すものだと思っていたのだ。


 しかし、今思うと火野は早瀬たちが追い付いてくることを見越して、彼らに双子の神との対面を切り出させる、という作戦だったのかも知れない。もし早瀬たちがエ=ポウの不興を買っても自分たちは傷つかない、ということか。それまでの時間稼ぎだとしたら、火野は中々の策士だと思っておいた方がいいかも知れない。


「なるほどの。我らが神に会いたいと申すのか。それは何故じゃ」


 会いたい理由、それを正直に早瀬が言う訳は無かった。日本政府としては旧支配者の力の一端を安全に利用できないかと考えているだけだ。若しくは他国に利用されないか、それを確かめたいという側面もある。


「トウチョ=トウチョ人の皆さまの神にお目に掛りたい、ただそれだけのことでごさいます、他意はございません」


 見え見えの嘘だが、本当に事を言って追い返されるわけにも行かない、というところか。


「目通りしたいだけ、とな。なるほど、なるほど、よろかろう、ここまで来れたということは我らが神に会ってもよいという思し召しかも知れん」


 エ=ポウは簡単に了解した。それか逆に怖かった。何かを企んでいる、若しくは双子の神の眼前に罷り出るだけで邪な企みを暴き出すことができる、というようなことがあるのだろうか。


「しかし、我らの仕来たりで一度に我らが神の御前に連れて行けるのは私以外に四人までになってしまうが、それでもよいか?」


 四人。話の都合から一人は早瀬で決定だが、後三人。


「本山はここで待っていてくれ。」


 早瀬は部下に長老の家に留まるように言った。何かの目的があるのかも知れない。


「火野君、君も一緒に行こう。そして、彩木瞳君、当然君もだ。あと一人は」


「僕も行っていいですか」


 浩太の目的も双子の神に会う事だ、ここで置いていかれる訳には行かない。


「じゃあ、亮太と風間さんは悪いけど留守番で」


 瞳にも双子の神に会って欲しい、というのが火野の目的だったはずなので、この人選は正しい。


「では直ぐに行こうか、付いて参れ」


 そう言うとエ=ポウは先頭に立って下へ下へと降りていく。螺旋階段をどんどん進む。居住用の建物が無くなってしまってからも降り続ける。


 降り続けていると下から何か吹き上がる風のようなものを感じるようになってきた。それが少しづつ強くなっていく。何かの臭いもする。獣臭とでもいうのだろうか、だんだん強烈な臭いになっていく。


「もう少しで付きます」


 エ=ポウが言った途端、降っていた螺旋階段は少し緩やかになった。そこが近いようだ。

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