表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/70

第四章 空を泳ぐ雲は橙色に染まる ~告白~



  五


 遅い夕食後、司が部屋へ戻ったのを見計らい、りんはハナに今日のことを報告した。

「ハナさん、どうしよう。どうすればいい?」

「覚悟を決めるんだね」

「なんの?」

「言っただろ、結婚を本物にすればいいんだって」


「無理だよ。だって、私は誰も幸せになんかできない。一生一人でいなきゃいけない人間なんだよ」

「司はなりに良く似てる。一度決めたら曲げない子だよ」

「手紙を送るだけなら私にもできるけど、ずっと一緒にくらすのは無理だよ。ましてや結婚なんて絶対にできない」

 りんがそう吐き出したとき、リビングのドアが開いた。


「りん、ちょっと出かけないか?」


 ドアの向こうに立っていたのは、司だった。りんは司が今の話を聞いてしまったことを確信した。全身が今にもふるえ出してしまいそうになる。

「行ってきな、りん」

 りんが立ち上がり、リビングの棚から愛車の鍵を取った。


「どこへ行けばいいですか?」

 玄関を出たところで、りんが尋ねた。怖くて司の顔を見ることができない。

「どっか広いとこない?」

 司がそう答えたため、りんは星が良く見渡せる山間の駐車場へ車を走らせた。そこは小さな展望台に面する場所で、町内の夜景が一望できる。この季節であれば、先客もないだろう。


 二人は一言も話さず、その駐車場で降りた。


「りん、ここで待っててくれないか?」

 司がりんに言う。りんはわけがわからないまま、首を縦に振った。


 コンクリートで舗装された駐車場には誰もいない。ここは街灯が少ないため、夜空に浮かぶ星もくっきりと映えている。星に詳しければ気がまぎれたかもしれない、とりんが悔やんだ。なぜこんなことを考えてしまっているのか、それさえもわからない。司は広い駐車場の端にある展望台の前まで走って行ったようだ。


「りんは俺のことずっと応援してくれてたんだな! そうなんだろ?」


 遠くからでも、司の声がはっきりと聞こえる。まるで夢のような景色だった。町の灯りがきらきらと輝き、星はちかちかと瞬き、司がりんの名前を呼んでいる。


「好きだ、俺と結婚してくれ。言っとくけど本気だから。俺はもう役者には戻らない。ここでハナさんとりんと三人で生きていくって決めたんだ」


 りんがいくら目を閉じてもこの夢は醒めなかった。こちらへ戻ってきた司は息をきらせている。


「聞こえた?」

「はい」

「返事は?」

「私はでき損ないですよ。バツイチだし、傷もあるし、性格も見た目も悪いし。それでも私がいいんですか? 一緒にいたら不幸になるかもしれません」

「不幸にはならない。そんなふうに自分を卑下しちゃダメだ」


「どうして……ずるいです。こんな未来、想像もしてなかった。希望を持ってしまうじゃないですか」

「持てよ。俺がりんの希望になるから」

「私は男の人が怖いんです。良くなってきたとはいえ、まだ克服できるかもわからないですし、人並みには生きられないと思います。それでもですか?」

「うん」


 りんは一度俯いてから顔を上げ、最後の切り札を出すために話し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ