北の森
はじめましてnon汰というものです。
ちまちま書いていこうと思います。
生暖かい目で甘めに見てください。
少しでも遠くへ
とにかく今はあの家から離れたかった
真っ暗な森の中を発して走り抜ける
立ち止まる暇なんてない
一度止まれば悪魔の声が私に囁いてくる
「お前はなぜ走る」
「お前は逃れることはできない」
耳障りな悪魔の囁き
それを無視して私は走った
呼吸が苦しい
息を吸う度に冷たい空気が肺に入り凍ってしまうのではと思ってしまう
少し星の灯りで足元が照らされ先を見た時だった
そこにいたのはまるで夜そのもの
「……なぜこの森に入ってきた」
悪魔の囁きとは別の低くて優しい声
「苦しいくらいなら遠くへ行きたかったの」
「ここは寒い。一緒においで」
彼は振り返り歩いていく
どうしたらいいものか分からなくなり立ち止まっていると彼は振り向きついて来いと言う
急いで彼について行く
足取りが早く息が上がる
少しすると彼に追いつくことができた
歩くペースを遅くしてくれる彼は優しい人だと思った
「なんで優しくしてくれるの」
「なんでだろうな。大人しく着いてきなさい。
家に着いたら教えよう」
ふっと微笑む彼は素敵だ
だいぶ森の奥深くまで進んだ気がする
後ろを見れば闇が広がっていた
「着いた」
「え」
そこには大きなお屋敷があった
今まで住んでいた家もとても華やかで素敵な屋敷だったが、このお屋敷は何というか心が落ち着いた
「リオ」
「はい。旦那様」
「客人だ。まずは温かいコーヒー……いや、ココアを用意しろ」
「かしこまりました。
お嬢さん、よくここまでいらっしゃいました。
応接室へご案内いたします。
どうぞこちらへ」
リオと呼ばれる彼は私を丁寧に案内し始める
「後で私も行くから、少しそこでリオと待っていてくれ」
そう言って夜の彼は別の部屋へ入って行った
応接室と言われるところは暖炉があって、その目の前に大きなソファとテーブルがあるシンプルな部屋だった
「お嬢さん、私はリオンと言います。
この家の執事をしております。どうぞ、リオと呼んでください」
「……リオ……」
「はい。お嬢さん」
笑顔で彼は返事をしてくれた
「ここはどこですか?」
「……お嬢さん、ここは北の森の奥深くです。
夜は暗くて寒くて怖いところでしょう?
少しここでゆっくりお休みになられてはいかがでしょうか?」
少し悲しげに話すリオン
「でも、私ここにいても何もできないです」
「別に何もできなくたっていい。
ゆっくり休めばいい」
そう言って夜の彼はやってきた
「旦那様……」
「リオ、2人で話をする」
「かしこまりました。ご用がございましたらお呼びください」
ではまたとリオンは部屋を去って行った
「サラだろう」
「……え」
何で私の名前を知ってるんだろう
「俺の名前はトウヤ。カイルから聞かされてないのか?」
カイル……私を育ててくれていた人
私はその人の家から逃げてきた
「……トウヤ?」
「ああ。会うのは初めてだな、サラ」
夜の彼はトウヤと言うらしい