再会の続き
公以下の者を下がらせる。
向こう側はアノ人ともう一人だけだ。
「では、場所を移そう。」
異界へと移動する。
生身では厳しいので、二人には厳重に保護魔法をかける。
「ここって…宇宙!?」
「はー…。凄い…。」
夜の一角を切り取った空間だ。
真っ暗闇の中、数多くの星と一つの城が浮いている。
私達は直接城のバルコニーへと転移し、既に紅茶の用意されている席に座る。
「貴女は…覚えているのか?」
ずっと気になっていた事を聞く。
私の名前を何故呼んだのか…他にも幾つか思い浮かぶが、これが一番確率が高いと思う。
「…はい。ジェント…様、ですよね?」
その返答に喜ぶが、いきなりの敬語に驚く。
(いや、当たり前か。さっきは皇帝として振る舞っていたんだ。)
「昔の呼び方で…いや、強制するものでも無いか。好きに呼んでくれ。」
いきなり皇帝を呼び捨てにしたら色々困るか…お互い立場は変わってるしな。
「お前達も良いな?」
「「「「御意。」」」」
王達にも確認すると、揃って返事をしてくれた。
「……はー…。本当にジェント…様なんですよね?何というか…変わり過ぎてて…。」
「英理…?置いてか無いで…。」
一緒について来た女性が困っているようだ。
「そうだな。まずは自己紹介といくか。私はジェント。この国の皇帝をしている。私的な空間なら呼び捨てでも大丈夫だぞ。」
続いて王と帝を簡単に紹介する。
「「「宜しくお願いします。」」」
王達が頭を下げる。私の大恩人と伝えているし、不満を持ってる者も居ないようだ。
詳しい紹介はまた今度すれば良いだろう。
「「…コ、コチラこそ…お願いします。」」
二人が青い顔で頷いている。
一度に数が多過ぎたか…?
「わ、私は安野英理です。」
「…ワタシは佐乃優です。」
…前世と殆ど同じ名前だな。呼び易くて助かる。
「優とは幼馴染で、前世の事も話しているんです。ジェント…様の事は話してなかったけど…。」
優か…エリー…英理の親しい人なら重要人物だな。
「そうか…英理の前世、エリーには本当に世話になったんだ。今度は絶対に幸せにするから、期待していてくれ。」
「え!?」
「ん?」
「あ、…は、はい……。」
顔が赤いな…風邪でも引いたのか?
「…大丈夫か?」
「ひゃ……はい。」
「そうか…無理は絶対にしないでくれ。リース、これからは英理に付くようにしてくれないか?」
私の加護も付けておくが、護衛も居た方が安心できる。
「御意。」
「え!?……王様、なんですよね…?」
「……確かに。王だとマズいか…。」
配慮が足らなかったようだ。
「そう…ですよ!学園に通うんですよね!?絶対大騒ぎになりますよ!」
「そうだな…分かった。リースには一時的に王位を退いて貰おう。戻るまで空位にするし、権限はそのままにすれば良いだろう。」
この方がより警護に専念出来る。レンの配下達も皆学園に通わせよう。
「いやいやいや!そうじゃ無い…です!!私なんかの為に、そこまでしなくて良いですよ!」
「む…英理様。私『なんか』というのは止めて頂きたい。某らが待ち望んだお方、是非堂々として居て欲しいでござる。」
流石リース。良い事を言う。英理は自信に満ちていた方が、らしいからな。
「リ…リースヴァルト様――」
「リースで結構。」
「リース…様――」
「リース。」
「……リース。」
「何でござろうか!!」
「……待ち望んだお方って、どういう意味ですか?」
「ああ。そんな事ですか。ここ、異界には御主君の大恩人、エリー様の像が有るのでござるよ。」
まさか本人にお披露目する事が出来るとはな。
「国家予算にして三年分の出費だったが、中々の出来栄えだぞ。」
「三年……!?」
「本当は十年分はかけたかったのだが…すまない。だが今度は百年計画として作戦を練り直そう。もう少し待っててくれ。」
転生転移を記念して、帝都に英理の巨大像を祀っても良いかも知れないな。
「百年…ふふ…優、助けて…。」
優…彼女にも私の加護を与え、ギフトも幾つか追加しておかねばな。
「あ、あの…その像を見せて貰っても良いですか?」
「優!?」
「…ごめん。気になっちゃって…。」
中々見所の有りそうな子だな。
流石は英理の友人だ。
「それでは案内しよう。」
転移しても良いが、折角だし歩いて行こう。
この異界城は質で言えば一番だからな。
入るには色々と制限が有るので意思の有るモノは居ない。ジュエル直下の魔法生物、主にゴーレムが配置されている。
地球の技術も使われていて、本当に生きてるかのような動きをする。
「イルカ?が…空中を歩いている…。」
「あっちも…烏?がビーチパラソルの下でくつろいでる…。」
個性的なのはジュエルの趣味だろう。
「これだ。」
真っ暗な空間に魔法を放つと、一面の星空とそれに照らされる大きな氷塊が見えてくる。
壁は一面魔法のガラスで出来ており、星の輝きを氷塊に集めている。
氷塊は見る角度によって七色に輝き、中の女性を神秘的に映し出す。
「キレー!大人の英理だ!しかも超綺麗!可愛い!凄ーい!」
「え…?これ…、美化され過ぎじゃない…?前世の私、こんなにナイスバディじゃ無かったような…?」
私の記憶を切り取って色々と手を加えたからな。
思い出補正というやつだろう。
「国の芸術家を総動員させた。安心してくれ。女性だけしか使っていない。」
いくら像とは言え、男に作らせるのはな…。
「国…芸術家……総動員………。」
「これってミニチュア版無いんですか!?小さい英理を飾りたいです!」
英理が何か呟いてるが、優の言葉が気になってそれ所では無い。
ミニチュアだと…!何と言う発想!これだから異世界人は侮れん…!!
「優君、それは素晴らしい発想だ。すぐに国家予算をつぎ込もう。君にもアイデア料を渡すから期待していてくれ。」
「あの…現物支給でも良いですか…?」
何と言う…!
素晴らしい。
ここまで私の魂を震わす異世界人が居たとはな…。今日は良い日だ…。
「ジェント…!優…!そこまでにしときなさい!!ふふ…私も吹っ切れたわ!今後私の像を作るのは禁止!!良い!?」
「地球では表現の自由が守られているのでは無いのか!?」
「そうだー。横暴だー。」
英理の言葉に反論する。
今何か大事な事が有った気がするが、それ所では無い。
優も何故もっと大きな声で言わないんだ!
「ここは異世界!横暴でも有りません!良いわね!?」
「「…はい。」」
まさか神たる私を黙らせるとは…成長したな。
大昔に戻った気分だ。
何となく気分が若返ってくる。
「「えええええ!!!」」
二人が私を見て驚いている…。
どうしたんだ?
「おお!我が君が若返った!!これで後三千年はいけるぞ!!」
「やったでござる!早速祭りを開きましょうぞ!!」
ミーナとリースが騒いでいる。
どうやら若返ったようだ。
私達のように神の座に至ると不老で有り、見た目も殆ど意味を為さない。
ずっと疲れたような感覚だったが、今は心も若返った気分だ。
「え…。今までの姿でもヤバかったのに…。ヤバイ……反則過ぎでしょ…。」
「って言うか英理、いや、エリーか。この人の少年時代を囲ってたって…犯罪過ぎでしょ。よく捕まらなかったね。」
二人が何か話しているようだが、私も王達に囲まれていてよく分からない。
久しぶりの感覚に少し戸惑ってしまうが、これからも楽しくなりそうだ。
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