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再会、制裁

ーーージェント視点ーーー



帝城の玉座の間、久しぶりに異世界人達の報告を受けている所だ。


「それで…、異世界人達が揉めていると?」


「はい。殺し合いに発展する事は無いと思いますが、ギフトの強奪までは既に行っているようです。」


ゴンの言葉に耳を疑う。

事前授業でこの国の法については話しているはずだが…。


「そいつらは阿呆なのか?」


「はい。その通りです。色々と勘違いしているようですね。」


どうやらたまに来る厄介者か。今回は改心してくれると良いが…。


「……御主君。あの集団の中に、アノ人に似ている方が居ました。いずれハッキリすると思い黙ってましたが、様子を見ていた方が良いかもしれません。」


リースがとんでも無い事を言い出す。

思わず玉座から腰を浮かすと、ジュエルまで登場した。


「ご安心を。アノ人には余の加護を与えております。絶対にその身に傷は付けられないでしょう。」


異界を封鎖して来たのか。そこまですると言う事は…。


「まさか…本当に現れるとはな…。」


それも地球に転生しているとは。

記憶は失われているだろうが、絶対に幸せになって貰わないとな。


ジュエルが異世界人達の様子を映し出すと、ちょうど二人の男が戦っている所だった。

片方は複数のギフトを持っている。コイツが問題児みたいだな。


「いつも通りそれがしらは手を出しておりません。その方が個々人の資質も見れますので。」


リースが伝えてくれる内容はいつも通りの事だ。

今回は四人以外はまともな人間だそうだ。


そしてアノ人を見てみると…。


(確かに…そっくりだ…。)


かなり痩せていて、栄養失調かと思う位の細さだが、アノ人そっくりだ。


エリー=アノン。大昔に孤児わたしを拾ってくれた女性。

ずっと恩を返したいと思っていた存在だ。

映像では魂まで確認出来ないが、間違い無いと言う予感がする。


「ほぉ…。相変わらず天晴れな御仁でござるな。」


映像を見ていると変わった存在が現れた。

乱闘になる所を仲裁し、自らのギフトを手放すとまで宣言しているのだ。


織田おだ星南ほしなそれがしのお気に入りで、この集団の統率者ですぞ。」


リースが嬉しそうに解説してくれる。

織田か…私達の世界では見ない献身だな。


「む…。行ってくる。ちょうど良い。全員集めておいてくれ。」


「「「御意。」」」


アノ人が異世界人を庇って攻撃されそうになっている。

ジュエルの加護で無事だろうが、座視している事は出来ない。

あの異世界人は攻撃は遅いし、十分間に合うだろう。

相変わらず優しい人だと思い、笑みがこぼれてしまう。


問題児とアノ人の間に転移し、結界を張る。

問題児は突然現れた私に驚き、目を見張るスピードで後ずさって行った。


(逃げ足は中々だな。)


アノ人の姿を見ると、彼女だと確信した。

それもほぼ同じ魂を受け継いでいるように見える。


「器は変わっても魂の在り方は変わらずか…。君は覚えていないだろうが、久しぶりと言っておこう、エリー。」


つい話しかけてしまった。

冷静なつもりでいたが、知らずに昂っていたようだ。


私の方を見て、何故か手を伸ばしてくる。

そして、知らないはずの名前を呼んでくる。


「ジェント……?」


久しぶりに名前を呼ばれたな。しかもアノ人に呼ばれるとは…。

少し驚いて、知らずに微笑んでしまう。

久しぶりの、暖かい感覚だ。


講師達が驚き、殺気を放とうとしているのを止める。

名前を呼び捨てで呼ばれたのが許せなかったのだろうが…折角の良い気分だったのが台無しだ…。



「これ以上は看過出来ないと判断した。これより去就の最終確認を行う。」


その言葉と共に玉座の間へと転移させる。

私も玉座へと移動した。


すぐ隣にジュエル、左右に王達、その下の段に公や王配下の有力な部下達が並んでいる。

アノ人の事は王未満の者は知らないが、今後関わって行くだろう。


ひざまずきなさい。』


ゴンが威圧を込めて命令する。

アノ人とその関係者は保護したが、他の者は震えているようだ。


「この御方はアノン帝国の皇帝神『ジェント』様だ。決して無礼の無いようにな。」


リースが紹介してくれる。

私の事は事前に教えているのだろう。殆どの者が震えている。


「気軽に名前なんて呼ぶなよー。首無くなるからなー。物理的に。」


ミーナが脅している。

あ、アノ人が青くなってしまった。ミーナめ、余計な事を言いおって…。

リースにフォローを頼む。


「御主君の認めた方なら大丈夫でござるよ。…それ以外の者はお気を付け下され。」


フォローしてくれたが、プレッシャーかけてるから逆効果の気もする。


(……はあ。)


「一日早いですが、皆様の今後について最終確認を取ります。この国を去るなら顔を上げて下さい。」


内心で溜息をついているとジュエルが確認を取ってくれている。

…全員、頭を下げたままか…。


「では、帝国法に従い、何人かに処罰を言い渡しますぞ。」


ザドが嬉しそうに笑っている。

死霊族だけあって、人の苦しむ姿が好きだからな…。


小早こばや秀塵しゅうじん、死刑。」

早川はやかわ秋減しゅうげん、死刑。」

北方きたかた政痢まつり、流刑。」

条野内じょうのうち債子さいこ、流刑。」


「以上となりますな。」


ザドが四人に死刑宣告をする。二人は流刑だが、あの強さだと同じ結果となるだろう。

異世界人達が驚いてるのが分かる。

やかましいが、喋らせてやるか…。


「喋って良いですよ。」


ゴンが許可を出す。

途端に四人が騒ぎ出した。


「何故ですか!?おれはこの国の教えに従っただけですよ!?」

「そうだ…です!それに俺は何も…していないです!!」

「わたしもよ!?なんでなの…ですか!?おかしいです!!」

「そうです!私達だけが何故!?この世界にまで財閥の力が及んでいるのですか!?」


小早、早川、北方、条野内の四人が騒ぎ出す。

名前を覚えていなかったから鑑定してしまった。

口調は部下達が睨んだ事でしっかり修正している。


「帝国の民になると宣言した時点で、この国に居る間の違法行為は全て刑罰の対象じゃ。この数日間の悪行、振り返ってみるが良いぞ。」


ザドが本当に嬉しそうにしている。死霊族は生者の苦しみが好物で、刑の執行も喜んでやるからな。


地球と違って盗みの罪はそれなりに重いし、盗んだものに応じて罰も重くなる。

ギフトなら一つ奪っただけでも死刑だ。

もう一人の男も『吸収』のギフトで大勢の人間からステータスを奪っていた。

女二人は共犯という事で減刑されて流刑だ。


他者を害するギフトを取得した人間は殆どが欲望のままに使ってしまう。

それがその者の本性なのだろう。

事前にギフトを封印する事も出来るが、結局は後で問題を起こすのでやっていない。

死者が出るなら事前に止めるし、それ以外の事は元に戻せるからな。


『ギフト、能力値、持ち主の元へ』


ジュエルの言葉と共に、男達の奪ったものが元の持ち主に返される。

男達は驚いているようだが、誰がそのギフトを与えたと思ってるやら…。


「お待ち下さい!おれは絶対役に立ってみせます!帝国は戦力を必要としているんですよね!?」


「カカカ…。おっと…失礼。」


男の言葉にザドが耐え切れずに笑い出す。

異世界人達は理解して無いようなので、そのまま伝えるように指示した。


「御意。…貴様らヒヨッ子の戦力なぞ、帝国は必要としておらんよ。そのギフト、誰が与えていると思っているのじゃ?」


ザドの言う通り、歴代の異世界人で強さが認められた者は殆ど居ない。

その他の分野で活躍している者は多いがな。


「なら…なら!帝国を出ます!それなら死刑は免れるんですよね!?」


ザドの威圧に晒され、男の足が震えている。それでもまだ粘るようだ。

何人かの部下が顔をしかめている。

我々の前でここまで往生際の悪い態度を取るのも珍しいからな。


「後出しも良い所じゃな。…面倒じゃしそれでも構わんよ。国を出るんじゃな?」


「はい!出ます!すぐに出て行きます!」


男…小早だったか?は国を去るようだ。


「帝よ。お願いする。」


『ギフト、スキル、戻れ。…転移。』


「え?」


ザドの頼みにジュエルが応じ、男は飛ばされて行った。

ギフトも無いし、あの強さでは長生き出来んだろうな。


「帝国を離れる以上、帝国から与えられたギフトやスキルは返して貰う。当たり前の事じゃな。あの者の傍には金貨や食料も置いておいた。幸運に恵まれれば生き残るじゃろう。」


金貨と違ってギフトやスキルは安くない。帝国から去る者に与える訳が無い。


「ッヒ!許して下さい!ちょっと能力値を奪っただけじゃ無いですか!もう戻ったし!コイツらも許してくれますよ!なぁ!!」


残った男が大声で叫ぶが、異世界人は何も言わないままだ。

…いや、織田が何かを言おうとしているが、周りの人間に止められているようだ。


「そうです!コイツらが全部やった事です!わたし達は関係無いです!!」


「ちょっと調子に乗った奴らを懲らしめたかっただけなんです!ごめんなさい!!」


二人の女の言葉に男が怒り出す。

ここに来て仲間割れか…。


「お…お待ち…下さい!この子達はまだ未成年なのです!どうか!どうかお慈悲を!」


問題児達の行動に呆れていると、集団の統率者、織田が頭を下げてきた。

周囲の制止を振り払い、強引にやって来たようだ。


「帝国法では皆成人ですよ?ギフトや能力値の強奪は重罪ですし、一人は帝国から出ると宣言までしました。…それでも貴女は許しを請うのですか?」


ゴンが笑いながら問いかけている。

アレは…どうやらゴンも織田を気に入ったみたいだな。


「はい!私もこの子達位の頃は馬鹿をやっていました!ですが、恩師のお陰で更生出来たんです!この子達も絶対変われます!」


ふむ…。魂を見る限り、全く汚れていないな。

馬鹿をやったと言ってもレベルが違うだろう。


「その身、その魂まで帝国に捧げると誓うか?」


織田に私自ら声をかける。

法をくつがえすとなると、私が出るしか無い。

リースとゴンに感謝するんだな。


「…はい!誠心誠意仕えます!」


真っ直ぐこちらを見てくるな。うむ、皆が気に入る訳だ。


「良かろう。其方の持つ献身の精神、この国に広めてみせよ。それを持って許しを与えよう。」


「必ずや!広めてみせます!」


元々任せる予定だった仕事だ。

我が国には殆ど無い考え方、是非とも広めて欲しいものだ。


ジュエルに視線を向けると、すぐに行動を始めた。


『戻れ。…復元。』


戻された男は既に重症だったが、すぐにジュエルが治療した。


「ッヒィ!!腕が!?腕が!!頼む!!止めてくれーー!!」


どうやらギリギリだったようだな。

まだ幻覚が残っているようで、体中を掻きむしっている。


『眠れ。』


錯乱状態から戻らないのでジュエルが眠らせた。

治療を受ければまた正常に戻るだろう。


「…では、男二人はギフト剥奪、スキル封印の上で一年間留年とし、その間は学園の奉仕活動をするように。」


ザドが戻ってきた男を見て落胆しながら話す。もっと酷い目に遭っていて欲しかったんだろう。


「女二人はギフト封印の上で、学園に通いながら奉仕活動。と言った所ですかな?」


一気にやる気が無くなったようだ。つまらなそうにザドが伺いを立ててくる。


「それで良い。」


「では、織田がその四人の面倒を見るように。犯罪紋を刻みますので、貴女の命令に従います。…刑期が明ければ痕は残りませんよ。」


私の言葉にゴンは捕捉をしていく。

私の役目はここまでだな。


「では、これで終わりとする。これから名前を呼ぶ者は残るように。」


終了を宣言し、アノ人とその友人に残るように伝える。

アノ人一人では緊張するだろうしな。

新作書いてます。


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