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クラス転移 5

ーーー安野英理 視点ーーー



玉座の間に入ると荘厳な世界が広がっていた。

高い天井、左右の壁に配置されている巨大な石像と、その前に並ぶ天使達…。

一定の間隔を開けて並んでおり、二階部分、三階部分にも同じように並んでいる。一番下の人達以外は皆空中に浮いているようだ。

その美しい姿に目を奪われそうになるが、通路の先、一段高くなった玉座に座る人の存在感がそれを許してくれない。

きっとあの方が帝国の頂点なのだろう。両隣にはリースヴァルト様と、怜悧れいりな感じのする男性が立っている。


(キレイだけど…宝石?)


玉座の方のお顔を見る事が出来たけど、透明な…宝石か水晶のような体なのかもしれない。

少し色味のある水晶のようで、顔の造形はかろうじて分かる。

周りを見ると皆俯いていたので、慌てて私も頭を下げる。


「礼儀作法などは気にしません。ここは天空城。余は皇帝の代行者です。」


その言葉と共に空気が変わる。

平坦というか、抑揚の無い、昔の機械のような喋り方だ。

皆も緊張がほぐれたみたいで、ホッと息を吐いてる人も居る。


「帝城には別の客が訪れていてな。貴殿らは今別の城に居る。まぁ深く気にする必要は無いぞ。」


リースヴァルト様はそれ以上詳しい説明をしなかったが…もしかしたら、いつの間にか転移させられていたのかも知れない。


(転移か…この国、本当に規格外だな…。)


騎士達の装備品や城の調度品を見て、ある程度分かっていたつもりで居たけど全然だった。

前世で知ってるものが出てきた事でようやく実感した。

転移なんて私の知る限り最高位の魔法。前世の王国では使える人なんて居なかったし、遺跡で見つかる転移石は王族が独占していた程だ。


「それでは、皆様。こちらへどうぞ。」


執事姿の老人に従い、玉座の近くまで歩いていく。

腰が曲がってまで仕事するなんて、意外と人手不足なのかな?


「お座り下さい。」


玉座の方の声と共に椅子が現れる。

ひざまずくのかと思ったけど、これで良いのかな?


「余は帝国の帝を務めるジュエル。皆様方はまだ客人です。気にしないで大丈夫です。」


私達が座るのを躊躇ためらっていると、ジュエル様が重ねて声をかけてきた。

その声を聞いて、私も優と頷き合いながら座る。


「この世界の事を知りたいか、ギフトが欲しいなら椅子に座っていて下さい。独りで生きていくなら椅子から立ち上がって下さい。」


ジュエル様の宣言の後、椅子を立つ生徒は一人も居なかった。

少しだけ不良達に去って欲しいと思っていたけど、そうはうまくいかないみたいだ。


「では、ギフトとスキルを与えます。またいつか会いましょうね。」


その言葉と共に姿が薄くなっていった。

最後に私の方を見ていた気がするけど、気のせいだよね…。


「おお!分かる!ギフト貰えたぞ!」

「やった!聖騎士だって!絶対大当たりだろ?!」

「俺なんてスキルで回復と身代わり!ギフトで肉壁だぜ!!…あれ?肉壁って…喜んで良いのか?」

「皆!静かに!」


皆で騒いでいると村上君が突然大声で叫び出した。

少し顔が青いけど、どうしたんだろうか。


「ギフトやスキルは皆の生命線になるかも知れないんだぞ!?簡単にバラすなんて何を考えているんだ!!」


その声で一斉に鎮まりかえる。

鬼気迫る表情だけど、それだけ皆の事を思っているんだろう。


「リースヴァルト様!私達の中での揉め事はどうなるんですか?!」


「…貴殿らは客人。それも賓客扱いとなる。余程の事が無い限りは貴殿らの中で解決して貰いたい。」


リースヴァルト様が厳しい表情で話す。

何か懸念が有るような話し方だ。一体どういう事だろう。


「村上。その位にしておけよ。」

「そうだぜ。リースヴァルト様も困ってるじゃ無いか。」


「……。」


不良気取りの二人が村上君の肩を掴む。

小早こばや早川はやかわ。噂だと電子世界で違法行為をした事も有るって話だ。


「うわ!止めろ!!」


「…ッチ。」


青い顔をして村上君が小早の手から逃れる。

やはり村上君は何か知っていそうだ。


「皆さん!静かに!!小早君、早川君、人の嫌がるような事をしてはいけませんよ。」


その様子を見て先生が注意する。


「そうだな。ここは神聖なる玉座の間。それ以上のみにくいさかいは見るに耐えん。昨日の広間へ送るからそこで続きをすると良い。その後は好きに解散してくれて構わんよ。」


リースヴァルト様が手を叩くと、一瞬で昨日の広間へと移動した。

これだけの人数を下準備無しに転移させたのだろうか…。

その事実に気付き血の気が引いていく。


(絶対にこの国に逆らっちゃダメだ!今って神話の時代なの…!?)


こんなのお伽話でも聞いた事が無い。

つい前後不覚になり優に抱きついてしまう。


(ああ…。癒される。)


「え、英理?」


「良いから。少しこのままで。」


優とジャレ合ってると、また小早が騒ぎ出した。

まだやるつもり何だろうか…。


「リースヴァルト様もああ言ってたし、ここで続きでもするかー?なぁ、村上ぃ!?」


「や、止めろ!君達の秘密をバラすぞ!?」


小早と村上君が対峙している。

リースヴァルト様の魔法を見た後だと子犬がジャレ合ってるようなものだが、私も同じ子犬だ。注意しておかないと。


「ッチ。マジで分かってそうだな。」


「何の秘密か知らないが、良い加減にしてくれないか?小早、早川、君らのせいでこの国から追い出されたらどう責任を取るつもりなんだ?」


おお!ついに頼れる男が出てきてくれた!

我がクラスのカーストトップ、はら君だ。

冴香や麗羅もカーストトップだけど、陰キャにも優しい超良い人達なんだよね。


「は?そんなの知るかよ。テメーらの運が無かっただけじゃねーのか?」


早川が原君に反論?している。本当に自分勝手な奴らだな…。


「ならここで俺にシメられるのもお前の運が無いだけか?」


おお!岳田たけだ君まで。

地球では珍しい筋肉質な肉体を披露している。地球で見た時より一回り大きい気もする。


「ダメですー!喧嘩は止めましょ!?ね!?」


先生が止めに入ってくれた…。でも、ここでぶつかっていた方が良かった気もする…。

勿論私がやる訳じゃ無いから何も言えないけど、どこかで痛い目に遭わないと、小早達みたいのは止まらない気がするんだ。


「先生…。」


「うーむ。先生に出て来られると強行はできんな…。」


原君と岳田君も止めるようだ。

流石は先生だ。皆に愛されている。


「英理…。英理はダメだよ?」


「前にも言ったじゃない。この年になってやる訳無いわ。」


優は私を何だと思っているのだろう。

確かに小早達にはムカついたが、か弱い乙女がでしゃばる訳無いでしょうに。


「ふん!命拾いしたな!精々織田(おだ)に感謝しとくんだな!」


「アイツら…。先生を呼び捨てにするなんて…。」


「英理ー…。」


小早の言葉に拳を握りしめると、優からジト目を向けられる。

拳を握っただけなのに…。


織田おだちゃんとか。星南ほしなちゃんとか。もっと敬意を払った呼び方なら許せるのにね。」


「ちゃん付けって敬意なの?」


優が私の言葉を疑うなんて…異世界に来て反抗期が始まったとでも言うのだろうか…。


「貴女達って…そういう関係なの?…いえ、別に自由だと思うわよ?でも…大部屋だと私達邪魔じゃ無いかしら?」


真っ赤な顔で冴香が聞いてくる。

その言葉でようやく私達の状態に気が付いた。


(優を抱きしめたままだったわ。)


しかも結構長い間抱きしめていた気がする。


「ち、違うよ!英理とはそんなんじゃ無いよ!」


優に突き飛ばされてしまった。

仕方無いとは言えショックだ。


「あちらの二人は参加しなかったようですね。仲間割れでもしてるのかしら?」


麗羅が隅の方にいる二人の女生徒を指差している。

小早達とよく一緒に居る北方きたかた条野内じょうのうちだ。

あの二人、よく私達を見て笑ってるから好きじゃ無いんだよな…。


「ホントだ。あの二人、人によって態度変えるからぼくは嫌いだな。」


日向も同じような事を言っている。皆思う事は一緒みたいだ。


「……小早達に呼ばれて、結局付いて行っちゃったわね。せめて離れてくれれば良かったのに。」


冴香が残念そうに見ている。結局変わらずか。

最後に村上君に何か話して、小早達は去って行った。

あ、原君達も村上君に話しかてる。あの意味深なやり取りの真相を聞き出して欲しいものだわ。


「…皆でギフトの話し合いとかする?部屋で話せば大丈夫だよね?」


優が耳元で話しかけてくる。

突然だったからビックリしたじゃない。

反撃したかったけど、冴香がジト目で見てるから止めておいた。

おのれ、まだ疑っているというのか。

優の言葉に頷いて、皆に声をかける。


「私達も部屋に戻る?皆で貰ったギフトの教え合いでもしない?」


短い時間しか過ごして無いけど、ここに居るメンバーなら大丈夫だろう。

そもそも何で村上君があそこまで脅えていたかも分からないしね。


私の言葉に皆賛同してくれたので皆で部屋を出る。

クラスの皆もそれぞれ帰るみたいだ。

さーて、どんなギフトを貰えたのかなー?

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