彼女は罪人? それとも……(フロランタンの独白)
エドワール視点か弟視点が見たいと言う感想がありましたので、弟視点だけ。
私の目の前で、双子の姉であるエマニュエルが、処刑されようとしています。
「私は、無実です!」
それを聞いて、私はつい笑みを浮かべてしまいました。
誰も貴女を信じないのに、と。
エドワール様の恋人のデルフィーヌを殺そうとしたのは、私です。
だって、エマニュエルばかり、狡いんですもの。
双子として生まれたのに、私だけ男だったから。
エドワール様の婚約者だから。
私が女として生まれて、エドワール様の婚約者だったら、こんな事にはならなかったのにね。
処刑が終わり、デルフィーヌがエドワール様に話しかけました。
「暫く独りにして貰えませんか?」
それに答えるエドワール様を見ながら、私は、悲しみを通り越して怒りを感じた事を思い出しておりました。
だって、エマニュエルの振りをする私に気付いてくれなかったのですもの。
子供の頃から側近として親しくしていたと思っていたのに、私とエマニュエルの区別が付かないだなんて。
エドワール様なら、一目で気付くと思っていましたわ。
それなのに……。
エドワール様が気付かなかったので、エマニュエルが嫌われるようエドワール様に心にもない酷い言葉を投げ付けるのも、遠慮無く出来ました。
ええ。罪悪感など、……抱いておりませんわ。
私がデルフィーヌを殺そうとしたのだって、エドワール様が悪いのです。
貴方が、私だと気付いてくれなかったのだから。
私は、一人佇むデルフィーヌをこっそり窺っていました。
此処から突き落としたら、自殺だと思って貰えるかしら?
それとも、全ては私の仕業だと明かして、エマニュエルが無実の罪で殺されるのを黙って見ていたのだと、責めて上げようかしら?
やはり、何も知らないまま殺すなんて、生温いわ。
思い知らせて上げる。
貴女は、無実の人間が処刑されるのを、止めずに見届けたのだと。
全て私の仕業だと教えて上げたら、思った通り、デルフィーヌは真っ青になったわ。
いい気味。
貴女さえ現れなければ、貴女を殺してエマニュエルに罪を着せて処刑させようだなんて思い付かなかった。
貴女さえ、現れなければ……。
いいえ。後悔している訳ではありませんわ。
ただ……。ええ。ただ、ほんの少し、寂しいだけ。
生まれてから、ずっと一緒だったから。
それだけですわ。




