雪だるま式オーパーツ
終わりの、日が来た。
おお、見るがよい。空から降ってくる。
黒い、黒い……何だろう。あれは。
年老いた男は見た。男の名前はAといった。それだけは、思い出せる。
で、なんで終わりの日なんだっけ? それも忘れたが、とにかく、今日、世界は終わる。
で、なんで世界の終わり?
それは、Aにもわからない。でも降ってくるのだ。空から。
黒い、黒い、何だろう。オーパーツ? そう、オーパーツだ。そういうらしいのだ。
ラジオで言っていたから間違いない。忘れもしない。何日前だっけ。忘れた。
言っていた。何で言っていたんだっけ、忘れた。
どうでもいい、もう世界の終わりなのだ。
あの降ってくるなんだかもわからないものに、世界中が埋めつくされて、なんもかんも圧死する。
窒息する。埋もれて身動きも取れずに。おお。恐ろしい。
あれ、待てよ。誰がそんなこと言ってた?
Aは思った。忘れた。もちろん、忘れた。
もしかして誰も言っていなかったのでは?
ということは、これはAの妄想だったのだろう。
ところで、Aって誰だっけ? ベンチでぼんやり。
晴れた空を見上げて、男は思った。男って、誰だっけ?