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獲物を狙う獣

≪黄緑。奴を閻魔筆頭候補とする_______≫



耳を塞ぎたくなるようなノイズ音を混じらせて、聞いたことのない人物の声で放送がかかった。百鬼が縁峰、と言ったことから、これが閻魔の声だと分かる。そしてこの放送内容…一体何が起こったからかは分からないが、閻魔筆頭候補だと言われていた百鬼ではなく、現時点での閻魔候補は黄緑さんだと流された。それを聞いて、私は驚いて百鬼を見る。百鬼もまた予想外だったようで、私の方を向いた。



「えっ…でも黄緑さんよりも百鬼の方が実績があるんでしょ…?それに、現閻魔のこの人と閻魔大王2人の意見で決まるんじゃないの?」



確かに百鬼は喫茶店でそう言っていた。もしも意見が割れた時は閻魔大王の意見が採用されるとも。確か閻魔大王は実績で選ぶんじゃ…それなら、ここで黄緑さんが筆頭候補になるのは、一体どうしてなんだ。



≪そしてもう一つ…皆に悲報を伝える。心して聞くのじゃ≫



神妙な空気を漂わせる閻魔に、私達はその先の言葉を眉を潜めて待った。妙な胸騒ぎがする。



≪閻魔大王が……自害なさった。閻魔大王の魂は消滅し…この世から消えてしまった≫



「…………え、?」



閻魔の悲しそうな声色が空気を伝って届いてくる。しかしあまりの事実に、耳を疑った。私の聞き間違いだろうか。確認するように百鬼を見れば、百鬼も戸惑っているようだった。必死に思考を張り巡らせているような表情で硬く拳を握っていた。



≪…閻魔大王を心から慕っていた儂も…この現状を受け入れ難い。しかし挫けてばかりもおれぬ。閻魔選定にて新しい閻魔も決まる。儂が8日後…閻魔大王となりこの地獄の執政をサポートしていく所存じゃ≫



閻魔の話は、閻魔大王の死を悔やみつつも新しい未来へ進んでいくという旨の話だ。展開についていけないものの、私はこの話にどこか違和感を感じていた。



「……恐らく閻魔大王の死は…自害などではない。裏側に必ず謀がある。閻魔は絡んでいるに違いない…。この放送でこそ演技をしているが、実際は自分の執政に向けて邪魔者を排除し、8日後の閻魔選定も自分のみの意見を採用できるようにしたのだろう」


「そんな…でも一体誰がそんなことに加担して…」


「………黄緑」


「……!」


「奴は確実に閻魔と組んでいる…。今回の閻魔筆頭候補に成り上がったのも計算のうちだろう」



胸の違和感が百鬼の言葉でパズルのピースがはまったように繋がっていく気がした。じゃぁ…閻魔は自分が最高権力を手に入れるために、黄緑さんは閻魔になるために…こんなことをしたというのか。



≪閻魔選定までの残り数日…番人諸君も諦めずに向き合ってほしい。…そうそう、輪廻転生について書かれている儂の大事な極秘の巻物じゃが…今は番人百鬼、そして重罪人の囚人風篠さくらの元にあるようじゃな…≫



「「!!!!」」



驚いた。放送でまさか自分たちの名前が出るなんて考えてもみなかったからだ。そして、輪廻転生の巻物…間違いなく空参からもらった、桃太郎について書かれているあれのことだ。あれは閻魔の私物だったのか。



「…意図的に放送で伝えたな…」


「えっ!?」


「この閻魔の巻物に輪廻転生のことが書いてある、それを俺達がもっているということを知れば、奴らがどう動くかを縁峰は知っている」



奴ら?百鬼がそう言った途端、外から物凄い突風が吹き、民家の入り口扉が中へと飛ばされてきた。それは壁へと激突し、粉々に砕け散る。私も思わず悲鳴を上げて、腕で身体を庇うも目も開けないほどの突風に何もすることはできない。間違いない、敵襲だ…!



「ふざけた真似をしてくれましたね……!」



突風の中、聞き覚えのある声がした。部屋の中にあったものがほとんど後方の壁側に激突し、次第にやっと風が収まってくる。やっとのことで目を開ければ、そこにはいきり立った表情をした歳ノ成と、部下と思われる3人の男たちの姿があった。場の圧が一気に圧迫される。今にも怒り狂いそうな歳ノ成と、対峙する百鬼の殺気だ。百鬼は既に二刀を抜いている。狭い民家の中にいては危ない。破壊された扉から外に出れば、余計に圧が大きくなった。



「んほほ…今日はお遊びも何もなしですよ百鬼クン…さくらサン。さっさと例の巻物を私に渡しなさい…大人しくそれに応じてくれるのなら、私はあなた達と争う意志はない」



…そうか。歳ノ成は輪廻転生にすごい執着が…!どうする?これを渡せば、もしかしたら戦わなくても済むのかもしれない。渡したところで私達には何も…。


そう考えている私の心を読んだのか、百鬼は私を庇うようにして前に立ち、渡すな。とだけ言った。



「それを渡せば…奴はお前を襲う」



百鬼が言っていることが一瞬分からなかった。歳ノ成は渡せば争わないと言ってきたはずだった。でも、渡せば私を襲うって、どういうこと?



「んほほ…百鬼クン、私の言っていることが理解できませんでしたか?巻物を渡せばあなたたちを攻撃しないと言ったんです。渡さなかった場合は、やむを得ず血を見てもらうことになりますが…」


「…お前を信頼していた空参が、心の奥底にあった違和感を信じてお前にこれを渡さなかった。お前にこれは必要ない」


「……戯言を…。空参クン…忠犬かと思いきや主人に噛みつく駄目犬でしたか…」


「く、空参を駒のように扱って捨てたのはあんたでしょ…!」


「んほほ、さくらサン、今日の私は虫の居所が悪いんですよ…いくら可愛らしい女性相手とはいえ、加減しろと部下に言う気も起きませんねぇ…」



歳ノ成の言葉で、部下の男の一人が、私の真上に飛び上がって、持っていた立て槍を突き刺そうとしてくる。速い動き____。この男達も、きっと歳ノ成の精鋭だ。



キィンッ



降りかかってきた槍の矛先を、百鬼が二刀で弾き返す。



「……お前は感情で物を喋りすぎる。痛い思いをしたくなかったら少し黙っていろ」


「う…ご、ごめん」



百鬼に呆れられるも、きっとまた何かあれば言ってしまうだろうと思う。言おうと思って言っているわけじゃない。勝手に口走っているのだから半ば仕方ないんじゃないかと自分には甘め判定だ。



「百鬼クン…さくらさんを庇いながら、私の部下3人を一気に相手どると…?いくらあなたが強いとはいえ、無謀もいい所です。ちなみに、今日ばかりは私も参戦しますから、んほほ」



そう言うと歳ノ成は懐から試験管を取り出し、中に入っている赤や青の怪しい液体を空気中にばらまいた。すぐに空が陰り出し、赤い空に黒い雲が幾つも浮かぶ。


ぽつ、ぽつ。


サァアァァァ…


空から多量の雨が降り注いだ。



「あ、雨…!」


「んほほ…地獄で自然に雨は降らないですからね…。この空気圧変動の薬品を掛け合わせて気候変動を起こしたまでです。ちなみに、この雨は浴びれば浴びるほど…体から体力を奪っていきますよ。抗体をもっている私達以外は」



ゾクッ…


体の中から、空気が漏れていくように力が抜けていくのを感じる。まだ何もしていないというのに、まるで走り終わった後のような疲労感を感じた。



「っ…!」



百鬼も、苦しくなっていくのか小さく息を切れさせる。



「さぁ…殺りなさい、あなたたち」



歳ノ成の合図で、3人の男たちが一斉に百鬼に襲い掛かった。


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