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思ってもない二人のタッグは化学変化を起こす

何か……昨日の時点で黄緑さんが何も仕掛けてこないのって、ちょっと不思議だよね。


そう言うさくらに、百鬼はあの男が何もしてこないわけがない、油断するな。と刀の手入れをした。


遡ること1日前、歳ノ成と共に百鬼に宣戦布告をした黄緑は早速百鬼のもとに部下を向かわせる手筈をしていた。しかし悠々と自分の囚人島に作らせた自室で紅茶を飲む黄緑のところに、部下の一人がボロボロの身体で報告をしにくる。体中の痣、流血。明らかに何者かによる襲撃だ。



「お、黄緑様っ…!ご報告、です!百鬼のところへ向かう我々の隊は私以外壊滅!敵は百鬼ではなく、何故かあの二人っ……ぐあぁあああ!」



扉にもたれかかり必死に報告していた男の背中から血しぶきが舞った。倒れた男の身体は、黄緑の部屋にまたがるようにして倒れる。その様子を横目で捉えた黄緑は、ティーカップをコト、と机に置いてやってくる二人の影に顔を向けた。



「おやおや……これは一体どういう風の吹き回しだろうねぇ。君たちいつのまに仲良しになんてなったの?それとも何、もしかして付き合ってた?」



不敵な笑みを浮かべる黄緑に、やってきた二人の男は口をすっぱくさせて返した。



「はぁ?気持ち悪ぃ冗談もほどほどにしろっての黄緑…こんなハゲと仲良いわけねぇっての」


「おい!誰も直接触れてねぇことを言うなこのやろう!これはハゲなんじゃなくてスキンヘッドなんだよ!うぅ…」


「じゃぁ何で泣いてんだっての」



首に蛇を2匹巻いている男、久須郎に、2メートルほどの金棒を背中に担いだ大柄の男、与太造が黄緑の前に現れた。勿論黄緑の部下を壊滅させたのもこの二人である。久須郎の手、与太造の金棒には鮮血が付いていた。



「百鬼にやられた番人同士が手を組んで、僕から潰そうっていう魂胆かな…。閻魔選定、君たちもまだ諦めてなかったんだねぇ」


「……はっ、別に、そんなんじゃねぇさ」


「…?」



鼻で笑った与太造に、黄緑は不可解な顔をし、首を傾げた。



「まぁ、そんなことより……おい黄緑、お前座ったまま余裕ぶっこいてるけど…もう攻撃していいってことだよな?気ぃ抜き過ぎだっての」


「ふふ、いいよ。久須郎はいつから攻撃許可を相手に求める律儀な子になったの………………、」



黄緑の言葉が止まる。後ろから噛みつき襲い掛かってきた蛇の存在に気が付いたらしい。体を回転させて躱し、刀を取り出して蛇の首を落とそうとするも、下から這いつくばってきたもう一匹の蛇が床についている黄緑の左手に牙を向く。


下方の蛇、15センチ7ミリ…後方の蛇、16センチ5ミリ…自分の身体へ到達する距離を咄嗟に眼で判断し、標的を変えて下方に迫っている蛇から斬ろうと体を前へ向けた。



「俺らを舐めすぎだぜ黄緑、このやろう!」



____しかし、上だ。


前と後ろばかりに気をとられている間に、上方からは金棒を振り降ろそうと飛び上がっている与太造の姿があった。黄緑は眼を凝らす。


下方の蛇、6センチ1ミリ、後方の蛇、7センチ4ミリ、上方の与太造13センチ…………いや、速い!!


黄緑は舌打ちをして、全て避ける選択肢に切り替えるために前方へと体重を移動する。


「お前の思考は読めてるっての……黄緑」


_________久須郎!!


前方からは久須郎が黄緑の首を狙い刀を振りかざした。



ドォオンッ……


物凄い爆炎と爆音が、黄緑の島に響き渡った。隙のない四方からの計算しつくされた攻撃____。もくもくと立ち込める煙が次第に薄れていく。蛇か、与太造か、久須郎か……黄緑に攻撃を当てたのは、一体誰だ。



「……やったか?」



まだ視界が定まらない中、金棒を握りしめている与太造が呟いた。







「…あぁ…全く。部屋がぐちゃっぐちゃじゃないか。お気に入りだったんだけどねぇ。」



ゆらり。


煙の中から立ち上がったのは、無傷の黄緑だ。与太造と久須郎は眼を見開かせる。金棒の下のはただのソファ、刀で斬れていたのは飾ってあった観葉植物だ。黄緑は部屋の崩壊を惜しみながら、両手で捕まえた久須郎の蛇を力強く、ぐっと握った。ギギィ、と蛇から苦しそうな音が漏れた。



「まさかこんなので…僕を倒せると思ってないよね?」



黄緑の顔に影が入る。ゾクリとする圧倒的な圧に、与太造と久須郎の肌がピリついた。





「あれれぇ、つまんないなぁ…もう終わりなのかい」



美しく飾られていた黄緑の部屋は、それこそ地獄にふさわしい荒廃した姿へと変わった。絨毯に沁み込む鮮血が、戦いの惨さを物語っている。久須郎も、与太造も、痛みで震える脚で何とかその場に立ち、黄緑へ向かっていく。



「「おおおぉおおおお!」」


「懲りないなぁ二人とも。そもそも君たちが僕に敵わないことなんて…何百年も前から分かってたんじゃないの?」



黄緑は二人の背中に太刀を入れる。血が吹き荒れて、壁に模様を作った。床に倒れても倒れても這い上がる血だらけの二人。黄緑はまたもや不可解だという表情を見せて、ため息をついた。



「2人がかりで僕に勝てない時点で、閻魔選定も勝負にならないね。分かんないかなぁ」


「あぁ……そんなことくらい、分かってんだよこっちは…元閻魔筆頭候補のお前が言うように、何百年も前、からな……このやろう、」


「……うん?なら尚更納得がいかないなぁ。何のために君たちが負け戦をするのか」


「例え何百年も前から変わらない事実があっても…もしかしたらの奇跡を信じて戦うことの価値を……知っただけだっての…!」


「…価値だと?」


「暗闇しかないこの地獄で…奇跡を信じて戦った女がいたってだけの話だっての!」


「!?」



久須郎は倒れるどころか、未だに黄緑に歯向かっていく。黄緑は刀を構えようとするも、刀に硬く巻き付いている蛇にやっと気が付く。


そんな…自分がこんなものに気が付かないなんて。どうなっている?


自分の感覚を疑っている黄緑に、久須郎が拳を振り上げるのと同時に口を吊り上げて黄緑に伝えた。



「あぁ……分かってるとは思うけど、蛇は猛毒を持ってるんだっての…」



____毒、だと。


久須郎からそう言われた途端、黄緑の視界がぐらりと大きく歪む。


何だこれは。まずい。久須郎のパンチが20センチまで迫っていたはず、避け______、



「なぁ黄緑……一人じゃないって、強ぇんだぜ」


“あなたはもう一人じゃない…。あなたを助けてくれる人が、光があるでしょ?すぐそこに”



久須郎の脳に、あの時の声が蘇る。それと同時にさくらの顔が思い浮かんだ自分はきっと重症なのだと鼻で笑った。



ドゴォンッ…………



久須郎の快心の一撃が、黄緑の頬にめり込み、黄緑の身体が窓ガラスを突き破って外へと飛び出ていった。


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