私が言うのもあれですが、この男相当下種なクズのようですね
「ひ、ひえぇええええも、もうやめてくらはい…!許してくれぇ…!」
「んほほ、駄目ですよ。あなた人間界で詐欺罪に殺人罪働いたんでしょ?その後不運にも事故で亡くなったそうですねぇ。でしたらこのくらいの拷問耐えてもらわないと」
「も、もう体が半分動かないんですぅうう…!申し訳ありませんでした、もうしませんから、これからは真っ当な人間になりますからぁあ…!」
「地獄に落ちた人間に残された道は3つですよ。1つ、私に首を斬られ二度と輪廻転生できない体になる。2つ、毎日この拷問に耐えて輪廻転生できる日を心待ちにする」
「み、3つ目は…!」
「…今の2つを選択させたくないと思える程の有益な情報と働きを私に捧げること。例えば、あなたがよく知っているであろう、風篠さくらの情報、とかですねぇ」
「!!」
囚人の男は、さくらの名前に目の色を変えた。そして絶望に満ちていた表情を一変させて、口元をピクピクと震わせ、笑い始めた。
「ははははは!風篠さくら!こんな地獄に来てまでおまえに利用価値があるとは…!ざまぁみろ!」
赤い空に向かって下世話な高笑いをし出した男は、下半身が動かないのを忘れたかのように振る舞った。喉の奥が裂けて辺りに血が飛び散るのも気にならないようだ。その様子に、歳ノ成の後方に控えていた空参が男の前に躍り出、抜刀した刀を男の首に当てる。
「貴様…歳ノ成様の前でそのような下品な振る舞いをするとは解せぬ…。貴様の汚らしい血液が歳ノ成様の御召し物に付着したらどうするつもりだ」
「っひ、ひえっ…!も、申し訳、ありませっ…!」
空参のあまりの殺気に、男は泡を吹き出し意識を飛ばしそうになる。
「空参クン。いいですよ」
ぴたり。
空参の殺気が収まる。刀を鞘に納めて、再び歳ノ成の後ろへと下がった。間一髪のところで助かった男は滝のように汗を流し、息を荒げた。
「んほほ、私が言うのもあれですが、この男相当下種なクズのようですねぇ。あなたの提示する情報に嘘があったり、大した情報でなかったりする場合すぐに残り半分の細胞も壊死させてあげましょう」
「ま、待ってください…!よ、弱み…お、俺は風篠さくらの最大の弱みを知っているんだ…!それに、か、必ずあなた様の役に立ちますから…!」
歳ノ成は小瓶をゆらゆらと揺らし、縋りつく男を見下ろした。
「んほほ…いいでしょう。話してみなさい」
男は動かしにくい口で、話し始めた。さくらの生い立ちのこと、両親のこと、あの殺人事件のこと。歳ノ成は話を聞き終わった後、暫く考えた。そして、何かを思いついたように上機嫌に笑う。
「んほほ、聞けば聞くほど下種な汚い男ですねぇあなたは。だが使いやすい。でしたらここからの私の計画に尽力してもらいましょうか」
「は、はい何でもします…!」
「明日の昼ごろにさくらサンの元へ行ってもらいます。それまでに私も準備をしておきましょう」
「…歳ノ成様。百鬼と風篠さくらの居場所を私が突き止めておきましょうか」
「空参クン、頭が回りますねぇ。ですが必要ありませんよ。奴らの場所は私の手の中ですから」
空参が頭にハテナお浮かばせ、首を傾げる。
「百鬼クンの殺した私の部下達の血の中には、私の開発した薬が混ぜ込んでありました。その血が百鬼クンの二刀に付着した時点で、私のこの機械によって追跡可能です」
「……流石は、歳ノ成様です」
朗報にも関わらず、空参は何故か言葉と裏腹に眉を下げでそう言った。その様子を、歳ノ成が横目で見る。
「んほほ、滅入ることはないですよ空参クン。君が私のために役立てることはこの後山ほどある。明日の昼、準備が整い次第百鬼クンを討ちさくらサンをこちらに引き入れます。何、輪廻転生さえさせられれば手足が千切れようとどうでもいい。やってくれますね?」
歳ノ成の言葉に、空参は目に精気を取り戻して、膝を付いて気高い返事をした。そんな二人の様子を、囚人の男が怯えながら見つめる。完全なる主従関係、人間界の自分と重なる部分が見えたのか、男は視線を逸らすことができなかった。




