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これがジェネレーションギャップですね

「…4771番、呑気なのはお前だ。その様子じゃ奴らが来た時に簡単に本当に即座に反応できるのか。思いやられる」


「で、でもさ、歳ノ成っていう変態さんは置いといて…黄緑さんは、本当に危険なのかな。何だかんだでいつも助けてくれたし…」


「…お前は馬鹿か?あいつはずっと閻魔筆頭候補だと言われていた奴だ」


「えっ。それって百鬼なんじゃ…」


「……ここ150年は、な」


「(そ、そういえば百鬼はよく何百年とか言うけど…この人一体何歳…!?)そうなんだ…。百鬼が黄緑さんの実績を抜かしたってこと?」


「……それもあるが、それだけじゃない。あいつは…この地獄で、法度を犯した」


「…………、罪を犯したってことだよね。…一体どんな?」



私達の周りは賑わっているのに、まるで水でも打ったかのように静かに感じた。私は百鬼の言葉を待つ。



「…………閻魔殺し」


「…!」



閻魔、様…。地獄に来てからは何度もちらついていた言葉だが、勿論見たこともなければ人間界にいた頃に作り話としてでしか聞いたことはない。今回百鬼たちが争っているのもこの閻魔候補を決めるためだ。つまり、人間達のする作り話通り、閻魔はこの地獄のお偉いさんなのだろう。その閻魔を殺したとなれば、罪に問われるのは当たり前かもしれない。



「人間界で言う、総理大臣殺すみたいなもん…?」


「総理大臣…?何だそれは。人間界で言う太政大臣を殺すようなものだ」


「……………………」



ジェネレーションギャップ!!!!


いや、ほどほどのレベルでもない。物凄いジェネレーションの壁を百鬼に感じたよ今。太政大臣ってあれだよね…あの…教科書に載ってるやつ。太政大臣が総理大臣みたいな政権握ってる時代がわかれば百鬼が何時代の人だったのかわかるはず…あぁああでも私には太政大臣が太政大臣という名前という知識しかない終わった。



「えぇと…まぁつまり、黄緑さんはその禁を犯してしまったと…。それでどうなったの?」


「奴はそこから100年、看守や番人が重罪を犯した時に入れられる地獄牢に入っていた。奴に殺された閻魔政権は失脚し、今の閻魔…縁峰が政権を握った」


「うん…。じゃぁ黄緑さんがここに出てきたのは比較的最近なんだね」


「奴が危険かどうか疑う余地などないことがわかったか?あいつが近付いて来たら何も考えずまず逃げろ」



百鬼は至極真面目な表情でそう言った。私も湯呑みに手を当てて、こくりと頷く。自分の見た黄緑さんと今聞いた話の中の黄緑さんのギャップを感じながら。どこか腑に落ちない違和感を覚えながら。俯く私に百鬼が、それから、と言葉を付け足す。



「…奴が閻魔殺しをしたのは、きっと元閻魔の陰謀だ。奴らは組んでいると考えるのが妥当。現閻魔はきっと、黄緑を閻魔に推薦する」


「えっ…でも、百鬼が閻魔筆頭候補だって」


「現閻魔の上に、かつて政権を握っていた閻魔大王がいる。天皇と関白のようなものだ。その閻魔大王の方針が最終決定であり、その方針は“輪廻転生の実績を一番残した者”だ。必然的に、現段階で筆頭候補が俺となる」



小難しい。いや、大分難しい。歴史の授業に全然ついていけなかった私にはこの地獄の仕組みも同様に難しい。けれど、今のままいけば一番偉い閻魔大王の方針で百鬼が次期閻魔になれるということは分かった。百鬼が閻魔になれれば…私は人間界に帰れる。おばあちゃん達の輪廻転生にも近寄れる気がする。



…………ん。でも、待って。百鬼は、本当は何のために閻魔を目指していたんだろう。もし百鬼がこのまま閻魔になったとして、ずっとずっと…地獄にいることは変わりないはずなのに。



「……………………何だ」



あまりに見つめすぎたのだろうか。百鬼は未だ頬杖をついたまま、怪訝な顔をした。私を人間界に帰らせてくれるとは言ったものの、その後はどうするつもりなんだろう。この太陽のない地獄で永遠に生きていくつもりなの…?



そう考えると、胸のあたりが誰かに締められているみたいにぎゅっと苦しくなった。私、百鬼が少しは変わってくれて、ぬか喜びをしていたけど…よく考えたら、まだまだ百鬼のこと全然知らないんだなぁ。チクチクと射す胸を慰めるため、私は熱さの治まったお茶を口に運んだ。





暗い暗い地獄の更に暗い場所、地獄牢。屍に混じった息のある看守達が呻く魔の巣窟。籠った音しか鳴らないこの空間に、生々しく液体が飛び散る音が響いた。



「あちゃー、思ったより派手に斬れちゃったなぁ」



真っ赤に染まった手をペロリと舐めたのは、栗色の髪をし、額に星印の紋章をもつ番人…黄緑。彼の足元に落ちたのは、この地獄の象徴…閻魔大王の首だ。



「これでお前が法度を犯すのは2度目か…かつてない重罪人ぞ」


「あはは、ご冗談を閻魔様…仰せのままに落としたまでです」



そんな様子を椅子に座して眺めていた人物がいる。いや、見た目は悪魔と言った方が良いかもしれない。現閻魔の縁峰だ。縁峰は黄緑の言葉に、ふん、と鼻を鳴らして笑った。



「私はそこまで惨い懲らしめ方をせよとは言ってないぞ。せいぜい“話をできなくなるまで”いたぶれと言ったまでじゃ」


「閻魔様は、祭りは派手な方がお好きだと思ったので」


「ふん、ぬかりない男よ」



縁峰は周りの看守に片付けよ、と言うように手を動かした。看守たちが話さなくなった閻魔大王の撤去作業に取り掛かる。



「これで閻魔選定に閻魔大王の意見が無効となった。安心か?黄緑」


「元より心配などしていませんよ閻魔様…。前の血も涙もない百鬼なら少しは警戒しましたが…今は色恋にうつつを抜かすただの腑抜けですから」


「ならばこのまま泳がせておくと?」



縁峰の問いかけに、黄緑は刀の血を拭いながらにやりと口元を上げる。



「いえ…ですが、いくら腑抜けても彼は強い。それは事実です。なので二度と這い上がれないよう、もう一度心を殺してもらいましょう。…あの頃閻魔様がなさったように」



その言葉を聞いて縁峰も、口元を歪ませた。


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