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お供のさせ方が異常です

10日間…時間にして240時間、私は百鬼と寝食までもを共にするという事だろうか。昨日言われた通りの時間に宿舎前に出れば、既に百鬼がただならぬオーラを出して私を待ち構えていた。宿舎にいた看守や囚人は当たり前のようにそんな百鬼にビビり倒している。いや、こんなの私も怖いよ。百鬼の姿を見付けた途端宿舎の中に戻ろうかと思ったのは内緒だ。



「あ…お、おは、おはよう。待った?(あれ?何か待ち合わせしてたみたいなテンションで挨拶をしてしまった…。地獄なのにここ)」


「…10時00分12秒。俺の指定した時間に12秒も遅れるとは…4771番、死にたいか?」


「いやぁああやっぱり240時間も一緒にいたら殺されるぅううだって12秒で既に1回殺されそうになったんだよ!?絶対もたないよ命!」


「煩い黙れ殺すぞ。とりあえずこれを着けろ」



ガチャン、



「へっ…?」



両手首にはまった冷たくて硬い何か。うん、この黒光りする物…私よく知ってる。これは…、



「て、手錠ぅうう!?ちょっと!百鬼これじゃぁ私犯罪者みたいなんだけど!」


「重罪人だろ」


「それを否定するくだりはもうみんな飽きてるから!外してよ、こんなんじゃろくにご飯も食べれない」


「…安心しろ。必要最低限は外してやる。それ以外は首輪の代わりとしてつけておけ」


「犬じゃん!完全に犬扱いじゃん!」



宿舎前で私と百鬼が異様なやり取りをしているからか、軽く半径10メートルは周りに人がいない気がする。このままでは本当に忠犬扱いされると思い、周りに助けを求めようとすると、遠巻きにおばあちゃんと英雄の姿を発見する。



「おばあちゃん英雄ぉお!ちょっと助けてもらえる!?10日間俺の傍から離れるなよっていうイケメン展開が何か思ってたのと違う!見てこの手錠!」



騒ぐ私の声に、おばあちゃんと英雄はにっこりと笑う。そしてその後華麗なまでの手首の動きで親指をぐっと立てた。グッドラック!そんな言葉が二人の上に浮かんで見えた。



「ちょ、見捨てられたよねこれ!?何そのそびえ立つ親指!」


「大丈夫、あちきらと一緒にいるよりも百鬼様といた方が安全だよさくら」


「さっきから何度か殺されそうになってます!」


「百鬼様が昨日言ってた言葉を思い出せさくら。お前を絶対に護ってくれるはずだ」



英雄にそう言われ、手錠をかけてきた百鬼の方を見ると百鬼はいつもの無の表情で私達のやりとりを見ている。いや、何だか英雄に上手く丸め込まれた気がするんだけど…。



「おいお前ら」



百鬼がおばあちゃんと英雄に声を掛ける。二人は背筋を軍隊のように伸ばして応答した。



「10日間俺が直接手を下す罰はない。いつも通り石膏運びの作業だけこなせ。周りに伝えろ」


「「分かりました!」」



何かあの二人妙に百鬼に耐性付き始めたよね!?昨日のことや、前にも百鬼が助けてくれたところを見てきたからだろうか…。そう思うと、確かに英雄の言う事は一理ある。ここまでして私を護ってくれようとしてくれている現れなのだろうか…この手錠も。



「ふん、行くぞ狂犬」


「あっ、やっぱり犬って言ったよ!?しかも狂犬って言ったね!?全然護られる感がないんだけど」



本当に、大丈夫なのか…私の命は。半ば諦めつつ、私は百鬼の後をついて行った。





「あ…ここは確か…」



手錠を嵌められたまま歩かされること20分。どんな恐ろしい場所に連れて行かれるのだろう、もしかして10日間暗くて寒い所に監禁でもされるのではないかとビクビクしていた私が連れてこられたのは、以前も入った(不法侵入だが)鬼ノ街道だった。



どうやらこの鬼ノ街道は、番人や看守が囚人に手錠をかけた状態ならば立ち入りが許されているようだった。百鬼がさっき鬼ノ街道入り口門の看守と何か話していたのはきっとそういうことだろう。何だ、そういうことなら早く言ってよと思い入り口にいた看守を見ると、何故か無性に疲れた顔をしている。



「…………何か、今にも魂抜けそうな顔してたけど…何話したの?」


「囚人の侵入を認めろと言っただけだ。…断ろうとした節が見えたから睨んで黙られた」


「(やっぱ囚人の侵入駄目だったんかい!じゃぁこの手錠意味本当に何の意味だよ!)」



心の中で百鬼に突っ込みつつ、いつの間にかついた何かの店の席に着く。道行く看守たちはみんな私の手錠を見てぎょっとした顔をしていたが、横にいるのが百鬼だ。だから何も言ってこないのだろう。



「お、お待たせいたしました、お茶です…」



コト、と置かれた湯呑み。私と百鬼の前から湯気が出ている。百鬼は運ばれてきたまだ熱いそれに口を付けた。



「…え…これ、飲んでいいの?」


「……いらないなら俺が飲むが」


「いや、いる!いるよ!でも手錠外してほしいな!…なんて」



百鬼は私の顔を数秒見つめて、何も言わずに指で手錠を外してくれた。やっと解放された手首をくるくる回してからお茶をいただく。



「……おいしい」



おいしい、おいしすぎるよ。地獄に来てからおいしい、と思える食事が出てきたわけじゃないからか、人生で一番おいしい飲み物のように思えた。両手で持つ湯呑みも温かい…一瞬、自分が狙われてることとかいろんなことを忘れてしまいそうになるほど、この一杯のお茶が私の心を満たした。



「…たかが茶を飲んだくらいで、よくそんな百面相ができるものだな」


「だって…久々にこんな温かい飲み物飲んだんだもん。こんな顔にもなるよ」


「…………」



百鬼の返答はなかったけど、大方変人とでも思ったのだろう。正面から不可解そうな顔を見せる百鬼に私は苦笑いした。こうして普通にお店がある感じは、とてもここが地獄だとは思えない。看守たちも日常生活を送るかのように振る舞っている。門の外とは大違いだ。



「でも、こんな呑気にしてていいの?いつ番人たちが来るか分かんないのに」


「……下手に門の外へ出るより、ここの方がある種暴れにくい。あいつらもこの街を破壊すれば閻魔からお咎めがあることくらいわかってる」


「…おぉ!だから敢えて門の中に…流石百鬼!」


「……はぁ」



今がため息をつくタイミングだったかは怪しい所だが、水に流すとしよう。百鬼は頬杖をついたまま睨むようにして私を見た。


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