第9話
カシュッという、鋭く空気の抜けるような音ともに、次々と、蜂たちは撃たれていく。
ようやく自分の叫びが届いたのかと、少し流れた涙を拭う。
十数匹の人間大の巨大な雀蜂に囲まれて、本当に怖かった。
自分のステータスを確認すると14/100とかなりギリギリのポイントで冷や汗をかく。
カシュっ
カシュっ
カシュっ
「…やっぱ、すげえ」
一発も撃ち漏らすことなく、蜂たちを制圧した姿に舌を巻いた。
出会った時のことを思い出す。まだ自分がパソコンを持っていなかったため、町のゲーム屋での予選に参加したのだ。『デッド・ワン』の予選。チームを引き連れて参加するものも多かった。バトルロワイヤルという性質上仲間割れも多かったが、それでも数の優位があったため、代表を勝たせるために協力するという作戦が主流だった。かくいう自分も試合に勝つために、チームに入れてもらい参加。チームが優勢な時に頃合いを見計って裏切るつもりだった。弱い自分はそういった絡め手を使わないと勝ち取らないといけない。強いものの下、徒党を組み、おこぼれを頂戴する。そんな生き方をしないとばかを見ると思っていた。
予選試合直前。予選参加者に散見するソロプレイヤーたち。リーダーの指示で、そいつらを狩ることになった。近くに転送された3、4人でフォーメーションを組みソロプレイヤーを狩る。優位に立って相手をなぶる優越感。そんなものを感じていた。
だが、実際はそうはならなかった。開始30秒装備を整え、メンバーに出会う前に頭を撃ち抜かれてしまった。即落ちはチームからのペナルティがある。ゲームオーバーになったあと、重い気持ちで試合を見にいく。自分を落としたのは誰だろうと。ログを見ると一人のソロプレーヤーの名前が、『女王蜂』
画面を見ると黒と黄色のゴシックロリータを着込んだ少女が、次々と敵を倒していった。高台から狙撃をし、場所が割れる前に移動する。万が一鉢合わせたときはナイフ片手に切り抜ける。その姿に魅了された。
あっというまに自分のチームのリーダーを追い詰めて瞬殺。あれだけ強いと思っていたリーダーは、あっという間にやられてしまったのだ。
ゲーム終了後、逆恨みしたリーダーは彼女を襲った。だが、片恋はそんなこと意図も解さず返り討ちにした。自分はというとリーダーを説得しようとしたが、一発殴られて気絶していたのだ。情けない。
次々に倒されていく蜂を見て、思う。自分の弱さと彼女の強さを。
「どうしたんだい?フレイム君」
「いや、見惚れていただけだよ」
「ほ?ほほう。そうか、そうかい!それはいい!!」
上機嫌になった彼女はどんどんと蜂を薙ぎ払っていく。
カシュっ
カシュっ
カシュっ
「はは、ヘル・フレイム(笑)くん。君は見ているだけかい」
カシュっ
彼女の問いに、一瞬つまる。自分の実力は十分知ってる。決して、肩を並べることはできない。だけど、
「見てるだけなわけないだろうが!」
襲い来る蜂の大顎を首の皮1つで交わし、その蜂の腹にファイヤーボールを拳とともに叩きこむ。
「へぇ!やるじゃないか!相棒!」
彼女の出した拳に、こつんと自分の拳を合わせる。お前が相棒と言ってくれるなら、食らいつこう。




