第8話
さてさてさて。
はるかかなたの空で花火となって散った相棒に想いを馳せながら僕は次の工程に着手する。
まったく、彼にも困ったものだ。あの様子だと、まさか、いや、そんな、ばかなことがあってたまるかと思いたいのだが、僕のことを忘れてしまっているのだろうか。
あの大会で久しぶりに再会できたことは僕の思惑通りで大変喜ばしいことだったのに。こんなに手がかかるとは。記憶というのはつながっているから、関連する情報を出すことで思い出してくれるかと思ったのだが。まったく円上君は困ったやつだなぁ。本当に困ったやつだなぁ。
不思議と笑みが漏れる。ふと、自分の頬に手を当て、その笑った口元に指を添えて、自分自身の反応に驚くも、首をふる。まだ。終わっていない。だが、終わりは近づいてきている。
あの頃に比べて随分粗野な口ぶりになってしまったのが、少々残念だが、それは僕も同じか。人は変わっていくのだ。出会うもの、考えるもの、色々なものに影響されて、変わっていくのだ。だが、変わらないものもある。
さてと、仕込みはした。コンソールに打ち込んだプログラムを実行させて、武器を交換する。
毒ナイフ『女王針』。ナイフ系は射程が短い分、取り回しに優れ、素早く鋭い攻撃を可能にする。『デッド・ワン』では、あくまでスナイパーがメインだが、今日は違う。ポイントを組み替える。ナイフに200ポイント、毒に100ポイント。ここまではいつもと同じ。ここから、硬度強化に100ポイント、毒強化に200ポイント、急所効果倍増に300ポイント、…そして、余った100ポイントは、考えた末、祝福に使うことにした。祝福は持ち主に幸運をもたらす。1度データを保存して、武器を変える。
さてさてさて、そろそろ助けにいってやらねば、善戦はしてくれているが、やはり分が悪い。さっきから、叫び声が聞こえてくる。いくら同じ敵を倒して、要領を得たと言っても多勢に無勢だな。花火におびきよせられて、ここいら一帯の蜂が彼に襲いかかっているのだ。致命傷を避けても、結局HPという仕組みがある以上小さな傷でもゲームオーバーになる。さっきよりも叫び声が必死になってきたか。そろそろ頃あいか。
スナイパーライフルを取り出し、短く呼吸を吐く。今回は麻痺の効果を付与するだけで、殺傷力はない。その代わり反動を少なくし、連射性能をあげている。手早く片付けよう。ラスボスとの戦いの前に『女王蜂』としての実力を見せつけておくこともやぶさかではない。白馬の王子様ではないな。黒黄の女王様と言ったところか。やれやれ、叫び声が泣き声に変わってきたか。もう少し待って約束をさらに増やしてやってもいいが、それでは残酷というものかな
「ヘル・フレイムくーーーーん。今助けるからなああ」
ギャぎゃあと何かしらを必死に訴えているようだが、まぁいい。スコープを覗いて蜂の頭に狙いをつける。さぁ乱れ撃とうか。
「『やけっ蜂』」




