第7話
駄菓子屋と巨大な蜂の巣の中間にやってきた時だった。それなりに蜂との戦いかたが身についてきた。いくら遠距離で撃てると言っても闇雲に撃つだけでは、MP切れで逃げ回るようになってしまう。確実に当て、しっかりとインターバルを稼ぐ。無駄撃ちを減らすことと回避に専念した。片恋は遠くから冷やかしつつも危ない時には必ず援護してくれる。当然、彼女の方もインターバルがあるから、期待しすぎることもできないが。
蜂達の巣は近づくにつれ、ますます大きく見えていた。まだ相当距離があるはずなのに、今や馬鹿でかい野球のドームくらいある。当然その周りには蜂達がうじょうじょいる。
「どうすんだよこれ」
今までは、自分が囮になりつつ、遮蔽物に隠れながら進んでいく方法で、ここまできた。だが、目の前の景色は荒野になっていて、隠れる場所がなかった。これでは、片恋がスナイパーライフルを撃つための高台がないことを意味する。
「どうやらこの辺りはデータの損傷が大きいようだね」
片恋はこともなげに言った。
「おい、かたこ…、Bee。どうする?」
「いい加減、慣れてくれないか。参上くん」
「いや、お前も人の名前を覚えてくれ」
「何を言っている。ネット上では本名を明かさないのが大事だと教えてくれたのは君じゃないか」
「は?いや、まぁ、そう、だな」
そんなこと言ったっけか?
「フフフ、懐かしい。なぁ、人情くん」
懐かしい?何を言っているんだ。
「ところで、この辺りのデータは、君のパソコンでいうインターネットのデータなんだが、何か良からぬものでも検索したのかい?君は」
良からぬもの?あ、エロサイトか。だが、同級生の仮にも女子に向かって、エロサイトを見てましたなんてことは言えない。いくら、色気なし、ゴミ屋敷の住人だとしても、女子は女子だ。それに、結局怖気付いて見れなかったしな
「さ、さぁなんでだろうな」
「ふ〜ん?心当たりはないのか」
僕の顔を覗くこむ。長いまつ毛に緑色の瞳がうつる。くそ、つぶらな瞳をしやがって、なんとか誤魔化せないか。
「そ、そうだ、蜂達の巣にはどうやっていくんだ」
「どうするも何も、巣にいる女王蜂を倒さないとこのゲームを終わることはできないからね。」
よし、話を逸らせた。
「よくあるシュチュエーションさ。手下をいくら倒そうが、根本的な親玉を倒さないといけないのさ」
彼女はそう嘯くのだった。
「よし、設定も終わったし出発しようか」
「設定?」
「あぁそうだ」
彼女は俺の方をしっかりと見ていうのだ。
「今、兵隊バチが散らばりすぎているからね。鬱陶しいから、ある程度集めようと思っているんだよ」
そういうと彼女は俺の胸ぐらを掴む。
「な、何を」
「今、私はライフルを解除して、自分の右腕の筋力にポイントを全振りしている」
「ちょ、ま」
この後の展開は容易に想像できる。
「献上君。己の命を女王様に捧げる覚悟は当然できているよな」
ニッコリと笑う彼女。冷や汗が流れる。
「ナイナイ!そんな覚悟!」
耳に手を当てて、大きくうなずく片恋は満面の笑みでいうのだった。
「ウンウンそうだろう!そうだろうよ!よろしい!さすが僕の下僕だ。覚悟が座っている」
「誰が、下僕だ!!いや、まじ、すみません。いやだ、いやだああああ」
「囮として、女王様のために死力を尽くすんだよ。いってこぉおい!!!!」
「ぎゃああああ」
引っ張られた首元は、小柄な女の子によって、はるか上空にまで投げ飛ばされる。
「ヒィいぃぃ!あのドSロリっこがぁああああ!」
体をひねりあげて彼女の方を見る。ファイヤーボールを撃ち込んでやる。
だが、俺の考えはそこで潰える。彼女がスナイパーライフルでこちらを狙っている姿が目に入ったのだ。
「バァか」
「ちくしょおおおおおお」
花火が上がる。蜂達の動きは止まった。止まったのは一瞬だった。




