第2話
「では、まず、画面を見せてもらおうか」
片恋は、スマホの向きを変えさせた。俺のパソコンには、もう画面の内容がわからないほどにハチが蠢いていた。
「十分だ、切り替えてくれ」
画面を元に戻すと顎に手を当て思案するような片恋の姿があった。
「ど、どうだ」
「ふむ、これはかなりの重症だな」
「な、治るのか」
「…そう、不安げな顔をするなよ。大丈夫さ」
じっとこちらを見つめる彼女の表情はうまく読めないが、どこか機嫌が悪そうだった。
「考えないといけないのは原因だ」
「原因?」
「そうだ。このバグはbugと呼ばれる。ウィルスだよ。縁状くん」
「片恋。僕の名前にかなり近くなった気がするが、どこかニュアンスが違う気がするけど。bug?」
「そうさ。コンピューターに悪さをする最近流行りのコンピューターウィルス。まぁ、もともとはからかいのために作られたウィルスなんだが、作り手の意思に反して、広まってしまっているようだ」
ふむ。といって片恋は黙ってしまった。最近流行のウィルスがなんで俺の中古のパソコンに。でも、コンピューターウィルスということは大事なデータが消えてしまうってことか。冗談じゃない。せっかくネトゲができる環境が整ったんだ。パソコンこそ中古だが、片恋の強さの秘密がわかるかもしれない。今までみたく、ネットカフェに篭る必要がない、悠々自適なネトゲ生活を邪魔しやがって。
「この手のウィルスが感染するのは、何かトリガーがあるはずなんだが。心当たりはないかね」
彼女は促すように問いかける。
「トリガーねぇ、心あたりは、ねぇな」
「まったく、君の記憶力は鶏かい?宴場くん」
「名前を覚えないお前に言いたくはないな」
「まぁいいさ。虫を退治していけば、自ずとわかるはずだろう」
「退治できるのか!」
「まぁ、どうしてもというなら」
「どうしてもだ。お前とゲームするのを楽しみにしてんだから」
「そ、そうか。それは、嬉しいことを言ってくれるじゃないか」
もともとはそのためにパソコンをもらい受けたんだ。片恋の方はまんざらでもないようにニマニマと口を動かしている。よっぽどゲームできるのが楽しみなんだろう。
「じゃあ、ヘッドギアを装着してくれ。コードは078695949。」
「は?ヘッドギアって。フルダイブするための機械だろ?なんで」
「なんで?ってbugを消すためだろう」
彼女はガサゴソとゴミ山の中をあさり、ヘルメットに色々なコードをつけた機械を取り出した。裸体にヘルメットをつけた姿は、正直新しい扉を開いてしまいそうな気もします。はい。
「って、こう、プログラム的なのはないのか。インストールしたらいい。みたいな」
「何を楽しようと思っているのだよ。せっかくの機会だ。僕がなぜ、世界ランカーなのか知りたがっていただろう、教えてあげるよ」
「ま、まじで!いいのか」
「あぁいいとも、そのかわり、他言無用で頼むよ。この秘密は誰にも教えるつもりはなかったが、まぁ、いいだろう」
彼女はヘッドギアの電源をつけ、俺の方に笑いかける。今まで見てきた彼女のどの表情よりも魅力的で、そして、凶悪な笑顔だった。
「さぁ、円上君。君に私の全てをお見せしよう」




