好奇心
序章です。
これは僕らが体験した、ある出来事の記録です。
2018年夏
いつも通り大学からの帰路についた僕(石井 ヒロキ)と友人の「山田 ヨシオ」はふと、路地裏から家まで帰ろうと思った。
路地裏は思ったより風通しがいい。そのせいか、綺麗な赤い花が咲いている。
「なんて言う花だろうか」
「さあね、花は詳しくない」
ヨシオは植物を研究する教授のゼミに所属しているので知っているかと思ったが、そうでもないらしい。
裏路地はまっすぐ、一本道だ。まだまだ道は続いている。
しばらく歩いたら、小さなトンネルが姿を現した。レンガ造りの古びたトンネルだ。
「なあ、行ってみようぜ」
ヨシオは言う。
トンネルから吹く風が少しヒンヤリしていて、心地いい。
「行ってみようか」
好奇心を抑えられず、僕らはトンネルの中へと入る。
少し歩けば、すぐにトンネルをぬけた。
目の前には、現代とは思えぬような建物が並んでいる。
「京都みたいだな」
「八ツ橋とか売ってねえかな?」
バカみたいな会話をする。しかし、残念ながら八ツ橋は売っていなさそうだ。建物の一部は崩れ、腐敗している。
「もっと進もう」
「世紀の大発見かもな!」
そんなことに期待しながら村を進む。
「なあ」
「なんだよ」
ヨシオが震えながら話しかけてくる。
「やべえとこ来ちまったかも」
ヨシオが指を指す。その先には、無数の赤い花と大量の埋葬した跡があった。
「たしかにまずいかもな」
視線を感じる。
どうやら踏み入れては行けない場所に足を踏み入れてしまったようだ。
急いでトンネルに戻る。
(この流れだとトンネルはなくなっているか?)
ゲームなどで得た知識で考察する。
しかし、トンネルはあった。
(よかった)
トンネルをぬけ、路地裏に戻る。
「危なかった気がするぜ」
「ほんと...」
息切れしたヨシオが言う。
ふと目線を路地の先にやる。そこには大きな社が建っている。
「ヨシオ、どうやら戻っては来れていないみたいだ」
もう道はない。後ろのトンネルには戻れない。
進むしか無さそうだ。あの社に。