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参考にならない

「まさか詠唱破棄だけでなく、高速切替も習得済みだったなんて、デュノくんには驚かされますね」


 ネフライト先生は驚きから立ち直った顔で微笑む。


「先生こそすごいです。属性相性の差があったのにもかかわらず、とっさに飛んで衝撃を受け流したので」


 と心から彼女を褒める。

 たぶんだけど俺とネフライト先生の魔力差はそこまで大きくない。


 それなのに彼女が無傷なのは相性の差を他のテクニックで受け流したからだ。


「あれ、タイミング難しいですよね」


 すくなくとも前世で俺が体得できたのは五十歳くらいのときだ。


「つまりあなたも使えるのですね。あなたには驚かされっぱなしですね」


 とネフライト先生は目を丸くする。

 あっ、しまったな。

 

 いや、別にかまわないのか。


「まだお見せできる領域じゃない気がしますが」


「謙遜ですね。あなたが相当な強者なのは、伝わってきていますよ?」


 とネフライト先生は笑う。

 実力者だと感覚でわかってしまうのかな。


 俺にはわからない世界だなと思いつつ、チラッと周囲を見回す。

 アデルとユーリを除いて全員がぽかんとして硬直している。


 俺たちのやりとりについてこれず、置いてけぼりになってるようだ。

 それに気づいたらしいネフライト先生は、そっとため息をつく。


「困りましたね。あなたとの手合わせで手本を見せようと思ったのですが、あなたのレベルがあまりにも高すぎて、他のメンバーの参考にはなりえません」


 それは申し訳ない展開になってしまったな。

 だからと言って手を抜いても結果になっていたとは思えないんだが。

 

 主にアデルが原因で。


「まあ手本は無理でも目標にはなるでしょうから、それでよしとしましょうか」


 ネフライト先生はすぐに考えを切り替えたらしく微笑む。

 

「頑張ります」


 フォローしてもらったので、小さく頭を下げる。


「いえいえ。あなたは間違いなく期待の逸材です。手助けするのは先達のつとめというもの。差し出がましくなりますが、許してくださいね」


 ネフライト先生は鷹揚に笑う。


 めちゃくちゃ強い上に、こんな風に人当たりもよくて気配りもできる美女が実在するなんてな。


 前世でもいなかったわけじゃないが……。


「恐れ入ります。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」


 と彼女に応えるためにもう一度頭を下げる。


「ええ。お互い王国のために頑張っていきましょう」


 流れに従って彼女と握手をかわす。

 何で授業だったのに、こうなったんだろうと不思議だ。


 と思っているとぱちぱちと音が聞こえる。

 思わずふり向くとアデルが拍手をしていて、ユーリがそのまねをはじめた。


 それに続いてレーナ・フィリス殿下までもが拍手をやりだしたので、他のメンバーもこぞってまねをする。


「何やら妙なことになりましたね」


 とネフライト先生が苦笑した。

 まったくもって同感である。


 何で俺が先生と握手をして、みんなに拍手をされているんだろうか。


「こほん」


 先生は大きく咳払いをして、それからみんなをゆっくりと見回す。


「授業に戻りますよ」


 彼女は声を荒げたりはしなかったが、充分すぎるほどの力はあった。

 みんな拍手をやめて彼女の言葉を聞く姿勢に戻る。


「まず組んだ相手とかわるがわる付与魔法を使っていきましょう。すこしでも早く、すこしでも練度の高いものを、が基本になります」


 とネフライト先生は語った。

 

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