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ネフライト先生の授業

「まず魔法ですが、単品では使い物になりません。手が届く距離なら殴ったほうが速いですし、距離があるなら道具を使えばいいのです」


 とネフライト先生は語り、アデル以外がうなずく。

 ああ、ここでもそうなのか。


 やっぱりという気持ちが大きいけど、ネフライト先生は他の人とどこか違うことを期待する気持ちもあったようだ。


 自分で自分の気持ちを発見した気分になりながら授業を聞く。


「ということだけをやっていてはせいぜい一流止まりですよ」


 ところが不意にネフライト先生は言って、言葉を区切る。

 これによって教室内におやっという空気が生まれた。


「昔は詠唱を省略して魔法を発動させるテクニックが存在していたという記録が残っていて、一部では復活させる動きがあるのです」


 とネフライト先生は言って、右手にいきなり氷を発現させる。


「これが詠唱破棄テクニックの一例です」


 彼女はさらりと言い放つ。

 一瞬の沈黙が教室内に舞い降り、


「えええ!?」


「すごい!!」


「信じられない!!!」


 次々に驚愕の叫びが発生する。

 アデルとユーリもぽかんとしているようだ。


 おお、さすが三大戦力。

 失われた過去の技術の研究もしているんだ。


 さすがにトップは違うなと感心する。

 目標の魔法使いとして最適なんじゃないだろうか。

 

「このクラスはエリートたちですから、目標として目指してみてくださいね」


 とネフライト先生は言う。

 詠唱破棄テクニックが超一流となると、当然そうなるのかな。


 彼女が一瞬俺を見たのはたぶん気のせいだと思うんだが。

 ネフライト先生の魔法理論は、俺にとって新情報はなかった。

 

 休み時間になってアデルが俺に話しかけてくる。


「ネフライト先生、すごかったわね。まるであなたみたい」


 俺みたいという評価に同意するのは何だか自意識過剰な気がしたので、微笑を答えがわりにした。


「さすが三大戦力なのですね。ユーグ様だけができると思っておりました」


 とユーリが小さな声で言う。

 俺も正直世界で自分だけしかできないのか、なんて思っていた。


「そんなはずはないということだね」


 まあそのほうがいいと思う。


 世界最強を目指すうえじゃどうせ目立つだろうけど、なぜ俺だけが使えるのかと探られたら面倒だ。


 世界で唯一となるとそういうリスクが生まれるので、避けられるならそのほうがいい。


「あら、世界でユーグだけだと思ったのに」


 アデルは残念そうに口をとがらせる。

 そんな表情も可愛いんだけどね。


「勘弁してくれ」


 と苦笑いする。

 そういう意味で世界でオンリーワンになりたいとは思わない。


 最強という意味で目指してはいるんだが、似ているようで異なるものだろう。

 そこへレーナ・フィリス殿下が取り巻きを従えてやってくる。


「ごきげんよう、みなさん」


「これは殿下」


 俺たちはあわてて立ち上がって彼女に礼をした。


「ネフライト先生はさすがでしたね。失われた伝説の技術を実際に見せてくださるなんて」


 と殿下は言う。


「ええ、まったくですね」


 アデルの反応が遅れたので、俺が代わりにすばやく同意する。

 そのことに殿下は一瞬怪訝そうな顔をした。


「実戦の授業は明日からですね。何をするのでしょうね」


 ここでアデルが話をさりげなくずらす。


「明日ですと基礎的な話か、簡単な練習になるのではないかしら」


 と殿下は言う。


 彼女ならカリキュラムをこっそり教えてもらっていても不思議じゃないので、たぶんそうなんだろうな。


 なんて考えていたら殿下の視線がこちらに来る。


「六対一で完勝したユーグ殿の力、見せていただきたいわ」


 本来なら彼女の要望には逆らえないんだが、授業にかかわることだからな。


「自分からは何も言えません」


 困った顔であやふやな回答を言ってかわす。

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