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学園側の反応

 翌日、アデルとユーリと三人で学園に登校してみたら、昨日以上に俺へ視線が集中する。


「彼、六対一で圧倒したらしいよ」


「全員が骨を折られたらしい」


「えっ、こわっ」


 あっという間に評判が広がったんだな。

 まあ特に隠れていたわけじゃないから、目撃者がいてもおかしくはない。


 それに隠したいわけでもないし、必要も感じなかった。


 学園の生徒たちの中で一番反応を警戒すべきレーナ・フィリス殿下が、好意的な反応だったからな。


 そういう意味で昨日お茶会に混ぜてもらえたのはよかった。

 俺はユーリと一緒でもっぱら聞き役に回り、話すのは殿下とアデルだけだったが。


「六対一でそれならただの惨敗だろ?」


「彼らは大したことがないくせにえらそうだったし、いい薬になるんじゃない?」


「六人がかりだったのに全員骨折ってあきれるよな」


 どうやら俺への恐怖より、六人へのあきれや軽蔑が上回っているようだった。


「まあ何も知らないと六対一で負けた無様な人、になるわよね」


 アデルは小声で言うが笑みをかみ殺している。


「ユーグ様の強さ、にわかには信じられないですから」


 とユーリもひかえめに彼女の意見を支持した。


 ボネが王国有数だったなら、学生相手に戦った俺が責められる可能性すらあるんだよな。


 殿下の反応でそれがなさそうだと判断したわけだが。


「たしかに言葉だけじゃ厳しいかも。ネフライト先生くらいじゃない? 学園関係者でユーグに勝てる可能性がある人って」


 とアデルは言う。


 さすがに強すぎて大会に出場できないレベルの人が、俺よりも弱いなんて考えづらい。


「だよね。たぶんあの人のほうが強いと思う」


 と言ったのはまぎれもない本心だ。

 目標がいてくれたほうが追いかけやすい。


 アデルとユーリは意味ありげに視線をかわす。


「この謙虚なところも彼の美点だと言えるかしら」


 アデルはどこか懐疑的だった。


「だと思います。思い上がりとは無縁なのは素敵です。さすがアデル様が見初めた殿方です」


 ユーリは熱っぽく早口で語る。

 擁護してくれてありがとうと心の中で言っておこう。


 教室で三人座っても昨日の奴らが姿を見せることなく、ネフライト先生がやってきた。


「昨日戦いがあって六人ほど負傷で休学になりました」


 と彼女は切り出す。


「証言もあって六人のほうが戦いを仕掛けたこと、堂々たる戦いだったことから学園は一切不問とします」


 学園の態度は予想通りだった。

 彼らを処罰してくれたほうがありがたいくらいだけど、そこまで甘くはないか。


「つまり六人が負傷で休学なのも自己責任であり、学園側は一切援助をしません」


 とネフライト先生が言ったところで俺と目が合う。

 直後彼女はアデルのほうを見た。


 学園側が一切救済措置をとらないのなら、彼らは俺に喧嘩を吹っ掛けた結果大損したことになる。


 それをもってアガット侯爵家の顔を立てようという狙いなんだろう。

 アデルはこっちを見て小さくうなずく。


 妥当だから受け入れたほうがよいという意味だろう。


 俺にとって不安だったのは、学園側の判断にアデルが納得できないと反発する展開のほうだ。


 彼女をなだめるという仕事がないなら気持ちは楽である。

 

「では本日から授業に入っていきます」


 ネフライト先生はすごく自然に授業をはじめた。

 三大戦力と聞いていたが、普通に授業もできるらしい。


 彼女の担当は魔法理論。

 現代の魔法理論がどういうものなのか、楽しみだなとワクワクする。

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