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魔法職なんて最弱のゴミだろう?

 俺たちは広いグラウンドへとやってきた。

 すでに来ていた人たちが何事かと注目している。


「それで? 六対一ですか?」


「まさか。彼らは審判ですよ」


 俺がいやみで聞くと、相手の六人はおだやかに否定した。

 この程度の煽りで冷静さを欠くことはないか。


 あいているスペースでぐるりと取り囲まれる。


「ところで聞きたかったのですが、ボロン殿の職業は? 【魔法戦士】でしょうか、あるいは【賢者】か【勇者】ですか?」


 名も知らぬ金髪男子はわずかに警戒しながら聞いてきた。

 一応俺が強い職業って可能性も想定してはいるのか。


「魔法使い職ですよ、ただの」


 これはアデルにもお屋形様にも許可を取っている。


 弱いからこそ問題なのであり、魔法職でも強ければいいというのがお屋形様の考えだった。


「またまた御冗談を」


 名も知らぬ金髪男子は笑って聞き流す。

 

「魔法職なんて、身体強化以外何の役にも立たない最弱のゴミではないですか」


 まあ、詠唱に時間が必要だという前提で考えれば、彼の言うことは間違いじゃない。


 お互いの攻撃が届く距離で戦うなら、どうあがいても魔法使いは不利な点が多いのだ。


「そちらの職業は?」


「魔法戦士です! 当然ね。この国を支える要柱たる貴族ともなれば当然でしょう?」


 問い返すと見下すような視線とともに答えが返ってくる。


「まさか長ったらしい詠唱をやらないと何の役にも立たない、魔法使いの平民が侯爵家の婚約者だなんてね」


「侯爵家のみなさまがだまされているなら、目を覚まして差し上げることが我らの役目でしょう」


 彼らはようやく本音を見せはじめた。

 俺に恥をかかせてアデルの婚約者候補の座から引きずり下ろしたいんだな。


 俺の情けないところを見せたとして、果たしてアデルは幻滅するだろうか?

 と本気で不思議に思うのは彼女の性格を知る俺だからだ。


「そうですね。俺がふさわしいかどうか、みなさまにご確認いただきましょう」


 俺はバカバカしいと思う気持ちを抑えながら、慇懃に答える。

 余裕たっぷりにしか見えないらしく、六人はすこしいらだっていた。


 みんなで囲んで心理的プレッシャーを与えようとしているのに、俺がひるまないものだから計算違いということか。


「ではかまえてくださいよ。紳士同士の決闘なのだから、多少のけがはやむを得ないですよね?」


 よく言うよと俺は内心あきれる。


 数をたのみにこっちにプレッシャーをかけ、逃げ道を防いだつもりでいるくせに、紳士同士とは。


 とは言え侯爵家のお勉強でこの手の輩がいることはすでに教わっている。


 出自を誇るのはともかく、誇りを守るために何でもするくだらない輩はいると、嫌悪まじりの説明があった。


 本人たちは自分の行動が家の名を貶める行為だとは気づかないものらしい。


「けがはやむなしとおっしゃるなら応じましょう」


 彼らはどう見てもボネ並みに強いはずもなかった。

 うっかり殺さないように注意しないとな。


「ははは、勇敢な方だ!」


 自分が負けるはずがないと確信している笑みがある。

 

「《風のささやき》」

 

 彼は魔法を発動させてどや顔で突っ込んできた。

 名乗らないんだと思いながら応戦する。


「《風の息吹》」


 彼が使った属性の上位を使ってとりあえず彼の右腕を殴った。

 彼はガードをせずまともに食らって後方へ吹き飛ぶ。


 ……手ごたえ的に骨折したな、いまの一撃で。


「……えっ?」


「はっ?」


 囲んでいた五人は何が起こったのか理解できず、呆然としている。


「ぐあああ」


 そして最後のひとりは骨が折れた激痛で苦悶の声を上げ、地面をのたうち回っていた。


 あまりにも弱すぎる。

 ちゃんと手加減したのに、想像以上に弱かった。

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