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放課後どうする?

 教室に戻ったあとのホームルームで簡単に自己紹介がおこなわれる。


 それで王女殿下、侯爵家令嬢以外にもいいところの子弟が集まっていることがわかったが、これは予想の範疇だ。


 次に教科書と部活の案内書が配られる。

 もっとも、日本の時みたいに前の列から順番に回していくわけじゃない。


 ユーリのような従者ポジションにいると思われる男女が、主人の分も受け取って手渡していくのだ。


「では今日は解散します。部活を見に行くなり、交流に励むなり、明日からの授業に備えて帰るなり、各自好きにしてください」


 と言い残してネフライト先生は退出する。


「どうする、アデル?」


 俺は彼女の希望を聞くために問いかけた。


「そうね。交流に励むか、部活見学に行きたいのだけど」


 そこで言葉をくぎった彼女はじっと俺を見つめる。

 どちらにするか俺の意見を聞きたいということだろう。


「そうだな。じゃあ部活がいいんじゃないだろうか?」


 と俺は提案する。


 女性同士の交流は部活にかぎったことじゃないと思うけど、部活だからこそ知り合える相手だっているかもしれない。


「ならそうしましょうか」


 とアデルが言ったところに、レーナ・フィリス殿下がやってくる。


「ごきげんよう、アデル様。ボロン様」


 彼女は華やかな笑みをこぼすが、俺はアデルのおまけだ。


「せっかくだからアデル様とお茶会をしたいのだけど、よろしくて?」


 なんて言われる。

 名目上は対等な学友だとしても、王女殿下の誘いは命令に近い。

 

 子どもの頃からの親友ポジションならいざ知らず、彼女とアデルは今日知り合ったばかりなんだから、断るのは不可能だ。


「もちろん。喜んで参加させていただきます」


 アデルはいやそうな顔をせずにニコリと微笑む。

 この程度の腹芸はできて当然って立場だもんな。


 ここで殿下の視線が俺へと移る。


「申し訳ないのだけど、ボロン様にはご遠慮いただきたいわ。女同士の話だから殿方には、ね」


 すこしも申し訳ないと思ってなさそうな表情で、殿下は俺に頼んできた。

 もちろんこれも俺に拒否権なんてない。


「はい。婚約者候補殿がお世話になります」


 にこやかな笑みで応じて、アデルとユーリを送り出すという態を取る。

 ユーリは気弱そうな外見に反して、かなり腕は立つ。


 浴室や寝室といった俺がそばにいられない状況での護衛でもあるんだから、当たり前なんだが。


 それでも心配と言えば心配だから、王女殿下の招待にめったなことはないだろう。


 王女殿下の従者だって、立場的にはユーリと同じなんだろうし。

 なぜかいまはひとり少ないけど、お茶会の準備でもはじめてるんだろうな。


 いくら王女殿下といえど、侯爵家クラスの令嬢を待たせるような無礼はあまりよくないはずだから。


 アデルとユーリが王女殿下に連れられて俺のそばを離れていく。

 数年前では通常だった状況だったのに、とても新鮮な気分だ。


 俺ひとりで部活を見回ると一緒に行きたかったとアデルが絶対すねるので、先に邸宅に帰ろうか。


 立ち上がったところ、にやにや笑う男子六人になぜか囲まれる。


「あなた、ボロン殿ですよね」


「アガット家のご令嬢の婚約者候補筆頭になっている」


 言葉使いこそていねいだが、内心俺を見下していることは表情を見れば察しがつく。


「ええ、それがどうかしましたか?」


 面倒だなと思いつつどうせ相手は良家のボンボンだから、ていねいな口調を心がける。


「いえね。あなたが婚約者候補となった理由、我々に見せていただけないものかなと」


「そうです。あなたはさぞすばらしい実力をお持ちなのでしょう。どうか我々に御指南いただきたい」


 にやにや笑いをそのままに彼らは言う。

 殊勝な申し出とは裏腹に、俺に恥をかかせてやろうという魂胆がみえみえだ。


 ここで断っても笑いものにされるだけだよな。


「いいでしょう。私でよければ」


 と答える。

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