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王女レーナ・フィリス

「許しましょう。今日まで会う機会を与えられなかったのですものね」


 とレーナ・フィリス殿下は微笑む。


 俺としては大貴族と王族がこの年齢まで面識がないのは奇妙なんだけど、この国では一般的だもんな。


 もっとも何で初対面なのに俺たちを特定できたのか、謎だったりする。


「恐れ入ります」


 とアデルは答える。


 レーナ・フィリス殿下はこの国の第三王女で、おそらく学園でも数人しかいない家格がアガット侯爵家よりも上の存在だ。


 もっともだからと言って、言葉通り恐れ入るアデルではないと思うが。


「アガット家ともなれば魔力の質が違いますわね。お隣の婚約者候補さんも見事だから、すぐに特定できましたわ」


 なるほど、魔力の質で特定されたのか。


 いまの時代は前世よりもレベルが下がっていると思っていたけど、同程度のケースもあるらしい。


 前世は《鑑定》で探り合っていたんだから。


 ……この時代だと《鑑定》を使える人は珍しいみたいだし、ある意味では前世よりレベルの高いことをやっていると言えるかも?


 レーナ・フィリス殿下だって相当すごい感じだ。

 俺の印象が正しいなら、アデルよりも上手だろう。


「ふふ。このユーグは特にすごいと存じますよ」


 そのアデルが自慢するように俺のことを話す。


「ええ。うわさに誇張はなさそうだと感じていますわ」


 殿下の視線がこっちに移り、にこやかな笑みが向けられる。

 好意というよりは、できのいい装飾品に対するものっぽい。


 あくまでも印象論にすぎないが。


「恐れ入ります」


 俺は定型文で答え、一礼する。

 

「これからは学友となるのです。よく学び、よく助け合いましょう」


 レーナ・フィリス殿下はそう言って、アデルと握手をかわす。

 俺には何もないが、当然のことだった。


 俺はアデルの婚約者「候補」で「アガット家に任じられた男爵」である。

 アガット家が大貴族じゃなければ、まず王族に相手にされない。


 話しかけられただけでも望外の栄誉というべき立場だった。


「わたくしに何かあればこのふたりに言ってくるといいですわ」


 とレーナ・フィリス殿下は言って立ち去る。


 ふたりの従者の自己紹介がないのは、この中で最も格下という扱いのせいだろうか。


 学園の同じクラスに配属されているくらいだから、レーナ・フィリス殿下の側近だろう。


 そして王女殿下の側近をやっているなら、実家は伯爵以上の家格を持っていると思うんだが。


 つまりいまの俺なんかよりずっと格上だろう。

 周囲に人がいなくなったタイミングを見計らい、こっそりアデルに聞いてみる。


「ああ、そこはまだ覚えていないのね。ダーリンはわたしの婚約者でしょう?」


 アデルはさりげなく候補をとったが、いつものことだからスルーしておく。


「その時点で持ってる爵位や地位に関係なく、わたしに準ずる扱いになるの。つまり伯爵家よりは格上ね」


 なるほど、そういうことなのかと納得する。


「あの子たちが侯爵家の人間なら最後に紹介はされただろうから、おそらく伯爵家の人間だと思うわよ。どちらもね」


 とアデルは言った。

 そういう風に相手の家柄を予測するわけか。

 

 一応習ったはずだけど、まだ身につききってないな。

 ここにアデルとセットでやってきたのは、そのためだ。


「知識はまだ血肉に変わってない段階だな」


 と確認のためにつぶやく。


「大丈夫、わたしもユーリもいるんだから」


 アデルは微笑し、支えるという。


「が、がんばります」


 黙って聞いていたユーリもひかえめに主張してくる。


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