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ユーグの魔法

ご飯を食べてひと休みしたら、俺は魔法の練習を開始する。

 《鑑定》はすでに試したから残りは九だな。


「《火の矢》」


 まずは上にめがけて一発放つ。

 見覚えのある火の攻用魔法だ。


「《雷の矢》」


 次に風属性の攻用魔法を撃つ。

 魔法を使えない人はよく勘違いするが、雷の魔法は風属性に分類される。


 何でなのかは誰もわからないらしく、魔法にまつわる謎の一つとされていた。


「《浮遊》」


 次には移動用魔法で地面から十センチほど浮かんでみる。


 問題なく使えるようだし、レベルが50のおかげか、数回魔法を使っても全然疲れない。


 50回くらいは使える魔力も、そのまま引き継げたようだ。


「何だ、ユーグ? 魔法の鍛錬か?」


 そこへ父さんがやってきて声をかける。


「うん。魔法で勝敗が別れるなら、磨いておいて損はないよね」


 と父さんが言ったことを引用して答えると苦笑された。


「その通りだが、接近戦用の魔法の練習も忘れるなよ。《風のささやき》は教えただろう?」


 そして確認するように言われる。


「うん、そうだね」


 たしかに教わったが、問題が一つあった。


 俺が前世で使えていた《風の息吹》という付与魔法があるのだが、これの下位互換が《風のささやき》なのだ。


 どうするか……迷ったけど、隠し続けるのはおそらくとても難しい。

 それならいっそ使えるようになったことにして、見せてしまおう。


「ところで父さん、相談があるんだけど」


「何だ、突然?」


 いきなりすぎて訳がわからないという顔をされたのをよそに、俺は《風の息吹》を発動させてみた。


「《風の息吹》」


 風が発生して俺の体を包み込む。


 今の俺は身体能力が上昇しているし、風の守りで物理攻撃に対する抵抗力を得た状態だ。


「おおおおお!?」

 

 父さんは青い目を大きく見開いて、叫び声をあげる。


「そ、それは上位魔法の《風の息吹》じゃないか!?」


 ……上位魔法? 《風の息吹》が?

 どういうことだ? 《風の息吹》は俺でも使える中級魔法のはずだけど?


「い、いったいいつの間に!? どうやって覚えたんだ!?」


 父さんは興奮して早口でまくしたて、俺の肩をしっかりつかんで揺さぶる。


「えっ……」


 頭まで揺さぶられてるので、とても話せる状態じゃない。

 今のうちに何とか説明を考えたいが、頭が上手く動かなかった。


「父さん、何をしているんだい? ユーグがかわいそうだよ」


 マーグ兄が俺たちを見て話しかけてくる。

 正直助かったけど、困難も割り増しされた気分もあった。


「あ、いや」


 父さんは我に返ったらしく、俺から手を離してこほんと咳払いをする。


「あまりにも驚いてな。ユーグはいつの間にか《風の息吹》を使えるようになっていたんだ」


 と父さんが言うと、マーグ兄がぎょっとして俺を見た。


「何だって? すごいじゃないか!」


「あ、ありがとう」


 俺は混乱から立ち直っていたが、説明はあきらめようと決める。

 

 何のアイデアも思いつかなかったからだ。


「どうやって覚えたのか、教えてもらってもいいかい?」


 とマーグ兄にも聞かれる。


「練習していたらいつの間にか、使えるようになっていた」


 あまりにも苦しい言い訳だと自分でも思う。


「ええー!?」


「バカな、そんなことが起こりうるのか!?」


 やはりと言うか、ふたりとも半信半疑か、疑いが八割という感じだった。

 俺だってふたりの立場だったら素直に信じなかっただろうな。


「いやでも、実際にできたんだろう? ユーグはもしかしたらすごい才能があるのかもしれないね」


 先に落ち着いたのはマーグ兄のほうで、そう褒めてくれる。

 何というか、俺にとって都合のいい結論だった。


「たしかにな……《風の息吹》を覚えることができたなら、そりゃ『魔法使い』を目指したくなった気持ちはわかった」


 と父さんは腑に落ちた顔で言う。


「だが、それなら余計に『魔法剣士』を目指したほうがいいぞ」


 そして意外なことを続ける。


 《風の息吹》を短縮詠唱で発動させても驚かなかったことと言い、まだまだわからないことだらけのようだ。

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