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候補

 気持ち悪いくらいにいい条件だというのが正直なところだったが、期待値の現れてと考えることができる。


 ぶっちゃけハンターギルドからの報酬については、侯爵家の懐が痛むわけじゃないしね。


 郎党たちに割り当てられている建物に戻ってくると、ボネに声をかけられる。


「本当に強いよな、ユーグ」


「ありがとうございます」


 笑顔を浮かべている彼からは好意を感じるけど、いきなり褒められても正直反応に困った。


「これなら軍官と相談して、巡回に出せるかもしれないと思うんだ。もちろんひとりじゃ行かせられないが」


 巡回ってのは言葉から何となくイメージはできるけど、具体的なことはよくわからない。


「巡回って具体的にどこに行って、何をするんですか?」


 とたずねた。


「ああ。分隊を作って侯爵領の各地を見回って、モンスターを間引いたり盗賊がいれば討伐するんだよ」


 ボネはそう言ってから、


「もっとも侯爵領は治安がいいから、盗賊はまずいないけどな」

 

 と付け加える。

 侯爵領は豊かだから食い詰めた平民は珍しい。


 さらにアガット侯爵様が優秀な若者を郎党として雇用して、治安維持に力を入れているから余計に盗賊は寄り付かないのだ。


「でしょうね」


 侯爵領は豊かかもしれないが、盗賊たちにしてみればデメリットが大きすぎるだろう。


「騎士の息子だったら知ってるかもしれないが、モンスターの間引きはかなり大事なんだ。特にゴブリンとオークはな」


 というボネの言葉に小さくうなずく。


 どちらも人間を襲って農作物や家畜を奪い、女性をさらっていく人間の天敵的存在だ。


 個としては強くないものがほとんどだが、その分繁殖力も強い。

 油断すると村を壊滅させられるだけの戦力が集まってしまう。


 デュノ家の領土は小さいうえに戦える人間が少ないので、ゴブリンとオークには細心の注意を払わなきゃいけない。


「人間なら侯爵領はリスクがでかいから他の土地に行こうなんて考えるが、奴らにはそんな知能がない。面倒でも地道にやるしかないんだ」


 ボネの言葉には使命感がにじみ出ていて好感が持てる。


「頑張ります」


「まあ分隊で行動するから、お前さんひとりで頑張る必要はないぜ」


 意気込んだ俺に彼は笑って、優しく肩を叩く。

 肩肘はらずにリラックスしろと言われたようだった。

 

「とりあえず軍官の判断待ちだから、通らないかもとは思っていてくれよ」


 とボネに確認される。


「あ、はい」


 責任者である軍官がダメと言ったら当然ダメだ。

 あるいは軍官が採用しようとしても、お屋形様が却下してもダメである。


 まあ通ったらラッキーくらいに思っておくか。

 

「このあと俺は何をすればいいのかわからないんですが」


 ファシュを探せればいいのかもしれないが、ボネにも一応相談しておこう。


「郎党見習いって言えば基本的に雑用なんだが、お前さんの実力で雑用させるのはもったいないからな」


 彼は考え込む。


「やりたいなら訓練に参加してもいいんじゃないか? 俺との手合わせを見ていた奴なら、反対しないだろう」


 と彼は言ってくれた。


「この時間なら屋内で座学をやっている班があるはずだ。座学ってどれくらいわかる?」


 武人の座学って戦術や兵站の話かな?


 騎士の子ども、それも十二歳が知っているのはあまりにも不自然だと首を横にふっておく。


「何にもわからない自信があります」


「正直だな」


 ボネは我慢しきれないと吹き出す。


「これは確認だが、読み書き計算は習っているな?」


 彼はすぐに表情を引き締めて聞いてくる。


「ええ。最低限できないと生きづらいからと両親に学びました」


 貧乏騎士の子に生まれた数すくないメリットが、読み書き計算を習えることだろう。


 貧しい平民だと親に知識がなく、近くに教えられる人すらいないことは珍しくないという。


「ならば大丈夫だろう。混ざてもらうといい。俺の勝手な予想だが、お前さんは将来の軍官候補のひとりだから」


「え、そうなんですか?」


 思わずボネに聞き返してしまった。


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