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雇用条件

「とりあえず俺って今日はこのあと、どうすればいいでしょうか?」


 と問いかける。


 何からはじめればいいのか、どうすればいいのか全然わからないのでファシュが頼りだ。


「まずはぼくらと一緒に鍛錬だろうね。郎党の武官は有事の際、お屋形様とそのご家族を守るために存在しているわけだから」


「それはわかっているつもりです」


 ただ鍛錬をしていればいいのかな、と聞くべきだったか。

 自分の失敗に気づいたところで、ファシュは微笑む。


「きみの場合はあとで家宰殿に相談しに行くといいよ。具体的な条件や俸給について決めるのは、家宰殿なんだから」


「あ、なるほど」


 そうか、貴族なら家宰という人もいるんだっけか。


 家宰というのは貴族当主の側近であり、家中のことのすべてを取り仕切っている人のことだ。


 領地運営に関しては執政官が、郎党らの管理は軍官が仕切る。

 上級貴族の三官ってやつだな。


 それぞれ家事使用人、軍事使用人、政事使用人とも呼ばれ、同格のはずだ。

 前世でも今の時代でも、全員まとめて郎党と呼ばれる。


 軍事使用人は武官と呼ぶことのほうが多いみたいだけど。

 俺の場合は軍官の下につけられた新人武官ってところだろう。


 軍官は戦闘面の責任者であり、郎党の俸給や条件を決めるのは家宰というわけだ。


「軍官の方にいちど許可をとらなくてもいいのでしょうか」


「ぼくから言っておくから平気だよ。それにみんな最初のうちに一度は家宰殿と面談してるから、心得たものさ」


 なるほどな、みんなが同じ道を通ってきたのならわかりやすいだろう。


「それじゃお願いします」


「ああ。家宰殿の居場所はメイドか執事に聞けばわかると思うよ」


 ファシュは最後まで親切だったので、もういちど礼を言って別れる。

 そして教わった通り見かけた執事に家宰殿の現在地をたずねた。


「ああ、あの方ならお屋形様の執務室ですよ」


 お屋形様がお屋敷にいる際、そばにいることが多いという。

 もしかしたらお屋形様と一緒にいた男性の誰かかもしれない。


 お屋形様の執務室の場所を教わって、礼を言って別れた。


 正直、これなら先に家宰殿との面談をさせてくれたらいいのに……という気持ちが生まれている。


 執務室にたどり着き、ノックして入室許可をもらった。

 部屋の中にはお屋形様以外に三人の壮年の男性がいる。


「来たな、ユーグ」


 とお屋形様は言うとにやりと笑う。


「左から家宰、軍官、執政官だ」


 三人の男性をまとめて紹介されたことと、彼の表情から面倒な思いをさせられたのはわざとだと直感する。


「まずは俸給の話をしよう」


 と家宰が口を開く。

 

「月給二〇万ゼン、年収二四〇万ゼンからはじまる」


 この説明には納得だった。

 普通の兵士、もしくは成人男性も似たような年収だからだ。


 一ゼンはだいたい一円くらいだと置き換えることができる。

 

「手柄を立てるとボーナスも出るし、郎党内の序列も上がる。そうすれば自然と俸給も上がる仕組みだ」


 手柄を立てるたびにボーナスが出るとしたら、かなりありがたい。

 三度めの人生でようやくという気持ちがわきあがてくる。


「きみは王都の学園に通うことはすでに決定済みなのだが、その間の生活費と学費のすべて負担する。ただ、それとは別にきみが自由に使える小遣いは別計算だ」


 都の学園は授業料が高いというのは、前世からでも予想できるので仕方ないと思う。


 実績がない新人の授業料と生活費を負担するだけもかなり異例なのに、毎月の小遣いまでは出せないよな。


「ただ、かわりにきみがハンターギルドに登録して、依頼をこなして小遣いを稼ぐことを認めることになった」


 えっ? と思わず家宰殿とお屋形様の顔を見る。


「貴族の郎党がハンターギルドに登録し、活動することは禁止されておらん」


 お屋形様は再びにやりと笑う。


「おまえがハンターとして活躍し、アガット侯爵家郎党の名声を高めれば、それも手柄とする。励むことだな」


 マジか!?

 ハンターとしての報酬に、侯爵家からのボーナスや俸給と一緒にもらえるのか!


 すごくいい条件じゃないか!


「期待しているぞ」


 お屋形様にていねいにお礼を述べて、部屋をあとにする。


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