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プロローグ

「まさかと思うけど、これは転生なのか……?」


 ユーグこと俺はある日の朝、自分のベッドの上で呆然としてつぶやく。


 ロイという平凡な魔法使いとして生きていた記憶がよみがえり、ユーグとしての記憶と混ざる。


 正直言って混乱していて、感情が漂白された。

 何がどうしてこうなったんだろう???


 ……転生なんて単なるおとぎ話じゃなかったのか。

 少しずつだが気持ちは落ち着いてくる。


 平凡だった俺が自力で転生なんてできるはずがないから、おそらくたまたまなんだろう、と推測できるくらいには。


 自分の体を探った感じ、《鑑定》を使えるだけの魔力はすでにあるな。

 一回試してみよう。


「《鑑定》──ふぁ!?」


 自分の現在レベルが50なことにまず驚いたが、限界値がなしになっていることに仰天する。


 限界値というのはレベルを上げられる限界で、どんな人間だってレベルが100が限界のはずだった。


 まさかと思うが、転生したから限界がなくなったとか、そんなことが?


 よくよく見ると習得ずみの魔法が10あるのは前世のままだったが、まだ習得可能枠が大量に余っている。


 おかしいぞ……10で平均、20で一流、30で歴史に名前を残すレベルだったはず。


 何で俺の枠は無制限になっているんだよ?

 ……転生した結果、あらゆる制限が外れたとかそんなことが起こりえるのか?


 自分でも信じられないけど、他に原因になりそうなことはまったく覚えがない。


「ユーグ、いつまで寝てるんだ?」


 一人の少年が開かれたドアからひょっこり顔を見せて、声をかけてくる。

 俺より三歳年上のマーグ兄だ。


「あ、兄さんおはよう」


「起きてたならご飯に来いよ。母さんがうるさいよ」


「うん」


 俺たちの母は「家族みんなでご飯」にこだわるタイプだ。

 前世を思い出した俺からすれば苦笑するが、今の俺は十二歳。


 逆らう理由もないので従おう。

 服を着替えて食卓につくとすでに両親は座っていた。


「おはよう」


「おお、おはよう!」


 父さんは明るくあいさつをし、母さんはにこりと微笑むだけ。

 美男美女の似た者夫婦だと思う。


「いただきます!」


 飯はジャガイモのスープとパンだけ。

 父親は一代かぎりの騎士の称号を持つ貴族だけど、実態は貧乏だもんな。


 信賞必罰を大事にする国だから、手柄を立てた者はきちんと報酬があるし、貴族に取り立ててもらえる。


 だが、悲しいことに国家の予算は有限なのだ。


 父さんと母さんだけならともかく、子どもを育てるには足りない額しか出ないので、母さんは内職をしている。

 

 こういうところは前世でも一緒だったな。


 手柄を立てても報酬が出ないなら、真面目に働く人が激減するからやるしかないんだろうけど、国家が抱えてるバグみたいな感じだよね。


「ユーグはそろそろ十二だったな。将来は決めたのか?」


 父さんが真面目な顔で問いかけてきたが、俺はすぐに意味を理解できなかった。

 まだ記憶の混乱の影響が残っていたのか。


 将来というのは自分がなりたい職業クラスを選択して、精進していくというものだ。


 前世だと接近戦職か、あるいは後衛職かの二択であとは自由だったんだけど。


 ……問題なのは俺の前世職にして、今世もやりたい「魔法使い」がこの時代じゃ最弱職として冷遇されていることだ。


 レベル上限が200になってて、魔法習得枠が無限になったらどこまで強くなれるんだろう…という楽しみがあるんだが。


「魔法使い、じゃダメかな?」


 と言ったとたん父さんは無表情になったし、母さんからは微笑が消える。


「ユーグ」


 そして兄からはワガママを言ってみんなを困らせてはいけない、と言わんばかりにたしなめられた。

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