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バーランダー王国において、衝撃的な法令が発布された。民衆から、あらたに税金を徴収するというものだ。理由はバーランダー国営テレビにて、国王から直々に説明された。
どうやら魔物が近年、国内において増加しており、民衆をその脅威から守るためのガーディアン活動費が必要らしい。
「バーランダー国民の諸君、どうか協力をお願いする」
民衆は、国王のこの政策を支持した。代々長きに渡って続く伝統のあるバーランダー国王家はかねてから民衆から高い支持を受けており、やることなすことが盲目的に支持されてきた。
そして今回の課税もまた、その例外ではなかった。
だが、この政策に不満を持つ者も少なからずいた。当のガーディアンたちである。
ドッジもそのひとりで、自宅にてスカーレットと朝食を摂りながらその様子をテレビで観ていた。
「おかしい。聖女だったスカーレット様のおかげあって、この国における魔物の出没率は下がり続けているはずなのに。何か裏があるとしか思えない」
「何より、民衆に負担が行くのは困りますわね」
「おっしゃる通りです。やはり、ここは少し探りを入れてみることにします。この国を守る、ガーディアンとして」
「……居候させていただいている私に止める権利はありませんが、くれぐれも国王様たちに感付かれないよう、気をつけて下さい。バレたらただじゃ済まされませんわ」
「ええ。分かってます」
とは言ったものの、スカーレットはドッジの、ガーディアンとしての献身的な姿勢に少なからず心を打たれた。それと同時に、この国のことを真剣に考えてくれる人がまだバーランダー王国にいたことに、心底安心した。
「では、行って参ります。留守の間、くれぐれも外出なさらないように。お気をつけて」
「はい。お気をつけて」
スカーレットはひとりになった。
ひとりになり、考えた。
たしかに、自分が聖女をクビになり、ジェラルド王子との婚約も破棄になったのには、それ相応の理由があるのではないかと思っていた。
それに加えて、今回の不自然な課税。
何か裏があることは、証拠が無くても自明なほど明らかだった。