目にした存在
そう私は、目を疑うような衝撃がピリビリと走る。
その髪の色、目の色、容姿その物が――――死んだはずの"リリナ"だった。
「……」
「リュウカ、誰よあの子」
「…嘘だと思いたい、信じたくない"事実"が今、目の前にあるとしたら―――私は狂うよ」
「え?」
「リリー、逃げるんだ。"あの子"はこの世界を救った隠れた英雄の一人、今の君じゃ勝てない」
「か、隠れた英雄…? そ、そんなわけない!? 私が知る限りでは"十五人"の英雄が居て、その内の十名は行方知らずで…! 」
「残りの五人は、私、ミカエル、ラグナログ、ルミ、シャングリラ。そして名前が無い一名、それが目の前にいる―――リリナ! 私の親友であり、生前私の恋人だった人!」
「へ?! ちょっ、百合だったの!?」
「違うよ…前置きに"生前"って言ってるよ」
「あ…つまり死ぬ前の記憶ではそうだったのね?」
「うん」
「で、でさぁ…私がここで逃げるのは変じゃない?」
「リリー、いくら強い敵がいてワクワクするのは分かるけど、今回は桁違いよ」
リリナは無言で動き出す、手に持つ武器はかなり黒くカオス武器を思わせる。
禍々しさに、生唾を飲むリリーに対して私はリリナの形見の剣を手にする。
「さ、お前の相手は私じゃないと務まらないよね?」
「……」
「喋らないのは、ホント不気味。何のためにこの世界に蘇ったか知る権利は…あるわよね?」
「……」
「武器で語れかな、まぁいいや」
私はリリナに向かって剣を振り抜いた、一瞬の出来事の様に素早い動きで背後を取る。
そのままリリナは剣を振り落とすが、私は背後に忍ばせた"神器"で受け止めて弾いた。
動きからしてリリナその物か、だけどアイツは黒い剣なんて持たない。
紛い物だと信じたいが―――。
私は右腕をリリナの斬撃が微かに掠り、後ろに飛び着地する。
「…やっぱしんどいや、なんで敵対しなきゃならないのか。考えちゃうな」
「…貴方は、私を知った様に語るのですね」
「り、リリナ!? 喋れるの!?」
「えぇ、ですが残念ですね。貴方はある過ちを犯しましたね」
「過ち?」
「そうです、この場所に"敵は居ない"なんて思わなかったなんて言いませんよね?」
「うんそりゃそうさ、調べるために来ただけだしね」
リリナはきつい眼差しで私を睨む、表情を変えない視線をどう捉えたのか分からない。
ただ、黒い剣を胸に置き静かに言い放つ。
「そうですか、なら生きては返しません!」
何も無い空間から、無数の黒い鎖が飛び交う。
こんな狭い洞窟で、大技を放つリリナ。
私は剣で弾くが、跳ね返る様に動くまるで意思が宿ってるかのように。
こんな戦い方が出来るとしたら、術式あるいは魔術と限られて来るがどう見ても以前私が出した"鎖"に似てるのだ。
「まさか"負の力"? あの時失われたはず…なんでまた?」
「なんでまたとはなんでしょうか? これは、列記とした「最強魔術」。心一つで簡単にできますよ? こんな風に―――」
私の目の前から無数の鎖、それらを回避した直後ザシュッと綺麗な音が鳴った。何が起きたのか分からない。分からないが、何故こんなにも赤いのだろう。
理由を辿れば私の目の前からは赤い血が吹いていた、おかしいなんでこうなるのか。
「私の剣筋を知ってた所で、私には勝てませんよ」
"世界を救いたかったじゃないのか―――リリナ"
私は地面に倒れた、意識が遠のく最中でリリナは私の顔を見るなり笑みを浮かべた。リリーを軽く押し飛ばしただけで壁にめり込ませた。
それは懐かしさを思わせたのだが、歩く足音は冷たく響いたのはいつ以来だろう。
だからこそ私は、訊ねたいのだ歯を食いしばり言う。
「ま、まてっ! お前は誰なのよ!!」
「…貴方は知らないでいたのですか?」
にっとした、横顔がリリナを思わせる私の脳内はぐるぐる描き混ざるさなかで答えた。
「そうです、私がリリナ。貴女をよく知る私は"私"では無い」
「…意味がわからない。なんで…リリナ…」
「世界を救う、それを求めた私は現状変わらないのならばまた滅ぼしが一番って思いますね」
リリナは、無情にもさっさと歩いていく。
それを私は何度も呼び止めたが、振り返らすその姿を消した。
「まて…リリナ…!ちくしょう―――!!」
叫びは洞窟内をこだました、私は意識を失い次目を覚ましたら監獄の檻の中だった。




