因縁
ルックスの貴族の流派はスカイアザルトと呼ばれる、セルリット流から変化した流派技である。
剣技と銃の隙を与えない攻撃は、全てを翻弄する戦いである。
互いに無数の弾丸と、回避しつつ剣を振り落とす
そんな戦いが数分間続いていた。
「いい加減本気出したらどうだ? 姉さん」
「……いいでしょう。ただ前見たく死にかける事はしないでよーーー」
ルックスの姉はゆっくりと立ち、銃剣を地面に突き刺した。
魔法陣が展開して、雷がバリバリとルックスの姉の体に纏い始める。
目から流れる様な線が揺らぎ出す…そうこれこそがルックスの家系にある最終奥義である。
そう、俺はこの最終奥義を越えなければならない。
弾丸よりも早く、敵殲滅する…動く流星如くの素早さ。
名ばかりじゃない強さ、それが姉上の名前の由来…アーミルス・ブレイブ。
これこそが終流星白虎ーーー。
踏み込んだだけで、ルックスの目の前に刃がありそれを回避して顔を上げた瞬間にアーミルの銃剣がある。
パンっと軽い鉄音が鳴り響くが、ルックスは紙一重でかわした。
頬をかすり抜けて、じんわりと痛さを感じてる余裕なんてなく…翻弄する様に分身が沢山現れる。
速い…! 前より格段に上がってる…。だけど、姉上はーーーあそこだ!
ルックスは勢いよく前方に走り出して、剣を穿つとアーミルの剣に的中する。
だが、受け流されながらルックスの体に刻まれてしまう。
「ぐぁっ!!」
「遅い、話にならないわね。それでも大貴族?」
「…そんな肩書きは俺には不要だ。今の俺は一般市民だ」
「まだお仕置が必要かしらね」
アーミルは素早い動きでルックスの間合いを詰め寄り、ルックスの四肢を撃ち抜き動けなくなった瞬間ーーー目にも止まらない速さで振り抜く剣。
「雷光石火」
ただただ流れ落ちる血を、ルックスは眺めたままあることを思い出す。
体は既にボロボロな状態、それは過去にもあった
ルックスがまだ6歳ぐらいの頃。
アーミルと俺の扱いはかなり差があった。
アーミルは既に剣技を極めていたからだ、大してまだ6歳児である俺は…極めるのが難しかった。
理不尽な怒られと親からの圧力で、次第に虚無感になり…感情すら抱かなくなっていた。
そんなある日、一人の少女が屋敷に侵入した。
無謀な行動であるが少女の手には刃物、その矛先は…父上だった。
その顔つきは、殺意と恨み…意図もなく両親を犯罪扱いされて殺され行き場を失った様な強い感傷を滲ませていた。
「まて」と言葉が出た、少女はこちらを向き…走り出してきた。
俺は少女の手に持つ刃物を手に取り、そのまま背負い投げした。
「………」
なんにも発しない少女はただただ、空を見上げていた…透き通った瞳に俺すら言葉をなくした。
しばらくすると、俺の使い人である老爺が姿を現して二人の状況を見てこういった。
「おや、坊っちゃまの客人ですか?」
疑いもしない発言をする老爺に、俺は微かな不信を抱きつつも答える。
「うん」
「左様でございますか…。では、その子には綺麗になって貰わなければなりませんね」
少女はどっから現れたか不明のメイドさんに担がれて、風呂場へと連れていかれたのをみて俺は老爺を見てこう訊ねた。
「なんで疑わなかった?」
老爺は軽く笑い飛ばしながら答えた。
「どんな子であれ、私はあの子を敵には見えませぬ。おそらく旦那様のやり方が問題でこのような事態を招いたに違いありません、それに坊っちゃまは…あの子を気にったのでしょう?」
不意の質問、やはりお見通しの様だった。
普通に可愛い少女が一般人とは、俺の目もまだまだと痛感した。
「こ、答えられぬ問いだ」
「ふふ、では参りましょうか…お屋敷に」
それから月日が流れ、ある日の事である。
その少女がいつもの様に現れて、俺と話してる時である。
「そこの見られない顔」
兵を引連れた太鼓腹が特徴的な父上が声を飛ばした、少女は目を丸くして俺は少女を庇うように前に立つ。
「なんの真似だ?」
「無礼承知だけど、この子は俺の大切な子だ。父上…この子はなんも悪くない」
「何を言う? 少女が私の命を狙う存在であろう」
「何故それを?」
「例のものを見せろ」
「はっ!」
俺の目の前に一人の老人が運び込まれた
それは見覚えがある老人である。
「老爺…?」
「ぼ、坊っちゃま…お逃げ…ください…」
「ほう? まだ生きがあったか…」
父上の脇差から剣を抜き取り、そのまま老爺の腕に突き刺した。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」
「ゆっくりと噛み締める死を、主のために尽くす殉職。華があるではないか? 老爺よ」
「ぐっ…坊っちゃま…これを…」
震えた手から一枚の紙、やや赤い血が滲んでいた
それを手に取り、父上がこういった。
「ルックスそいつをよこせ!」
「……」
老爺は目で訴えていた、決して渡してはならないとーーー。
「…父上には悪いが、それはできません」
「そうか、なら貴様も死ねーーー」
そう言った瞬間、少女がゆっくりと俺の前に歩いてくる。
「待て…どこに行くんだ?」
「君といられた時間は楽しかった。殺す事すら忘れるぐらい楽しい日々をありがとう、だから…君だけは生きて」
「な、何を言っーーーてるっ!?」
少女がそう言い切ると、俺の足元から魔法陣が展開して視界が揺らぎだした。
後ろを振り返る少女の笑みが、俺の言葉を発しさせないようにした。
気づいた時には、俺はみしらぬ山に居た。
素朴な小屋がひとつあり…おそらく少女が住んでいた場所に違いない。
老爺に手渡された紙、それを開いて書いてあったのは…父上が領土内で無差別な殺傷などを犯していた記録である。
もちろん、今後の計画で…無人機械計画と称した殺戮兵器を作る内容だが、これはもう既に行われていたのだ。
何とかしなければならないと思い、動いた先にいたのは姉上ーーー。
手に持つ刃物を月明かりに反射させていた。
「……私の敵」
「姉上…。どうして…!」
「理由なんていらない、あんたは臆病。逃げた逃げた…それで何を得る」
「逃げたんじゃない、逃がされただけだ」
「同じよ、あんたは追放されたわ。もちろん殺す事も許されてる」
「姉上っ!!」
「じゃあね…弟」
姉上に殺されかけた、この時…俺は強い殺意を覚えた。この十年で、ようやく手にした力と倒すべき相手。
「……ボロボロなのにまだ動けるの?」
「あぁ、動けるさ。ようやく倒したい相手が目の前にいるんだからなーーー」
ルックスはゆっくりと立つ、フラフラな状態である。
アーミルは銃剣を向けた、数発弾丸を打ち鳴らす
逃げても隠れても待つのは…死。
さぁ、どうする? ルックス。
ルックスは強く握りしめて、構えたそのまま剣を穿つ様に突進していく。
弾丸は切られて、アーミルの右肩に剣が突き刺さり校舎の壁にぶつかった。
「ぐっ…!」
アーミルは左手で魔法を放つ、ルックスは回避して左手の拳銃で弾丸を撃つ。
「チッ! 中々やるわね!」
「それはどうかな?」
「はっ!?」
ルックスはアーミルの顔を蹴飛ばした、床を転がり体制を立て直す。
「動きが…!」
ルックスには特になんの流儀なんてなかった、スカイアザルト流派なんて基本までしか知らない。だからこそ得た種族固有の技、それがーーー。
「天使族しか扱えない剣技、その名もフェザーアサルト流。その一撃は攻撃を読めない一瞬の出来事、姉上…今度こそ勝たせてもらう」
「……別の流派ですって? 認めない、そんなのは認めないわよ!!」
「事実上、流派は一つとして2つは扱えない。だから、姉上は否定的になり怒り狂う様な態度になるだけどね」
ルックスは弾丸を撃つアーミルを、回避しながら近づいていき…眉間に拳銃を押し当てた。
「ーーー!!?」
「チェックメイトだ」
「そ、そんな…私はまだ…負けては…!」
ルックスは引き金を触れる前になにか違和感を感じた…それは外傷がある筈なのに傷一つない。
汚れすらなくまるで、堅い鉄の様なつるりとした肌…。
人間とは程遠い機械物みたいな感じである。
「……? お前姉上じゃないな」
「!?」
「どうゆう事だ…? 姉上は何処にいる?」
「………バレましたか。 なんて悲惨なんでしょうか? 人間とは難しいものですね。拳銃を降ろしてください、貴方と戦っても私は勝てないでしょう」
ルックスはゆっくりと拳銃を降ろすと、アーミル姿の機械体は軽くお辞儀して話す。
「申し遅れました。機体ナンバー01号試作型アルグ09番台アーミル四号機と申しますーーー」




