動き出す呪いの力
私はこの時、まだ甘く見ていたのだろうか?
仲間たちは、体力がギリギリ。
対して…ルミナスフユーゲルだった存在の魔物は…平然としている。
これが化け物っと痛感させるように、激しいぶつかり合いと衝突音が鳴り響く。
「ぐっ…あとどれくらいで倒れるのよ!?」
「向こうはチート能力…力からして受けた攻撃は無効で威力は人を殺せる強い一撃。武器が無いのに切りつけるまで…何でもありなのよ」
ラグナロクは冷めきった声でそう言ったが、私は何回攻撃しても倒れない魔物に苛立ちを募らせる。
「あぁ…くそっ! 何がなんなんのよ…これ!」
「リュウカ落ち着いて」
「大体…空気を飛ばして切り裂くとか。かまいたちよ!! 躱せないだろあれ…目に見えないわけだしね」
「研ぎ澄ませば、軽く躱せるでしょ?」
「終焉を知らせる者は、神に等しいからでしょ?! 簡単に言わないでよ、私人間よ!?」
「言いたい事は分かるけどーーーあっ、リュウカ!!」
咄嗟に私の体は動いていた、焦りと苛立ちに現状が理解できない状態で振り抜いた拳。
魔物から見えない壁に私の拳が衝突、バリバリと音を鳴らす。
「防御壁…! どうなってんのよっ!」
「……」
魔物は無言のまま、素早い魔法光線を放ち私はそれを回避する。
くそっ…何か隙がないの…?
いや、焦るな…よく見るんだ魔物を!
一瞬だけ揺らいだ見えない壁、水が揺れた様な波紋状が微かに揺らいだ。
私はゆっくりと拳を振り抜いた、微かな隙だと思えたからである。
いっけ!!
強く押した拳は見えない壁をバァンッ!っとガラスが砕けた音を鳴らした。
それと同時に魔物は、素早い動きで私に詰め寄り魔法で固めた爪で引っ掻く。
「ぐあっ……!!」
「リュウカ!!」
更に右掌から魔法玉を作りあげて、私の腹部に向かって魔法光線を放った。
視界が強い光で埋め尽くされ、意識が微かに遠のく。
また死んだって言うのか――――?
「バカじゃない!!」
「!!?」
その声は、ルミである…目の前で魔法光線を相殺していた。
私はまた死を悟ような顔を浮かべていたのをルミは見て、背中越しであるが強い口調で言う。
「死ぬなんて私が許さない! あんたにやるべきことは何? 死ぬことなの!? 違うでしょ!! この世界を「滅び」から「生命」がある世界に変えるんでしょう!!」
「ルミ…」
「情けない顔なんてしないで、前だけ向きなさい。その為に仲間がいるのよ」
その言葉で私は励まされた、死を見るなんて早すぎたんだ。
「さ、早く行きさい。あんたしか倒せないんだから!」
「…わかったわ!」
私は魔法光線から、飛び上がり…折れた神器に魔力を流し込め言い放つ。
「術式解放二型・蒼夜の暗黒剣!!」
刀身が青く黒い色を放つ神器に変わり、私は魔物に向かって飛んでいく。
魔物は魔法光線を止めて、私の方を振り向く。
「……」
動じないその眼差しに、より一層神器に私は力を込める。
舐めてもらっちゃ困るわよ、術式解放二型は剣技に特化した魔法術式。
一の型なんかよりも、威力は倍になってる。
魔物は魔法光線を再び私に向けて放つ。
やっぱり、狙って来るのね…!
それならーーー。
黒歴史書にある、東方剣技の型は全部で十五種類ある…。その中で、空中に特化した剣技はーー。
「ーーー!!」
「桜ノ舞・拾の型…旋風・桜!!」
私は体を拗らせて、遠心力で回転しながら魔物へと神器を振り回る。
魔法光線を切り裂き魔物の右腕を削ぎ背後に回った所で、私は続ける様に剣技を放つ。
「裏旋風・夜桜!!」
回転を更に拗らせて、上下を逆にした体勢…逆さま状態で魔物の足をズバッと切り裂いた。
魔物は切った場所から直ぐに再生、私の腕をつかみ空高く投げ飛ばした。
「うわぁぁぁぁぁぁーーーー!!?」
回転しまくる視界に、私は驚いていると…誰かにぶつかって停止する。
逆さまな視界であるが、足元の布生地だけと言うので誰だかはすぐに推測できた。
「ラグナロク、助かったわ…」
「私仮にもロリなんだよ? 丁寧に扱え」
「なんで上から目線!!?」
降ろされた私は、ゆっくりと立ち上がり魔物を眺める…自己回復が速く傷の回復が直ぐに治る。
「やっぱり普通じゃないわね、さすがチート。そう来なきゃ始まらないわね」
「大ダメージは与えられなそうだね…」
「耐久戦、これ以外の意味は無いわ」
腕すら新たに作り出す魔物、私は恐怖と言うよりも不気味という言葉が思い浮かぶ。
勝てないはないはず、私の眠る力が最大に使えれば…!
ラグナロクとルミは魔物へと飛んで行ってしまう、私は行こうと思ったが…足が動かない。
無理もない、体は既に悲鳴をあげている…治癒魔法をしたからって完治では無い。
色んな魔法や技が目の前で繰り広げてるのに、体が動いてはくれない。
みるみる焦りを感じる私、それを楽しみに待つような魔物はかなり憎たらしい。
完全に心折れるって思ってんの!? って思うが…何故か苛立ちが地味に感じ始めた。
「あぁもう! なんでこうなるのよ!! それにあの魔物、腕なんて作り出した上にキモくてなんか憎く過ぎてムカついてきた!!」
そんな叫びを私の口から発した、かなり久々な嘆き? である。
勝てない無理ゲーはない、そんな言葉を言っていた現実世界が嫌でも懐かしい。
私はこの世界を救う為に戦ってる、世界レベルはカオスの力によって作られたに違いない。
だが、あのルミナスフユーゲルは…禁忌目録を作り違反したら処刑で強力な魔法を封じる事で自分よりも強い人を消したと考えられるわ。
刃向かうものがないからこそ引き起こされた異世界の滅びーーー。
その時、私の記憶の奥底から何か蘇る。
それは…かつて父親が見せた剣技だろうか。
ただ振ってる訳じゃなく、何かを守るための剣技…それを幼い頃教えられた記憶である。
『お父ちゃん』
『なんだ? 龍太』
『なんで、木刀を振り回してるの?』
『それはなーーーなんだ』
『はぇ?』
『はっはっはっ、まだわかんないか』
微かに掠れてる記憶、だけどその剣技は覚えてる。
ゆっくりと息を吐き散らす、力を体全体に入れた。
集中しろ…力を纏わせるんだ。
あの感覚をもう一度、甦らせるんだ。
魔力が身体中に染み渡る、流れ出す拍動…今なら動ける!!
一歩前に踏み込んだ瞬間、私は魔物の目の前にいた…。ルミやラグナロクの表情を見る間合いがないまま、神器を振り抜く。
「ーーー虚空・連剣一閃!!」
素早い剣技を放って私は、魔物の体を切り刻んだ
鞘に神器を納めると、真っ二つに切り裂かれる。
そのまま意識を失い、再び谷底へと落ちる。
「「リュウカーーー!!」」
既に叫んだ二人の声は、私には聞こえなかった。
また見上げた空は…暗いものかと思ったが…そうでも無かった。
岩壁の僅かなスペースに私は気絶していた、体を起こせば全身が痛くて泣き目である。
「痛くて死んじゃうよこれ…」
真っ二つにしたのはいいが、ルミが居ないところを見ると…まだ死んでないようだ。
体力の回復待つしかないわ…。
一瞬であの感覚を私は…物にしたけど、決して的確では無い。
力としてちゃんと扱えてなければ無意味…いや、無価値。
呼び覚ます記憶の残骸、瓦礫に紛れた記憶に私の力を引き出す…何かがあるに違いない。
極限の戦い、それがあったのは…妹を人質みたいなことをした奴らの復讐劇…。
そうよ、あの時2度目があった…リリナが連れ去られたね。
その妹を人質にした奴は、小学生の癖にヤンキー
中学になれば不良のリーダーだ。
逆恨みでまたそれをしたわけだけど、今度ばかりは一筋縄ではいかなかった。
理由は………。
ふと思いふけた私の記憶に、刻まれてない何かがあった…。何かが思い出せない、その不良は…普通じゃなかった。
ただそれだけしか分からない、その後…私はリリナと共に病院で入院した。
人質じゃなくて、何かを…私に試そうとしたには違いない。けど…私が全力で挑んだに違いない、それが思い出せない。
記憶が飛んで曖昧すぎる…なんでだ…。
歯を擦らせたが、考えても仕方がないと思った。
結果的に分からないのである。
静かに息を吸い、体の神経を研ぎ澄ませた私は…
呪いの力の覚醒を引き出そうとする。
なんも見えないわ…呪いの力って簡単には出来ないのかしら…?
空は激しい閃光が光り輝き、剣から擦れた音が微かに響く。
この場所まで聞こえるとは、相当強い力で戦ってるに違いはない。
た、立たなきゃ…!
腕に力を入れるが…全然力が入らない。
神器を手に持つ力すらない、ただ仰向けな状態で空を見る。
立たなきゃならないのに…戦わなきゃ…!
動け、私の体…動いてよ…!!
私は心の中でそう叫んだ瞬間、鼓動がドクンっと動いた。
身体中の血液と血の巡りが感じる、それもかなりの速さで脈打ちする。
筋肉がざわめく、体が熱くもえ上がるように…熱い。
体を起こす、不思議なことに痛さを感じない。
手にした神器を改めて見たら…刀に変わっていた。
見上げた空にいる魔物に、強い殺気を飛ばした。
身動きが一瞬止まる、私の方を振り返る間に私はーーー首を跳ねた。




