事態と呪いの力
何となくは感じていた、アカシックレコードの真意は心には無かった。
ただあるのは、手を下さなくても勝手に動く私達をただただ楽しむ…ゲスい眼差し。
色々おかしかったんだ、何故…私達を女神の世界に飛ばしたのか。
普通なら、知りもしない相手にそこまでしないだろう。
この戦いも奴の秘策の中にあるとすれば、なんの意味があるのか…よく分からない。
だからと言って、攻撃に手抜くなんてする訳がない…。
あるのは、アカシックレコードを倒す事だ。
迷いもない剣技は、アカシックレコードを詰め寄るが…反撃に至近距離で魔法を放つ。
轟音を鳴らしても、互いの足は止まることを知らず…走る。
それは、互いにかけた強い意思である。
世界を壊したいのと、世界を救いたいの正義と悪の戦いは激しさを増していく。
「いい加減、消えてくれないかな? 目障りだよ」
「それは、私のセリフだ!!」
アカシックレコードの強力な魔法を、リュウカ切り裂く。
その瞬間に、短剣を持ったアカシックレコードはリュウカを突き刺した。
「ぐっ!」
さらに続くように、頭上から強い衝撃を受ける。
岩だろうか? それをまともに喰らうリュウカ。
「甘いなぁ、動きが甘い。隙だらけなんだよ、僕の鑑定スキルはこの世界の全てを知ってるからどんな技でも叶えないーーーそれが現実」
リュウカは、岩を砕きゆっくりと前に歩く。
頭から多少の出血、突き刺さった短剣を引き抜き床に投げ飛ばす。
「だからどうしたのよ? 勝てないからこそ勝ちたいもんだよ」
「…馬鹿すぎたね。あんだけの傷でまだ立ち上がるのか?」
リュウカはゆっくりと両手で剣を構えて、アカシックレコードを睨みつけて言う。
「私は折れない、ここまで来て…真犯人見つけたからには…負けられない」
アカシックレコードは、表情に笑みが無くなる。
バカにしたような顔すらなく、真顔である。
「…諦めろよ、僕はそうゆうクソみたいな真面目が嫌いなんだよ」
「真面目? なんか勘違いしてるわ…正真正銘のバカでアホな想像豊かな変態だ」
「気に入らない…気に入らない!!」
アカシックレコードは腕全体を、赤い炎をまといリュウカに向かって走り出す。
リュウカは、ゆっくりと足を開き構えた。
「目障りだから君を消す事にした!!」
「そう、なら私も同じだ!!」
振り抜かれた一撃は、衝撃が放たれ激しい攻防を繰り広げだ。
だが、アカシックレコードが少しずつ力をましていきやがて…リュウカは全身ボロボロになりながらも必死に耐え抜く。
「まだか! まだ耐え抜くのか!!」
「……」
「その目が、僕をイラつかせる…消えろ!!」
蹴飛ばされたリュウカは、床を転がってしまう。
た、立たなきゃ…。
伸ばした手は、神器すら掴めない。
うぐっ…骨何本か折ったかな…痛い…!
疲労で限界が来ていたのだ、アカシックレコードは炎を貯めまくり勢いよく飛んでくる。
この突進を受ければ間違いなく死ぬだろう。
焦るリュウカは、何とか神器を掴んだが…アカシックレコードがすぐそばまで来ていた。
「死ねぇぇぇぇーーー」
死ぬのか? っと脳裏が悟った時である。
体から力が湧いてくる、人からの魔力とは違いこれは自分自身からだった。
だが、動くにはまだ時間がいる…つまりこの攻撃は躱せそうもないのだーーー。
動け、動け、動け…立ち上がるんだ私!
このままじゃ、かなりまずい!!
パァン!! っと何かに当たった軽い音が鳴る。
「な…!?」
アカシックレコードが驚き声と表情を浮かべていた、何故ならリュウカ以外に人が現れていたからである。
「ピンチには必ず一人は現れる、例え地の中見えない世界だとしてもーーー友は駆けつける」
「…ら、ラグナロク…!?」
「死にかけの錯覚で負けて、また死にかけるとはね…リュウカは何回死ぬ気よ?」
「…面目ないわ」
「まぁーーー私の読みは間違いじゃなかったからよかったわ」
アカシックレコードは、歯を擦らせてさらに火を纏い火炎を激しく燃え散らす。
ラグナロクは、片手で抑えているが…リュウカに見せた笑はどことなく何かを感じさせた。
「ら、ラグナロク…?」
「ただの変態さんじゃない、全てを終わらせる存在…そう終焉を知らせる先駆者として戦わなければいけない」
ラグナロクは指を擦らせて鳴らすと、止まっていた時間が動き出した。
ルミナスフユーゲルの追撃を、アカシックレコードは背中から受けてした。
腹部は貫通して、アカシックレコードは口から血を吐く。
「そっか、最初からこのタイミングを…」
「こうすることしか出来ないのよ、アカシックレコード」
「クックック…まだ計算が甘い…ね」
この時、アカシックレコードはこう思った。
僕が最後の最後に、こんな奴に力を渡すなんて…正直悲しいけど。
報いとなるなら…この命ぐらい捧げてね。
それぐらいしかできない…ねぇ、姉さん。
切実の願いがあったか分からないが、ルミナスフユーゲルの腕を掴み、アカシックレコードはそのまま消えた。
アカシックレコードの力を受け取った、ルミナスフユーゲルはみなぎる力に…高揚感を覚えていた。
「知らぬが、我に力を与えるとは…クックック」
「混ざりあった魔力は限界数値を遥かに超える。力に溺れていく敗者って言っとこうかしら?」
「ふん、いくら貴様の力でも我が前には勝てぬ」
「なら…戦おうかしらね」
「クックック…面白い」
激しい衝突、轟音を馳せる空中は火花散らせ重低音が轟く。
そんな光景を見ていたリュウカは、軋んだ体を動かすことすら叶わず…再び谷底へと落ちゆく。
私の力不足が…また仲間をピンチにさせる。
そんな後悔論を、頷けるかのように周りの景色は薄暗く染まっていく。
そのまま気を失っていた、誰かに起こされるまで目を覚ますことは無かった。
「……この辺にあいつの気配するわ」
傷だらけでボロボロのリュウカを見つけた時、言葉を無くすに違いないだろう。
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龍太、私は君を信じてるーーー。
だから、こんな所で死なないでーーー。
そんなどこか懐かしく、聞き覚えがある優しい声でリュウカは目を開き起き上がる。
「リリナ!!」
リュウカはそう思わず言い吐いたが、脇腹の痛さに少し悶絶した。
いたたっ…あの時、身体うったからか…!
手と体を見ると包帯が巻かれていた。
誰がやってくれたのかは、すぐに分かる…近くでスヤスヤと居眠りしてる少女ルミである。
「助けに来たのか…」
「すーすー…」
「相当疲れてたのか…にしてもーーー」
上を見上げたが、やはり空が遠く感じる。
足場はゴツゴツした岩肌と、機材の残骸が沢山落ちていた。
こっから地上に戻るには、相当な力がいると思うっと判断した。
「私の力でもやや難しいかな? っておもうけど、湧いてきた力を使えば…」
「ふぁ…」
「ルミおはよう」
「…あれ? 私いつ結婚したっけ?」
「寝ぼけてる割にはスケールでかい発言だな?!」
「んにゃ…」
ぼーっとしたルミは、軽く生あくびして目を擦りこういった。
「疲れたわ、治癒魔法どれだけ時間かかったのか…んー。よしっと」
ルミは、ゆっくりと立ち上がってリュウカの所まで歩き言う。
「さてさて、ここは谷底…墓場とか言われてる。廃材やら、魔物の骨やら沢山あるわ…これを意味してるから墓場ね」
リュウカは、腕を組んで空を見上げたたまま軽く吐くような口調で言った。
「まぁたしかにそうわね、こんな場所にこんな意味わからない残骸あるわけだしね」
それからしばらくして、ルミが先を歩き出すのを見てリュウカはその後ろを付いて歩く。
至る所に残骸と鉄クズが沢山無残務像に転げ落ちている、以前は何があったのかさえいまいち分からない場所である。
墓場って言われてるから、結局はそうなんだろうね…。
数分後、ルミの足が止まるりリュウカはぶつかってしまう。
「いたっ…何止まってるのよ?!」
「……」
珍しく言い返さないルミ、その表情は…動揺。
何かを見つけてはいけないような…顔だ。
リュウカは視線を前に置く、赤い瞳の青年が体をゆらゆらと動かしながら歩いていた。
ひ、人…? この世界は普通の生物は生きられないから、こうして歩いてるとなると…アンデッド。
つまり、死体が歩いてる…って事…?
そう考えても、違う答えが頭に導く。
それは…魔術による強制的に肉体を動かしているとも考えられた。
だが、明らかに動きはふらついている…いつ千鳥足になるか分からない。
他に考えがあるなら…リリナが言っていた死体の蘇りもある…。
この戦いになる前、ほんの少しだけ聞いた話である…「魔術以外にもチート能力の恩恵で蘇ることもある」っと真顔でそう言われたのだ。
そうなると、あることが脳裏に浮かんだ。
「墓場…冥府の墓場って、この場所を意味したら間違いなくーーー蘇りが起きる」
動く影が増え始める、間違いなく人や生物の残骸が蘇りを果たしていた。
「…ここまで来て、墓場に墓場されるとか…笑えないわね」
「そんな冗談言わないでよ…。ルミ、戦えないのね」
「えぇ…魔力が切れてるわ」
「死にばに死に急ぐつもりは無いんだけどね…」
影はやがて膨らみ、ひとつの巨体の人を作り上げる…見上げるだけでなかなかである。
右手拳を地につき、ルミを抱えて後ろに飛ぶリュウカ。
「…まさかのまさか、こんな集合体とかね」
「だからこそ、倒しがいあるのよ」
「いや、今役に立たないから黙って」
「むっー…。それよりも、この巨人は…カーズ・ブレイズって呼ばれてる天使の宿敵よ」
「まぁみるからに、強そうだもんな…」
「来るわよ攻撃!」
「OK」
単純な攻撃の割には、威力が凄まじい…。
一撃一撃に、風圧が巻き起こるぐらいだ。
回避ばっか専念しても、倒せないだろうし…。
とりあえず…腕を走ってだね。
リュウカは、巨人の攻撃を回避して腕にのっかり走り出す。
右手にルミを抱えたまま、左手に持つ神器を巨人の首筋に振り抜く…。
バキャン!!
左手に持つ神器は、粉々に砕けてしまう。
着地後、ルミは折れた神器を見て不安そうな顔をする中…リュウカは無言で神器を眺めた。
神器さえ切れない…鉄物の体か…。
ルミをゆっくりと地面に降ろすリュウカ、折れた神器を鞘に戻した。
リュウカは脇差から神器を抜き取り、ルミに投げ渡した。
「預かってて神器」
「え?」
「…上手く使えないあの感覚を、やってみる」
精神を研ぎ澄ましたリュウカ、すると紫色のオーラがブワッと浮き上がる。
ゆっくりと顔を上げて、一歩前に踏み込むリュウカ…地面から無数の鎖が次々と現れる。
巨人の体を鎖で捉えて、そのまま地面へと引きずり込んだ。
巨人は、叫びも虚しく響くように…地面の中へとその姿を消した。
リュウカは、片膝を地面に着いた…顔から汗がダラダラと頬から落ちる。
ルミは何が起きたが分からない、だがーーー。
「…呪いを具現化させた魔法…?」
呪いは基本魔術、時に呪系魔法に属するのもあるが…それのほとんどが呪いをした人物っと限られている。
術者が人に呪いをかける以外の使い方は存在しない。
リュウカは、呪いを力に変えて魔法に置き換えたのがさっきの鎖である。
呪い系を扱う悪魔族は、大抵鎖を武器とした戦い方である…が。あの時に感じた
地面から鎖が突き上がる様になる魔法や魔術は聞いたことも無ければ、見たことすらない。
「呪いを逆手にして、それを反射したような力。これが…リュウカの真の力…?」
「分からない…でもこれが、あの時に感じた力よ。奥底で何かを弾くような感じ…例えるなら鉄鎖に繋がれた人物が力任せに壊す感じよ」
「それが、呪いの力なのかしらね? 私の見たものとまるで違うけど…。今思えばリュウカの体は呪いで封じられていたから、そうならないとは限らないわね」
「目覚める力にしては…えぐいわこれ…」
この力を使うにはかなり体力が消耗される、無駄に連用は避けたいっと思う反面…。
あのルミナスフユーゲルの力を考えれば、少なくても体力がある限り使わないと難しいだろう。
「再び戦地に戻るわよ」
「ちょっとタンマ」
「ん?」
「明日の晩御飯チャーハンだっけ?」
「それ今決める話なの!?」
「いやだって、これに勝てればコーラワンケースとかあるん?」
「いやないから、そもそも報酬なんてないわよ」
「え? ラーメンのプールだって? ありがとう、でも食べきれないわ」
「スケールデカすぎて何言ってるかちょっとわかんない!!」
「さてさて、飛ぶにしても体力いるのよ」
「え? な、何そのいかにも乗せて感…」
「痛い痛い!! 腕折れたから、空飛べない!!」
「嫌」
「なんでそんな悲しそうな目で私を見るのよ!! 辞めて、真面目に痛いわ!!」




