もう1つの支配者
巨大魔物は、魔法陣を展開させて巨大な光線ビームを放つ。
削り取られる様な地表、遠くて爆発音が鳴り響く…威力は凄まじく魔法並である。
リリナはゆっくりとこう口を開き話し出す。
「異世界には強い魔物がいる、その1番がウルボロス。私達が今目の前にいる存在、破壊の力は桁違いわね…」
「リリナ、これどう戦うのよ?」
「私の力を試す時が来たわね…」
「いやいや、リリナは役に立たないわ」
「まぁ見てて、今までとは違うから」
そう言い切る、リリナはひとり前に足を向けた。
ウルボロスは拡散型追撃のビームを木枝の様な体から放ち、地表に目掛けて無数に飛び散る。
リュウカ達は、回避しながら逃げ惑う。
「うおぃ!? 何カッコつけてるのかわかんないわよリリナ!!」
「そうでも無いですよ…この力は…」
「セナ…?」
「そんなはずは無いはず…この世界の力を扱える…? いや、神の領域を超える力が…!」
セナの驚く表情をリュウカは、何かを感じ取るように…リリナの背中を見た。
確かに今までとは違い、頼り甲斐が無い背中はしていない…。
いや…それだけじゃない何かを私は直感的に感じる…。
リリナは、ゆっくりと右手を空に伸ばした。
一瞬、強い光を放ちリリナの右手には真っ白な剣が一本握っていた。
その剣は、リュウカが持つ神器よりも…神々しく普通の人では手に出来ないような武器。
リリナはそのまま、地面を蹴飛ばした。
速いくて物事が一瞬で終わる感覚に晒され、気付けば…ウルボロスを切り刻んで頭の上に立っていた。
「……」
「私だって本気を出せばこのぐらい…!」
「リリナ…!?」
体を痛々しいそうにリリナは押えていた、リュウカが動こうとした時…声が飛んだ。
「来るな!!」
「え?」
「ウルボロスの体には毒がある、近くに来たら死ぬ…!」
「でも!」
「でも、かも、でもない。助けたいなんて言って、死地に踏み入れるな…! 私は、もう女神でもないし人でもない。この意味分かるはずだ…リュウカ」
嫌でも考えらなければいけない日、それがリリナから今このタイミングで告げられた。
その意味は…もはや人ではない神でもない存在を意味していた。
いつ、どのタイミングで…そうなったんだ…?
これが現実だと、受け入れ難い話だった。
リュウカは無言で両手を力いっぱい握りしめた。
エルペスは、ゆっくりとした口調で発する。
「…リリナ、お主はなぜ故に禁忌違反を壊した?」
「私が理想とする世界は…自由。それを束縛する神の法則は要らない」
「正論じゃが…その体は、自分の身を滅ぼしかねないやり方じゃのう。命を懸けてまで何を成すつもりじゃ?」
「ルミナス・フユーゲルを倒して、この世界を…。命宿る大地と人々が住む他愛ない会話を、もう一度甦らせる…それが私の願い。代償はこの命燃え尽きるまでよ」
「馬鹿じゃのう…それはワシが言うセリフじゃろうが…」
リリナからの真意を聞いたリュウカは静かに思う。
捨て身覚悟、それでも構わない? いや違う…リリナの命を代償にして、この世界を救うことを望んでいた…。
微かな記憶の中に、お人好しな一面があった。
だが…命を削ってまで人を考える、そんな馬鹿な人だとは思わなかった。
それが嫌だからこそ、私は常にそばに居たんだ。
キリッと歯を擦らせたリュウカは小さくこういいだした。
「…なんでだ」
「リュウカ…」
「なんでだ…なんでだ」
「ごめん…」
そのリリナの謝り言葉に、キレるかのようにリュウカはこう強く言い叫んだ。
「ーーーなんでなんだ!! なんで勝手なことばかり決めて、勝手に消えていく選択肢を何故選んだのよ!! 自分勝手の選択を選ぶのも大概にしてよ!!」
リリナは何も答えない、ただ…ジーッとしてその場を立つのみ。
リュウカは続けるように強い口調で言う。
「答えてよ! なんでそんな自滅を選んだのよ!! 生きるのも死ぬのも、一緒だって誓った仲!! なのに、そうゆう時だけ頼らずに物事を勝手に進めていくのはどうしてよ!! 答えてよ!!ねぇ!! 聞いてるんでしょ!!」
「…もう時間よ」
その一言で、リリナはウルボロスを更に切り裂きリュウカ目の前に前に立つ。
刃の矛先を、リュウカに突き付けていた。
「リリナ…!」
「もう終わりにしましょ、アンタは所詮、私の計画の一端にしか過ぎないわよ」
「……」
意を決意しろと言われた現実、それはあまりにも辛い選択肢と呼べる。
リュウカは生唾を飲み、神器をゆっくりと構える。
「リュウカ…!」
「何を意味してるかわかる、けど…こうするしか他に無いのよ」
「……」
「さ、やろ…馬鹿を治すには私しかいない」
「その言葉に、迷いはないよね?」
「うん」
リュウカとリリナは互いの剣を交えた、激しいが力と技の多さにリュウカは苦戦し始める。
「甘い!」
「ぐっ!?」
弾かれたリュウカの神器、リリナはスキを与えないようにトドメの一振を放つ。
リュウカは睨んだままリリナを眺める、振り抜かれた一振は髪の毛をとがらせた青年の持つ剣に衝突する。
「邪魔だ」
「邪魔とは酷い言い様だな。まぁ出番間違えかもしれないが、まぁヒーローはこんなもんさ。他人の話にヤジを飛ばす、義理はないが夫婦喧嘩にしちゃさ…物騒なもん出すね? 君の血の色は…なに色だって聞きたくなるねぇ」
「……」
「ふーん、敵意剥き出しだな…。こいつはちと強めの魔術か…」
その青年はリクである七色の剣でリリナの剣を押し返してゆっくりと自身の肩に置く。
リクはゆっくりと指をクイクイっとしながらこう言う。
「相手してやる、不死能力の力をお前に教えてやる」
「あぁ…なら切り刻んでやろう!」
リクとリリナは、剣技を互いに放ち…。
大地が砕けようが、魔法で雷だけが降ろうがお構い無しである。
リュウカは無言で神器を手に取り引き抜いた、刃に映る姿が情けない顔立ちである。
「強い魔術で操られている、それが…リリナじゃ」
「エルペス…」
「解くとしたら、リリナと契約した人物。恐らく精神にそいつがいるはずじゃが…正直ワシにも無理じゃ」
ミナがゆっくりと歩き、リュウカの肩を叩いてこういった。
「今はかける言葉はないけど、戦うべき相手は…空に居るのを忘れないでね」
「うん…わかってる」
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同刻、上空にいるジャングリラとルミナス・フユーゲルの激しい戦い。
両者一歩もゆずらずの戦いだったが、ジャングリラが徐々に劣勢になっていた。
切っても傷が治り、気力と体力を考えたらジャングリラはもはや限界超えていた。
「食らうが良い、雷極の追閃!!」
「ぐぁぉぁぁ!!」
電撃を浴びるジャングリラ、もはや体がボロボロである。
ジャングリラが攻撃を回避すれば…ルミナスフユーゲルは遠距離攻撃で翻弄、さすがチート能力と言える速さである。
打つ手がないジャングリラ…だが、まだ希望は潰えてないそんな強い眼差しである。
「まだその目か? 負けを知らない強い光が宿る眼差し…くだらぬ」
「言っとけ…まだ切り札はある」
「なにっ―――!?」
ジャングリラは右手を伸ばすと、白銀に光る魔法陣が展開される。
「魔法が切り札…? 笑わせてくれる」
「見あまりすぎだな、ただ魔法じゃない」
ジャングリラが放つ魔法陣は巨大になり強く光り輝く、ゆっくりとした口調で呪文を口にする。
「月面閃光の光線波動!!」
ルミナスフユーゲルは、上空からの強い光を頭上から喰らい…。
地上から跳ね返る無数の光筋が天に返り咲き、大爆発を起こした。
「致命にもならないのか…その肉体はどこまで維持するのか…」
黒煙がもくもくと立ち上る様に、空に黒煙が舞い上がる。
羽を一振したルミナスフユーゲルは黒煙を吹き飛ばしたし、ニタリっと笑みを浮かべてこういった。
「ふん、所詮雑魚の魔法は弱い。死ぬほどではないな」
「化け物めが…!」
ルミナスフユーゲルは目にも止まらない速さで飛んだ、まるで分身を見てるかのようだ。
「分身…いや、残像かこれは」
「さぁさぁ、死に狂い咲く傑作の技だ…死ねェェェェ!!」
リュウカは神器の青い剣をゆっくりと地面に突き刺した、ジャングリラの目の前に氷の壁が出来上がる。
「無駄無駄だァァァァーーー!!」
ルミナスフユーゲルはそのまま突っ込んで氷壁を砕く。
「やっぱり無理か…!!」
ジャングリラに目に映るのは、ルミナスフユーゲルの分身しか映っておらず本体は見えていない。
となれば、今動けるのはリュウカただ一人である…神器に魔力を込めて飛び上がる。
ルミナスフユーゲルは、分身を作るのに集中を切らしては無い…故に下からの追撃は意識してないと思った。
「貴様!? 何処からーー!!」
リュウカは魔力で発動した氷で、一瞬ルミナスフユーゲルの視界を奪い合い。
「氷花・一閃剣」
氷を砕き切るリュウカ、ルミナスフユーゲルの
腹部を切りつけた。
刃に感触はない、むしろこれは―――?
「ハズレだ、そんな斬撃ぬるい!! 底へ落ちろ雑魚!!」
リュウカはルミナスフユーゲルから一撃を貰い空中から崖下へと落ちてしまう。
「うわぁぁぁぁぁぁーーー!!」
「リュウカ!!」
「まずいのう…崖下は、色んな物の墓場じゃ」
「私の力を使えば!」
「まてミナ! お主の力でもどうにもならぬ!!」
「で、でも…!」
「奴を信じるのじゃ…それしかない」
「…うん」
重力、浮遊感、風の音で何も聞こえない。
ここで諦めんのもおかしい…リュウカゆっくり息を吸い止めた。
落ち着け、落ち着け…何か出来るはずだ…!
右手を遠くなる空に翳して、何かを取り出すようなイメージを脳内から引き出す。
「はぁぁぁぁぁぁぁ――――!!」
リュウカの体から黒いオーラが現れて纏う、左手に握る剣が紫色に染る。
伸ばした手先から紫色に光り魔法陣を展開した。
「―――呪われし力よ、今こそ我に従え!! 漆黒の雷光!!」
バリバリっと音を鳴らして、手から放たれた紫色の光線。
イメージして放った擬似魔法は、ルミナスフユーゲルに向かって飛んだ。
「なにいっ―――?!!」
ルミナスフユーゲルは目を大きく開いた、これは魔法ではなくて、全く別の力だと。
回避できずに、ルミナスフユーゲルは全身を闇色の光線に呑み込まれた。
リュウカはゆっくりと手を後ろに起き魔法を放射した。
再びルミナスフユーゲルがいる場所へと戻る。
ルミナスフユーゲルは、全身がボロボロになりながらも…リュウカを睨む。
「先程の力は中々だ…なんだあれは?」
「知らない、私が知りたいぐらいよ」
「クックック…貴様、チート能力に抗うつもりか??」
「そのつもりよ最初から」
「面白い…ならば全力で行かせてもらう」
一瞬だけ光を放つ、ルミナスフユーゲルは黒い翼と悪魔の翼を背に持ちしっぽを生やした。
青い顔で白目をする魔物と変貌する。
第三形態というのだろうか…先程よりも殺気が強くなった。
「もう人間じゃないわ、そこまでして何をしたいのよ?」
「…世界が俺を認めるまでだ」
「意味がわからない」
「意味分からなくてもいい、どうせ全部無に葬り去るだけなんだからな」
ゆっくりと人差し指をリュウカに向けた、ルミナスフユーゲルは一言を発した。
「さようならだ」
「なにを?」
一瞬にして何が起きたか分からない、時間のスローで…背後がゆっくりと爆発する。
痛い、何が起きたんだ…?
私の体を見ると風穴が空いていた、嘘だろ?っと思いたくなる。
仲間たちの声が聞こえた、あぁ、また死んだのか…?
物事を一瞬で片付けられたかのように、あの勝ち誇った笑みをするルミナスフユーゲル。
「目に見えない速さ、チート能力は全てを可能とする。これこそ神―――」
いや…まだ負けちゃいない。
意志と体がついて来ない様に、目は霞ぼやけ始める。
体は次第に力が抜け始めて、無重力に私は空から落ちる感覚を味わう。
「貴様!!」
「おっと、あまり感情的になるなよ…。弱く見えるぞ」
「ぐあっ!!」
「遅いんだよ、いい加減くたばれ」
ジャングリラが、どこかに吹き飛ばされる瞬間だけを捉えた私の眼差し。
その後は、轟音だけが耳に届く…吹き飛ばされていく音が凄まじい。
み、みんな…!
セナやエルベスも魔法で対抗してるみたいだが、魔法を弾かれて爆発して返り討ちに。
飛んでる声は…悲鳴だけだ。
こんなんじゃ…ない…!
ルミナスフユーゲルはこちらを向き嘲笑うかのように、周りにある全てを破壊する。
ダメなんだ…これじゃ…!!
轟音を鳴らして、崩れゆく世界に―――。
「…ダメだ、これが定めじゃ―――!!」
否定した瞬間、時が止まる…周りの風景は静止画を見てるように動きが止まる。
見ていた風景は、リュウカ自身のイメージだろう…目をつぶっていた事さえ分からなかった。
まだ風穴が空く直前、ルミナスフユーゲルがちょうど挑発した所である。
時が止まってる…?
遠くから誰か歩いてくる、その姿は半透明。
見た目は…リュウカに似せたような銀髪ロリとゴスロリを着たアカシックレコード。
「ごきげんよう、と言いましてもかなりピンチですわね」
「……」
「ちょっと、そんな目をしないでよ」
「だって…ねぇ…」
「あぁもう! なんでそんな目をされなきゃならないといけないのよ!!」
「それで、なんの用?」
「君に眠る力…呪いの力に関して」
「……」
「まぁそれはいい。君さ、更に力欲しくない?」
「どうゆう意味?」
アカシックレコードはクスクスと笑い言う。
「全てを捩じ伏せる力だよ? あのバカリリナはまんまと僕の力を受け取ったって誤解したまま、操ったんだよ」
「それって…敵味方関係なく戦わせたって言う意味になるけど」
「正解、ゲームはこうじゃないとね」
アカシックレコードの眼差しは明らかに…真意を剥き出しにした様な歪んだ笑みだ。
ゲーム感覚で、この手駒は私達とすればば…真の敵はーーーー。
「最初からその狙いだったのね…アカシックレコード」
「うん、実に面白かったよ? すぐ人を信用する欠点は笑いものだよ」
「何故そのようなことをしたのよ?」
「そりゃ暇だから」
「は?」
「人は面白い、直ぐに感情的になる。怒れば怒るほど…周りの状況が見えなくなる」
リュウカは神器をアカシックレコードに振り落としたが、目の前で折れた刃が無惨にも舞う。
「そうこれこれ、憎しみと恨んだような眼差し…それを僕は見たかった」
「人を弄ぶのも大概にしろ!!」
リュウカは折れた刃を手に持ち、アカシックレコードに向けて投げ飛ばす。
だが、後ろに手を組んだアカシックレコードの目の前で粉々に破壊された。
「だからこそ、君に僕の力をふさわしいっと思えたわけだよ。どうだい? 力の差すら分からないバカじゃないだろ君はね」
「悪くない話だよね、そうすればあのチート野郎にも勝てる」
「うんうん、じゃあーーー」
「だが、その話は断るわ」
「何故だい? 待遇にしちゃいいと思うけど?」
「そんな力に頼らなくてもね…人には強い「志」がある。どんなに勝てない敵であろうが…決して諦めない強い意思に砕けるものはないわ!!」
そう言い切ったリュウカの神器は、ゆっくりと折れた刀身を修復していくーーー。
「どんなに強い力の前には、叶う相手はいない…。バカは結局一人増えたけど、僕がやる事は変わらないよ?」
「そんなのはわかってる、だからこうしてアカシックレコードを断ち切って進む。穴があれば入りたいってのはこの事!!」




