敗北とパドックス
息を吸うのがこれだけ重いとは思わなかった。
これが…人智を超えた存在っと言うことか。
リクとミカは、戦い抜いて…二人は互いに庇うように床に倒れている。
それもそうだ、異常な速さ、動くだけで同じ体が複数見える、速すぎて分身が出来ていた。
そんな彼に翻弄され続ければ、いずれは…誰かは死ぬわけである。
「…まだ戦うのか?」
「負ける訳には行かない…!」
「意志と体は反比例…つまり今の状態だ」
私の体は軋み、動くのがやっとである。
彼の圧倒的力の前に、歯が立たなかった、元世界で殺人犯として有名だった。
前世の力と世界に来て「チート能力」と戦闘知識を持ち合わせてる訳で、抜けてる力に、手の打ちようが無かった。
今の戦いを例えるなら、街に来た瞬間にカンストされた魔王とレベル1の勇者が出会って、いきなり世界をかけた戦いである。
向こうが龍ならこちらはハエである、いくら戦力の束でも、力と強力な魔法の前では、火で焼かれて、その身を焦がす。
そんな戦いが長い時間起きれば気力と体力は、限界の域を超えていた。
「……!」
また床にひれ伏せるように、私は床に倒れていた。
これで何度目だろうか、再び立ち上がる。
「死んだはず…なぜ蘇る? 」
「諦めないから…だろ」
理由は分からないが、どうやら私は…諦めないから故に何度もやり直しをしてる気分だ。
なんとなくわかるが、何かを歪ませたに違いないそれがルミナスフユーゲルの力、並人間以上のチート能力、今の力はそれによるものだ。
人が人ならぬ姿が、こうしてまた…強くしたのだろうか。
「何度死に損ないが現れても無駄ッ!!」
立っているのはただ俺1人とルミナス。
ほぼ互角だが、現状的には防御一戦である。
剣を混じえれば、自信や希望が削がれていく、もはや常識が通じない相手がバカみたく強いのか剣を通して感じまくる。
「守るのが限界か?」
「ぐっ…、負けを認めたくはない!」
「だが、貴様には遠く及ばない。そんな武器物に私を貫けるとでも?」
「やってみなきゃ、わかんないでしょ!」
「ふん」
「ぐぁぁぁぁぁぁぁ―――!!」
歯を食いしばる私に対して、彼は傲慢な顔だ、解せない、何が異世界最強だ。
諦めなければ…倒せるはず…なのに…!
願うのならば、1からやり直す…この結末を直視はとても耐えられない、諦めないだけの意思は虚しさが募るばかりだ。
やがて私は…剣が迷い始めた、それは剣士としては死を表す。
手や足は震え、武者震い、力の差を体で感じていたんだ。
己と向き合う、碧き刃はどこまでも希望を示すように光らせる、諦められない、それが私だった。
「ま、まだっ…! まだだァァァァ――!!」
「……馬鹿めが」
諦めないだけで、極大なスキル技をイメージして、リュウカは短剣を高速に降りく、青い一筋の綺麗な線が描かれた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ―――!!」
私の魂の叫びの様に、ルミナスフユーゲルに叩き込む、叩き込む、一振を、的確に連撃を―――。
「うぉぉぉぉぁぁぁぁぁ―――!!」
「ぬるい!!」
ルミナスフユーゲルに私が持つ短剣をパァンっと弾かれてしまう。
「…ぁ」
「さらばだ―――」
虚空を回転しながら背後の床に突き刺さる。
その同時に、私の腹部に貫かれたショートソード。
「り、りゅう…か…!!」
苦しまぎらわせに、リクの声が背後から飛んだ。
「実に戦った、だが、私の前では…叶うまい。それが、神と人との違い―――」
赤い血がルミナスのショートソードを滴る様に床に落ちた。
だが、私は…そのショートソードを掴んだ。
「……? なんの真似だ」
分からないが、強い意思が宿る…それは「諦めたくない」っという言葉である。
力が湧いてくる、まだこいつには負けたくない、私が―――いるんだ!!
ルミナスフユーゲルのショートソードを砕いた私は、折れた矛先を引き抜いた。
じんわりと痛さが走るが、関係ない…だって、ルミナスフユーゲルを殺せるのならば―――!!
「まだ…私は…やれるっ!!」
リュウカの表情は、もはや殺すという二文字以外はなく…瞳の色が紫から赤色に変化していた。
「なにっ!?」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!」
驚くルミナスフユーゲル、ショートソードを手でへし折り、私の腹部に刺さった刃を引き抜く。
「貴様…その力はーーー!!」
そのままルミナスフユーゲルの腹部に突き刺したのだが―――。
「ぬぐっ!? 貴様には、絶望をくれてやろう…」
全てを飲み込むような、巨大な黒き波動が至近距離で私の全身を包み込んだ。
俺は体をどっかにぶつけて跳ねとんだ、感覚を感じていたが…痛感がない。
体が、腕が、足が…動かない。
もうこれで…おしまいなのか…?
顔をあげた先には、別の赤い剣を翳すルミナス、表情は非道に卑猥な笑みを滲ませてた。
「もう一度死ね―――」
振り落とされる、その瞬間まで私はルミナスフユーゲルを睨み続けた。まだおわれないっと言う様に。
やがて、目の前は真っ暗になり、僅かな光が目の前を包むように差し込んだ。
時が遡るように揺らぐ視界を感じて。
――――――――――――――――――――
「はっ!?」
ここはどこだろうか?
しばし考えた俺の脳裏に浮かんだのは、自分が暮らしていた家の天井で、ベットの上で寝ていた。
走馬灯がよぎるってこれか…
体を起こして俺は外へとでる、見慣れたボロさ間違いなく旧大都市だ…。
来ている服は水着ではなく、ちゃんとしたゴスロリである。
現実かどうか確かめるために頬を軽くつねる。
痛さがじんわりと感じた、夢じゃなく現実だ。
「夢じゃない…。 俺は確か…決戦で…」
俺の記憶は後を辿るように、思い返す、ルミナスフユーゲルとの戦いで破れ、周りにいた仲間達はどうなったのかと不安になった。
「あ、あつらは…? リリナ! レイナ! ラグナロク! ユートピア! いたら返事くれ!! 」
感覚的に歩幅が合わない…俺はロリになっていたらしい。それでも茂みをかき分けて、森林を走り回り必死に探したが、誰一人、姿を現すものはいなかった。
発した声さえも、木霊して、人のいる気配すら感じさせない。
俺は静かに瓦礫の上に力なく座り、そして虚しさのせいか…後悔ばかりを思い描く。
自分の力が足りてなかったから、俺は…また滅んだ異世界に逆戻りした…。
どうして…なんで…こうなったんだ…?
守れなかった不甲斐なさと力の無さ、それで間違いなく負けてしまった。
その後悔論の反面に俺はもう一つ不思議と思う。
またあの街に、俺だけがいるのかっと思った、降り出し? リスタートって奴なのか? それとも、死に戻り? とか色んなことを考えたが…分からないまま時間は過ぎた。
「はぁ…最初のスタート地点に居るとはさすがにきついぜ」
「それもそうよね」
「うんうん、なんでこう―――ん?」
「はぁい」
「え? お迎えに来たの…? まだ早い…」
「違うわよバカ」
「バカとはなんだバカとは!?」
「今の状態を知らないまま、お迎え天使とか勝手に思ってたから」
「うぐっ…」
「私から言えるのは…パドックスよ」
「え?」
俺の目の前に、強い光を一瞬だけ放って、現れた一人の少女はそう発した。
白い翼を生やして、軽く微笑む銀髪の少女、謎めいてた部分を答えてくれた反面、俺はその少女を見てなんとなく直感的に悟ってその名を発した。
「…お前、ルミ…か?」
「うん」
「な、なんでこんな場所に!?」
「まぁそれよりね、世界がその終わりを望まなかったのよ、パドックスは正式な部分から異なる事が起きると発生するんだけど。基本は、引き起こされない…誰かが「助け」を強く願ったから、リスタート見たくなった」
「助けを…? それにリスタートって…」
「私にも誰とは分からない、ただパドックスで時を戻されたから…ルミナスフユーゲルを討伐準備期間と都市を発展させなきゃ、勝ち目がないかもね」
パドックスとは、本来あるべき運命と異なる場所があって発生する。
発生した場合は、その過去へと飛ばされてしまうのだ。
その意味で、過去にはいないルミが現れた、それが何よりの証拠である。
そうすると今いるこの場所は俺の…過去?
改めて、俺はルミに聞き返す様に訪ねた。
「この場所って…」
「旧大都市で、あんたが異世界転生した初日…そう過去にいるわ」
「あー、通りで缶ずめばっかある訳だ」
俺はそれを聞いて理解する、どうやら時が戻った、本来すべきの滅んだ異世界を復興するにはふさわしい待遇だ。
だが、とりあえず…パドックスを利用して前とは違う結果にしないとダメなんだろう。
「…んじゃ、変えるとしたらまず誰から探すんだ?」
「そうね、初日に必要なのは…ラグナロクかな」
「…あの場所か」
確か、バイクで乗り込んだ場所だな。
スキルまでは初期化されてないだろうし、なら、作成スキルで作るしかないか。
俺は錆びた鉄をありとあらゆる集めて、1箇所の山にして、右手を前に向けると、淡い光を放ち「バイク」が完成する。
「これは…あちらの世界の物…」
「そう、乗ってくれ」
ルミはバイクに跨り、俺の腰をギュッと抱きしめた。
そして、俺は手を前に倒して発進するバイク、旧大都市の一からだいぶ離れてるが、洞窟がある場所からしたら、ちょうど近場にある。
数分でたどり着いて、そのまま斜面を降り、バイクのライトを点灯させて突き進む。
「これが異界の乗り物、便利ですね」
「お前翼あるだろ…普通なら飛ぶし、運転もできるだろ?」
「私に運転させたら、爆発確定よ? 飛ぶの疲れんのよ」
「それは困る…」
走行する音と、久々に浴びる風を感じた。
「それで、なんであんたはここに挑んだわけ?」
「あー、地下に向かった妹を救出さ」
「なるほど…でも今わかるのは、ジャングリラは死ぬ必要がなかった」
「はぁ!?」
「カオスにやられたのは、パドックス的に時差があるとしたら数時間前。その前はユートピアを探して、大都市を旅してるわ」
「大都市を旅か。じゃ…ラグナロクをこのまま蘇らせたら?」
「問題なく本来の力を出せる…だろうね、ただし、記憶がないわよ」
「え?」
「仮にもあんたと出会う前だからね。忘れちゃダメよ」
「わかった」
斜面から開けた坑道になり、バイクを走らせた。
惜しくも負けた、リュウカ達はまだ諦めない執念がパドックスと呼ばれる時空の歪みが起きて、リュウカが転生した初日まで戻り、ルミナスフユーゲル討伐のチャンスを与えた感じの内容となります。
一から仲間集めを始めるって感じですが、世界レベルをあげるためって感じになりますね。
ここで一区切りとなります、次からは何話か挟んでから一部章クライマックスとなります。




