入学式
俺がそんなことを考えふけっていたうちに、入学式の準備は整ったようだった。
『これより入学式を行います。まずは学校長祝辞。』
コツコツとヒールを鳴らして壇上に登っていくのは
20代半ばのグラマーな女性である。
その見た目とは裏腹に、この学校で最も強大な権力を持っていて、日本が誇る戦闘魔術師団の団長である。
その生まれながら持っていた大量の魔力量やそんな大量の魔力を巧妙に扱う技術を評価され、齢20歳で戦闘魔術師団の団長に抜擢された。
ちなみに、世間では《破滅の魔女》なんて呼ばれたりしている。
俺はこの学校長のことがあまり好きではない。
というのも考え方の問題で、彼女は目の前に立ちはだかるもの全てを全力を持って討ち亡ぼすのに対し、俺は力はいざという時しか使わない性格だからだ。
俺はあの日以来努力して力をつけたが、それで得た力を他人に見せるような行為は一切してこなかった。
なぜかというと、全力を出すことで誰かに俺の力を知られたくないからだ。
正確には力のレパートリーを知られることによって対策を立てられたりして、いざという時に勝負に勝てなくなるかもしれないからだ。
知識は力なりと先人があったそうだが、全くその通りだと思う。
『まず、入学おめでとう、そして地獄へようこそ。
この学校はお前たちが思ってるほど生半可な気持ちで
過ごせるところではない。
私がそう忠告したにも関わらず大丈夫だろうと慢心し
きった生徒が次々と退学していくのをごまんとみた。
この話を聞いて尚、私は大丈夫だと思っているクソガ
キはガキらしくはやく家へ帰って母ちゃんのミルクで
もすってるがいい。
諸君らがそんなバカではないこと祈ってここに祝辞と
いたす。』
そう言って、彼女の体がぶくぶくと膨れ上がりそして血を撒き散らしながら爆発した。
なるほど、今までしゃべっていたのは仮初めの体で本当の学園長はどこからかでその仮初めの体を使って遠隔操作魔法でしゃべっていたわけか。
地獄と称するくらいだからどんなものかと思ったが、なかなか面白いことをするものだ。
他の生徒は悲鳴をあげたり気絶したりするやつもいるが、俺にとってはサーカスの演出おなんらかわらなかったな。
とそんなことを考えていると、
「ふんっ、馬鹿馬鹿しい。
こんな初歩的な魔法も見破れない生徒がたくさんいる
学校の何が日本が誇る魔法戦学校よ。
ここなら私と渡り合えるくらいの力を持った人がいる
と思ってきたのに飛んだ期待はずれね。」
なんて隣の女子生徒が超上から目線でしゃべりだした。
見たところお嬢様っぽいが、多分今まで魔法の英才教育とかを幼い頃から受けてきているのだろう。
典型的な自分の実力に絶対的な自信を持っている人種か。
おれはそういう人種がこの世で二番目くらいに好まない。
なぜならそういう傲慢な態度が結果自分を敗北へと追いやるからだ。
自分の力に自信を持つのはいい。
それは人間なら誰しもが持つ感情だから。
でもそれが油断につながり敗北するようじゃ、三流にすらなれやしない。
そして大体こういう人種は自分が負けても負けという結果を信じず、また過ちを繰り返すものだ。
そんな人種が目の前にいるだけで虫唾がはしる。
もちろん一番嫌いな人種は俺の何かを奪おうとするやつだ。
そんなことを考えている間に色んな人の祝辞や挨拶が終わってしまったようだ。
俺は意外と考え出すと時間を忘れてしまう癖があるのかもしれない。
『最後に、生徒会長挨拶。』
この学校の生徒会長は見た目は華やかで、和風美人を思わせるような人だが俺が見た感じ今まで見てきた生徒の中で一番の実力者だろう。
まあ、相当な手練れ出ないとこの学校の生徒会長などやれるわけないのだから当たり前といえば当たり前なのだが、、、
明らかに格が違う。
教職員に並ぶくらいの実力者だろう、彼女は。
『新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
まず1つ弁明させてもらいたい事がございます。
学校長の祝辞の件ですが、あまり重く受け止めないで
くださいね。
あの方は他人への接し方が上手でなくその性格ゆえつ
い強気に出てしまうだけなのです。
実際毎年退学者が出ると言っても一年の間では例年1
人いるかいないかですし、本格的に退学について検討
されるようになるのも2年生の中頃からですから。
弁明が長くなってすみませんね。
私から言いたいことは1つだけです。
この学校に入学できたことを誇りに思ってください。
この学校は日本に1つしかない魔法を専門とする学校
ということもあり、とても入学希望者も多く試験は過
酷なものだったかと思われます。
そんなたくさんの人たちの中あなたたちは選ばれたのです。
そしてこれからの日本を大きく成長させることができ
るかもしれない種なのです。
あなたたちには才能があり、その能力を伸ばす場所が
与えられました。
これからのあなたたちの学校生活が誇りに満ち溢れる
ものとなるように願って私の挨拶を締めるのと同時に
入学式も締めたいと思います。』
と言い、手を空に掲げ魔法を唱えた。
『神よ、我が願いを聞きてこの場に満開の花を咲かせ
たまえ!花の庭園!』
そう唱えると、天井の辺り一面に色んな花が咲き乱れ、俺たちの頭上を包んだ。
『これにて日本魔法専門高校の入学式を終えたあと思います。新入生は各自、帰ってください。』
入学式は終わったが、生徒会長の挨拶のせいか生徒たちの熱は冷めずみんな一様に、
「生徒会長の挨拶のおかげでちょっと安心したー」
だとか、
「生徒会長めっちゃ可愛かったなw」
だとか、そんな生徒会長についての話で盛り上がりっきりになっていた。
なるほど確かに彼女は相当な実力者のようだな。
なんせ演説中に生徒全員に対して洗脳攻撃を仕掛けてくるような人だからな。
他の全員の目は欺けても、俺の目は欺けないぞ。
今は俺に特に害はないが、俺に害が及ぼうとした瞬間生徒会長だろうが、相当な実力者だろうが必ず叩き潰してやる、、、